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教育ICT

GIGAスクール構想 県内8割の自治体が共同調達<奈良県教育委員会>

2020年8月3日

96%がChromebook
県内全小中で11月末までに1人1台環境に

奈良県域GIGAスクール構想推進協議会を設置してGIGAスクール構想環境の共同調達をしている奈良県は、その結果を公表した。本調達により9万3637台のPCが奈良県内の小中学校に配備される。調達額は50億3897万918円。整備済の自治体や単独整備を選択している自治体と合わせると、11月末までに県内すべての小中学生に1人1台環境が整うことになる。

共同調達9万3637台のPCの内訳は、ChromeOS96%、iPadOS4%。WindowsOSの採用はなかった。

奈良市、大和郡山市、五條市、宇陀市、三郷町などがリースによる整備だ。一部のPCをLTEで配備するのは、香芝市、下市町、黒滝村で計463台。

これにより奈良県内の97・2%の児童が、共同調達によるPCを活用する。

奈良県の40自治体(39市町村+1組合)のうち、33自治体が共同調達に参加。共同調達参加率は82・5%。共同調達不参加7市町村のうち4団体は整備済。3団体(御所市・王寺町・天川村)は単独整備を選択しているため、共同調達と合わせると、県内すべての小中学生に1人1台環境が整うことになる。

PCの納期は各自治体のネットワーク整備に合わせて11月末までに行われる。

早い自治体では7月末に納入を開始した。

7月末に導入開始
香芝市で1000台

7月26日、香芝市に先行してChromebook1000台の納入が完了した。残りの6662台は10月末に納入予定だ。奈良県立教育研究所の小崎誠二主幹は「早期に納入できるのは共同調達のメリット。入札の手間や設定はすべて県域で調整済みで統一されており、各市町村は納入業者と随意契約をするだけで納入できる。内容も県域ならではの充実ぶり。香芝市は高等学校にコロナ感染も出たところ。迅速に次の一手に着手できる」と話した。研修も既に始まっている。

モデル案を提示 各自治体が選択

県では端末のOSを選定する際、次のように全設置者に示した。

▼WindowsOS=既存資産や現在の契約を優先する際に推奨

▼ChromeOS=運用管理の負担軽減、児童生徒が活用するためのセキュリティ・フィルタリングに対する配慮、将来的に家庭負担による端末購入を視野に入れた後年度負担の軽減を優先する際に推奨

▼iPadOS=公私問わない個人ユース、タブレットPC機能を優先する場合に推奨

奈良県ではタブレットPCの整備モデルを3OSのWiFiとLTEの各基本モデルと5000円~1万5000円を上乗せしたモデルを提示(表参照)し、各自治体が選択した。補助金に上乗せした提案を採用したのは27自治体。1万円程度を上乗せした自治体が最も多く、奈良市、橿原市、香芝市、五條市、平郡町など16自治体。上乗せなしの自治体は、ネットワーク整備費用や自治体独自の予算で対応する予定で、大和郡山市、天理市など6自治体。

ChromeOS
共同調達で9割の理由

奈良県域GIGAスクール構想推進協議会(以下、協議会)では、GIGAスクール構想モデルの3OSを比較した表を作成して選定を進めた。

共同調達に関する会議は12月から行っており、4月からはG Suite上のオンライン会議をメインに継続。GoogleアカウントのIDを入力してログインすると、どのPCであっても自分のデスクトップ環境が再現されること、協同作業もスムーズで、同時編集ができ、編集履歴も自動保存され、調査結果もすぐに集計できるなどのChromebookやG Suiteのメリットを、会議を通じて協議会の参加自治体が共有。学年が変わった際もPCの初期化不要で活用でき、同価格帯のPCと比較してパフォーマンスが高い印象で、5年後の更新やBYOD化を考えた際のコスト負担も考え、多くの自治体がChromeOSという選択肢に大きく軸が傾いた。

オンライン研修も開催しやすい。6月にG Suiteの研修を行った際は、ユニークセッション4000の参加があった。奈良県の教員数が約1万人であり、当日は研修画面を複数で見ている自治体もあることを考えると、参加率は極めて高い。

県域共同調達のメリット

共同調達によりPC整備を迅速に進めることができ、仕様書作成などの多くの事務を協議会が行うため、市の独自整備や仕組み作りに注力することができた。

2019年度末から2020年度にかけてGIGAスクール構想を始めとする多くの補助金が矢継ぎ早に出たが、協議会で情報共有を密にでき、各自治体がこれらの補助金を最大限活用することができる点も大きなメリットだ。

コロナ補助金等でネットワーク増強
9月末までに市内全小中1人1台PC環境 <奈良市教育委員会>

共同調達によるPC配備数では2万3217台と県内で最も多い奈良市教育委員会は、8月末より各校に納品を開始し、9月には活用が始まる。5年間のリース料の総額は13億247万3700円だ。奈良県域GIGAスクール構想推進協議会・調整部会の会長も務める奈良市教育委員会の谷正友氏に、共同調達のメリットと奈良市の整備について聞いた。

共同調達で2万3000台

 

奈良市の環境整備

奈良市(小学校43校・中学校21校)では、これまで5・4人につき1台程度のPCであった学校環境が、9月中には一気に1人1台環境になる。

9月以降、ChromebookでG Suiteを活用できる環境が奈良市全体に整うことで、近隣の他校との環境の違いを気にすることなく、授業実践に取り組むことができる。

これまで小学校で取り組んでいた学力向上システム「学びなら」事業は継続。さらに自動採点システムも活用する。現在、中学校向けの個別最適化システムを導入・選定する準備を進めている。経済産業省のEdtech補助金も活用してプログラミング教材やAIドリルなどを整備する予定だ。

PCはリース契約とした。保険をかけ、破損等の際に対応できるようにしている。

家庭向けWiFiルータは、レンタル・通信費・保険込みで整備。ソフトバンクと契約し、ボリュームディスカウントにより、一般価格の約5分の1程度で利用できる。

「使った分のみ通信費を払う」提案もあるが、「PCを家庭で使うほど費用がかさむ」仕組みは活用が妨げられると考えた。また、国の補助事業によるルータ整備の場合、保険や保守は対象外となるため、現在の契約を継続し、ルータ配備の補助金は充当しない予定。なお奈良県域の共同調達ではオプション提案でSIMが必要な場合に特別価格を提供することを予定しており、各自治体で9月以降、契約が始まりそうだ。

コロナ補助金でネットワークを強化

奈良市ではネットワークも強化する。GIGAスクール構想の補助金対象は校内だが、1人1台のPCが十分に稼動するためには、学校のインターネット接続を強化する必要がある。

奈良市では学校をいくつかのグループに分けて集約して接続している。これを、1人1Mbpsを目標にスピードを上げるためには、出口で20Gbps程度が必要で、月額料金が莫大になる。

ベストエフォート契約や各校がインターネットに直接接続するという案もあるが、奈良市規模の場合、オンライン授業を再開せざるを得ない状況になった際にベストエフォートだと速度を保障できない。帯域保障をして各校接続にすると割高になる可能性もある。

そこで、いくつか案を講じている。

まず、拠点間のメディアコンバータを変更して速度を向上。

さらに学校インターネットの出口をどこまで増強できるのか、複数事業者と検討して決める。奈良市の場合、地元のインターネットプロバイダーやケーブルテレビ、NTTを始めとする通信事業者、各携帯事業者など候補は複数ある。

本整備についてはGIGAスクール構想の補助金対象ではないが、コロナ交付金(新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金)を最大限充当して整備できるように準備中だ。

学校インターネットの増強は、1人1台環境を円滑に利用するための最も重要なポイントの1つであると考えている。

教員の校務環境については、外部接続専用ブラウザ「Soliton SecureBrowser」等の仕組みで校務系と校務情報系を論理的に分離。ブラウザを閉じればデータは残らないようにして安全を図った。教育における無線接続の802・1X認証も利用している。

奈良市では、これまでのPC整備に遅れがあったこともあり、機種選定は概ね順調に合意を得られた。課題として、全体として教員のICT活用経験が浅い面があり、今後はオンライン研修を充実していくなど活用体験を蓄積できる仕組みを準備していく。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年8月3日号掲載

 

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