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教育ICT

1人1台情報端末で経験量を増やす 教育DXで「授業や学びの在り方」が変わる<中村学園大学教育学部教授・山本朋弘氏>

2021年12月6日
第80回教育委員会対象セミナー・鹿児島

11月13日、鹿児島市内で第80回教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」が開催された。本セミナーは当初の8月開催を11月に延期して実施。鹿児島県では初開催。


中村学園大学教育学部教授・山本朋弘氏

山本朋弘教授は「教育DXは他分野に比べて遅れている。これまではデジタル化のみが中心であったが、今後は、授業や学びの在り方が変わる」と語り、その例を示した。

◇・◇・◇

福岡市立百道浜小学校は、校長が一斉にGoogleフォームで子供にアンケートを直接送り、その結果をグラフ化して皆に示しながら講話している。

大任町立大任中学校では、生徒会の承認を、クラウドを使って行っている。また、体育の授業でゲームアプリを使って作戦会議を行っていた。

熊本県水上村立岩野小学校では、子供が「夏休みの自由研究を4人でやっていいか」と、主体的に協働的な学びに取り組んでいた。

鹿児島大学附属小学校では端末を使って家庭で課題に取り組んでから、授業に臨んでいる。話し合いはチャットを活用。中には子供のチャット活用を全面禁止している学校もあると聞くが、トラブルを乗り越えてうまく活用することが教員の仕事である。

常識にとらわれていては、新しい学びは生まれてこない。常識の先には常識しかない。これまで非常識と思われていたことも含めて、試行錯誤することが重要だ。

11台端末活用は、フルアクセルで進め、ブレーキをかけずに使い倒す気持ちで臨むことを期待したい。「ICT活用を目的にしない」という検討は、ある程度使い続けてから考えるべき。考えるのはその後で良い。

ICTを苦手と感じている教員は、得意になるまで使おうとしない傾向がある。しかし教育DXで優先すべきは教員のICT活用ではなく、児童生徒主体のICT活用で、教員はコーチとして見守り、支援する役割を果たすことが重要だ。例えば端末で何枚も写真を撮影して初めてわかることがある。撮影前に何をすべきか、取捨選択するときにどんな判断基準が必要か等、体験に勝る学習はない。

1人ひとりの経験を増やす活用を

中には「端末よりもノートにまとめる方が簡単で時間がかからない」という教員もいる。キーボードによる入力スキルが十分ではないと、そうなる。毎日短時間でも入力する機会を設けることで入力スキルは急激に高まっていく。

「情報端末を使うと教科の目的が達成できない」という教員もいる。紙か情報端末かのツールの問題というより教材の問題である場合が多い。

ノートに今日の目標や振り返りを記入する学習を、そのまま端末で行うことは、良い活用とはいえない。端末活用で威力を発揮するのは、編集する必要があるものだ。例えば長文を書く場合は情報端末のほうが良い。校正の質が高まるからだ。

情報端末が全員にあることで、経験の量が増えることが重要だ。例えば英語のプレゼンテーションを、これまでは代表者のみがやっていた。これを全員で行うことだ。

福岡県田川市では、小学校低学年からプレゼンテーション大会を行っている。子供は端末上で発表内容をまとめていく。グラフや表は円にするのか、帯のほうが見やすいのかなど、各自が体験しながら挑戦している。

授業支援システムを使っている学校で、児童生徒の端末画面を一斉提示している場合がある。これも、一斉提示して何をするのか、を考えた方が良い。ある教員は最初、1人ひとりのコメントを皆の前で読んでいた。時間内に全員を読むことはできない。そこで教員は「続きは自宅で読んできて、それぞれにコメントを記入して」とつなげた。これが11台端末とクラウド活用で可能になることだ。

■データ活用へ

体育の時間に、演技の様子を撮影して振り返り、課題を見つけて練習する、という取組は多い。そこから一歩進み、これらの動画データを、数か月、数年単位で比較、自己変容を確認する取組まで発展している学校もある。評価基準を「誰が一番早いか」ではなく、「誰が最も速くなったか」とすることができる。デジタルドリルの導入も増えているが、これもデータが蓄積される。それをどう活かすかを考えることが重要だ。

■試行錯誤を繰り返し創造性を育む

導入期は様々な失敗がある。失敗した場合は見直して次につなげる。このときのポイントは、従来の指導方法も見直すこと。既成概念からの脱却である。プロジェクト学習やSTEAM教育で「探究的なプロセス」を繰り返し、試行錯誤することで、創造的な学びに高めることができる。

例えば、委員会や係活動等で、子供が自らGoogleフォーム等のツールを使ってWebアンケートができるようになると、主体的な学びにつながっていく。情報収集・整理・分析してまとめ、表現する力=探究のプロセスが求められるからだ。

そのためにも休み時間で情報端末活用を禁止しないことは重要だ。授業時間が終わって電源を消す、という指導は余計である。前の時間の学習の振り返り、プレゼン制作の続き、次の時間の準備、係の仕事、キーボード練習等様々な活用を妨げないこと。

ゲームをしたらどうするのか、YouTubeを視聴したらどうするのか、という声も聞く。活用が進んでいる学校では「学習に関係があれば自由」ただし「モラルに反することはしない」等のルールを設けていることが多いようだ。授業だけではなく、家庭も含めた「外」での活用の保障も重要。失敗しても解決すれば良いと考えて試すこと。家庭での端末活用については保護者含めて解決していくことが求められる。【講師】中村学園大学教育学部教授・山本朋弘氏

【第80回教育委員会対象セミナー・鹿児島:2021年11月13日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年12月6日号掲載

  1. 鹿児島市教育委員会 鹿児島市立学校 ICT推進センター所長・木田博氏
  2. 鹿児島大学教育学部附属小学校 教諭・三宅倖平氏
  3. 霧島市教育委員会 指導主事・時任志郎氏
  4. 中村学園大学教育学部 教授・山本朋弘氏
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