豊田市教育委員会は独自で教育データを収集・可視化した「教育ダッシュボード」の構築を開始する。これ向けて5月23日、キックオフミーティングを開催。本システム構築に関わるすべての事業者が参集した。県内では初の試み。
写真左から杉野氏(トヨタ情報システム愛知)、松本氏(EDUCOM)、野毛氏(NTT西日本)、山本教育長、宮崎氏(日本マイクロソフト)、田部氏(Sky)、福本氏(COMPASS)
本システムでは、市で既に導入・活用している校務支援システムや学習教材・ツールにより蓄積されるデータに加え、紙で集約している調査結果や教員が独自で保存している記録を始めとする各種データを集約して教育ダッシュボードとして構築。システムはマイクロソフトPowerBIをベースに開発する予定でゼロトラスト対応も進める。
山本浩司教育長は「第9次豊田市総合計画の特に注力する視点が『こども起点』のまちづくりである。子供の思いを大切にし、1人ひとりを大切にする教育のため子供の状況を正しく把握する手段として教育ダッシュボードは有効。アレルギー対応や日本語指導が必要な児童生徒など、多様な子供すべてに応じた教育を提供できる仕組みを構築し、教員が寄り添うことができるようにする。本事業に関る皆様のお力添えが必要である」と宣言し、各事業者に協力を依頼した。
豊田市では昨年度、教育ダッシュボード構築に向けた委託を競争入札。NTT西日本が事業者として決定した。初年度は既存の教育ダッシュボードに関する調査と基本設計を実施。今年度は詳細設計及びテスト校で検証し、次年度から一部の機能を全校で利用する予定だ。
当日参集した事業者は教育ダッシュボードの設計を担うNTT西日本、主にインフラ構築を担うトヨタ情報システム愛知、同市にMicrosoft365を導入している日本マイクロソフト、学校支援システムを提供しているEDUCOM、AI型学習教材を提供しているCOMPASS、学習管理システムを提供しているSkyの計6社。各システム等において既に日々蓄積されているデータを集約して可視化。子供のデータは子供のものという考えで方向性を合わせ、相談しながら進める。
教育ダッシュボードの基本設計では先行事例をまとめ、かつ教員や教育委員会から意見を収集してイメージを作成。幅広いデータを積極的に活用したいという意向を反映するとともにデータに溺れることなくバランスを取り、気付きや今後の示唆を提示できる仕組みとしたい。
豊田市には校務環境としてマイクロソフト365 A5を導入。首長部局ではCopilotの利用も始まっている。教育ダッシュボード構築においてはクラウド上に点在するデータを統合・分析するAI技術の利用が考えられる。また、ICT活用やデータ活用が苦手な方にもAIが必要な情報をレコメンドすることも考えられる。テクノロジーが人に合わせる世界観を実現し世界に発信できる事例となるように支援したい。
2007年度より保健管理機能と校務支援システムを同市に提供。名簿や出欠情報、期末や単元ごとの成績、健康関連情報、保健管理システムのデータなどが提供の対象になると考えている。校務支援関連では教育ダッシュボード化を見据えた調達が増えており、このような形は今後も増えていくと考えている。
豊田市はドリル教材「キュビナ」を積極的に活用しており日々、データが蓄積されている。問題情報、解答状況、正誤状況、学習量や習熟度、解答にかかった時間、再学習の状況など様々なデータを提供できると考えている。
最終的には子供自身でデータをふり返り活かすことを理想とし、まずは教員を支援しやすい仕組みとしたい。
日々クラウドに蓄積されているデータをどう活かすのかが問われるフェーズにある中、豊田市の取組は有意義で価値がある。
児童生徒の発表・作品データや気付き・ふり返りメモなどスカイメニュークラウド上で取得できるデータのほか、端末活用頻度やログイン回数などのデータの提供が可能。仕様に合わせたバージョンアップ等の提供も想定している。
GIGA第1期から豊田市の端末実機導入・システム構築を担当。現在、校務系・学習系に分かれているネットワークを連携・ゼロトラスト対応を進める。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年6月16日号