校務DXでは、クラウドを前提とした次世代校務支援システムの整備、校務系・学習系ネットワークの統合、さらにダッシュボードによる情報の可視化を中核に据えている。これにより、教員の柔軟な働き方を可能とし、自治体ごとに業務フローの標準化を目指すものだ。
ICT市場調査コンサルティングのMM総研は2025年2~3月にかけて、全国の教育委員会を対象に「校務DXに向けたICT整備動向調査」を実施。4月22日、その結果を公表。それによると現状で次世代校務支援システムの導入率は1割であった。
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校務DXの取組のうち、次世代校務支援システムの導入率は全体の約10%。文部科学省の実証事業である「次世代の校務デジタル化推進実証事業」(2024~25年度実施)等に参加した山口県、秋田県、岩手県などでは導入率が高いが全国的にこれからという状況だ。
導入予定の自治体は29%で、2025年~29年度にかけて毎年度数%ずつ導入されていく見込み。導入が集中するピークは見られず、既存システムのリプレース時期に合わせて分散的に進んでいくと本調査では予測している。
次世代校務支援システムの導入にあたり、文部科学省は都道府県単位での共同調達を推奨している。調査では、すでに「具体的な動きがある」が28%、都道府県側から「実施予定と聞いている/案内があった」が26%と何らかの動きを見せている自治体が半数以上。一方、「都道府県から何も知らされていない」と答えた自治体は45%だった。
都道府県別に見ると、具体的な動きがある・案内があったとの回答が過半を超えている都道府県は47のうち25(53%)。
共同調達の対応も都道府県間で温度差があるが共同調達に賛成する自治体は全体の71%に達しており、共同調達自体のニーズは高い。特に小規模自治体ほど賛成の割合が高い傾向だ。
導入形態では、従来のオンプレミス型からクラウド型(SaaS型)への移行が進みつつある。既にインフラ環境の検討が進んでいる自治体ではSaaS型がメインだ。また、カスタマイズなしでSaaS型を検討・採用する方針の自治体が28%、PaaS型/IaaS型が5%、オンプレミスが2%。システムに合わせて業務フローの見直しが進むと予測している。
NW構成も見直しが進む。2023年5月の調査時には校務系・学習系NWを統合する方針を掲げる自治体は10%にとどまっていたが本調査では、校務系・学習系NWを統合する方針である自治体が44%に達した。
国内ベンダーの校務支援システムの利用率はEDUCOMがトップで全体の33%。次いでスズキ教育ソフトが27%、内田洋行が8%。
2021年1月から2023年5月にかけて実施した前回調査と比較して主要ベンダーの構成に大きな変化はないものの、直近でベンダー各社からSaaS型の新製品の発表が相次いでおり、新規参入ベンダーも複数ある。
現状、全国学力学習状況調査のCBT対応に向けて必須とされている学習eポータルについてはNTTコミュニケーションズ「まなびポケット」が45%、内田洋行「L-Gate」が36%、オンライン学習システム推進コンソーシアム(実証用学習eポータル)が7%。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年5月19日号