一社・デジタル人材共創連盟(デジ連)は3月14日、「デジタル学園祭~第3回全国情報教育コンテスト」の最終審査会と表彰を行った。本コンテストは「情報Ⅰ・Ⅱ・探究・部活動等で得た力を発表する場」を設け、プログラミングやデータ分析、問題発見・解決力や提案力を発揮する作品を募集。
今回は646件の応募があり、最終審査会では介護問題や地域の課題、学校の課題解決などを発表。文部科学大臣賞や優秀賞(2チーム)、総合的な探究賞、情報Ⅰ・Ⅱ賞、企業賞(4チーム)を決めた。
デジ連の鹿野利春代表理事は「今回、初めてブロック大会を実施した。今後、自治体レベルで参加する大会として日本全体に広げ、100回でも200回でも続けていく。今回受賞を逃したチームはぜひ再挑戦してほしい」と思いを語った。既に4月から第4回全国情報教育コンテストのエントリーが始まっている。締切は12月15日だ。

世田谷学園中学校の阿部さんは文部科学大臣賞、最優秀賞、2社の企業賞を受賞
文部科学大臣賞は、中学校1年生(応募時)である阿部洸和さん(世田谷学園中学校)による「『フォトものがたり』あの時の1枚が、物語になる」が受賞。なお最優秀賞及び2社(ミクシィ/ソフトバンク)の企業賞も受賞し、4賞を独占した。
本作品は「写真を1枚アップロードすることで、AIが日付や場所を特定し、当時のニュースや流行、写真に撮影されていない前後の出来事をAIがつなぎあわせて物語化する」もの。
実際に40~80代36人に本アプリを試したところ「写真に写っていない前後のことまで思い出した」「当時のニュースを思い出した」と7割以上が回答したと報告。
また、73歳の祖母の若い時代の写真をアップロードしてAIが物語を読み上げると、祖母は目に涙を浮かべて追体験し、さまざまな回想に思いを馳せていたという。
阿部さんは、「誰かと話しながら回想する方がより効果が高いともいわれていることから、AI音声対話機能を追加して思い出話を盛り上げることも考えている。介護保険施設1万3000施設すべてが導入すれば月額基本料5000円で提供可能。介護保険施設や研究機関と実証実験したい」とプレゼンテーション。人の心をゆさぶるAI活用として高く評価された。

優秀賞を受賞した群馬県立高崎高等学校の久保さん、竹内さん、山本さん
優秀賞は2作品選出。
1作品目は、群馬県立高崎高等学校の久保晃市さん、竹内桜介さん、山本佑斗さんが考案した「TakaChalink-放置車両とエリア外利用の対策をするシェアサイクル運用システム」だ。「たかちゃり」とは、高崎市が運営する無料自転車。しかし利用時間内に指定の場所に戻らない、エリア外に放置されているなどの問題が頻出している。そこで利用者の気軽さを維持しつつ不適切利用を防ぐ仕組みを考案した。
▼エリア外に出ると音声通知され管理者に通知が届き、いつ何台出たのかも通知される ▼放置車両を見かけたらQRコードを用いて通知することでポイントを獲得できる ▼アプリの運営費用は広告収入で賄う
発表者は「放置自転車の回収に伴う人件費よりも低コストの仕組みを考案。アプリのバッテリーは自転車のハブダイナモで給電する。実用面をさらに高めていきたい」とプレゼンした。

同じく優秀賞を受賞した刈谷市立刈谷南中学校の加藤さん
2作品目は刈谷市立刈谷南中学校の加藤正宗さん考案の「S.M.S太陽エネルギー総合活用機構」。「太陽から得られるエネルギーを‘電気・熱・光’として最大限活用する仕組み」を提案した。
太陽光パネルでは、熱エネルギーや反射光などの多くが未利用のまま失われているためだ。企業から高性能素子や木材の提供を得るなど、中学生ながら産業界と連携した点も評価された。制作コストは1基あたり約30万円。「現状の100万円規模の装置より安価に提供できる」とプレゼンした。
総合的な探究賞を受賞した福岡県立新宮高等学校は、学校にデジタル案内板を設置して利便性の向上を図った。
情報Ⅰ・Ⅱ賞を受賞した奈良県立天王寺工業高等学校は、介護士業務の約20%を占める配膳・運搬作業のロボット化に挑戦。
このほか、AEDを最短で現場に届けるドローン開発のアイデアと試作品を発表した帝塚山高等学校、伝統文化の衰退に危機感をもち、百人一首ARアプリを開発した宮崎県立佐土原高等学校、和牛の発情予兆(歩数増加)を検知するデバイスを提案した群馬県立利根実業高等学校、修学旅行の”複雑すぎる情報”を一括管理するWebしおりを作成した修道高等学校などの発表があった。賞を逃したチームの表情には悔しさも見られた。
審査員と参加者が交流するシーンでは、具体的なアドバイスを得、次回の参加を決心する様子も見られた。

審査員と直接交流。アドバイスに耳を傾けて次の挑戦に活かす
ミクシィでは業務の99%でAIを使っており、AIはすでに‘仕事の前提’。コーディングについては60~90%をAIが担っている。これまで3か月以上かかっていた作業が5営業日に短縮した例もあり、もはやAIは”特別な技術”ではなく、仕事を進めるための基本インフラだ。
今の中高生はデジタルネイティブだが、AIネイティブではない。だからこそ、一刻も早くAIに触れ、使いこなす経験が必要。大学進学前にAIスキルを身につけるという選択肢もあり、AI時代のキャリアは一本道ではない。自身も専門学校を中退して就職を選択している。
AIは「対話」だけでなく「ものづくり」に使うべきだろう。ものづくりに利用することで、創造のスピードが桁違いに上がる。
AIは”仕事を奪う”ものではなく”日本を強くする”もの。日本の停滞した市場を再び成長させる力になる。学校と企業が一緒に取り組むことで、どんな課題が本当に価値があるのかについて、共に考えることができるのではないか。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年4月27日号掲載