日本には季節を細やかに感じる昔ながらの暦があります。農耕民族であった日本人ならではの農作業や行事の指標だった二十四節気(にじゅうしせっき)、一つの節気を三つに分けて5日ごとに3~4文字の短い言葉で表した季節のお知らせ的な七十二項(しちじゅうにこう)があります。
夏至(げし)は一年で最も日が長く夜が短くなる頃で、6月21日~7月6日頃に当たり、夏の盛りに向け暑さが日々増してくる時期です。梅雨の真っ只中で長雨が続き、太陽にお目にかかりにくい季節でもあります。少し前の芒種(ぼうしゅ)では田植えが進み、梅の実も収穫が始まります。この頃を、梅子黄(梅の実、黄ばむ)と表します。その後、菖蒲華(あやめ、花咲く)、半夏生(はんげしょうず)と続きます。そして7月の初旬は、温風至(あつかぜ、至る)と風が熱気をはらんで届くことを表しています。言葉に季節を感じることがあまりない現代にホッとする言い回しです。
その時季ならではの旬の食材も色々あります。果物では、さくらんぼやビワ、桃が食卓にのりはじめ、青梅や、新ショウガ、実山椒等で梅干し作りや梅酒、甘酢ショウガ、実山椒の佃煮と昔ながらの手間をかけて保存食作りを楽しみます。トマトや水ナス、オクラ、キュウリ、ミョウガ、ゴーヤと露地栽培の野菜の旬です。
魚介では、アユ釣りが解禁され、マアジが旬を迎えます。20~25㌢位の新鮮なマアジが手に入ったので、三枚おろしにして、かば焼き風にしてみました。
アジのかば焼き風
アジはお腹のあたりから尾にかけてゼイゴと呼ばれるトゲ状の固いうろこがあります。出刃包丁を上手に使って取り除き、頭と内臓を取り、左右の身に分け、小骨を骨抜きで丁寧に抜き、正味にします。片栗粉をまぶし、フライパンで揚げ焼きにします。調味料は、合成清酒、本みりん、濃口醤油のみです。食欲の失せる季節に、ご飯が美味しくいただけるお惣菜になります。
新鮮なマアジ
三枚おろし
学校給食等では、骨なしのアジやイワシの切り身が使われることと思います。魚の重さの4%の片栗粉と15%の油で揚げ焼きに。この時の吸油率は6%なのであまりくどくなりません。味付けの合成清酒は魚の重さの20%、本みりんと濃口醤油は10%です。白髪ネギや針ショウガを添えても。
アジは背が青いので背青魚と呼ばれますが、身の色から赤身魚に分類されます。EPA、DHAが豊富に含まれ、高たんぱくの魚です。参考のため三枚おろしと仕上がりの写真を添付しました。
【食育メモ】味が良い魚なのでアジと呼ばれたそうです。
【著者】フードディレクター・澤坂明美=管理栄養士。女子栄養大学香友会と業務提携し『プロカメラマンとフードコーディネーターに教わる料理写真講座』を継続開催、女子栄養大学認定料理教室等を主宰する。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年5月19日号掲載