愛知県豊田市にある豊田工業高等専門学校の情報工学科を中心とした学生チームは、2026年3月にベトナム・ハノイで開催された「第17回NAPROCK国際プログラミングコンテスト(The 17th NAPROCK International Programming Contest – NAPROCK PROCON 2026, Hanoi)」において最高賞である Grand Prizeを受賞した。
本コンテストは、高専生および工学系大学生を対象とした国際的なソフトウェア開発コンテスト。参加チームは自分たちが開発したシステムについて、英語によりプレゼンテーションとシステムのデモンストレーション、審査員との質疑応答を行う。

NAPROCK国際プログラミングコンテスト2026における表彰後の記念撮影
今回のテーマは「ICTで実現する持続可能な社会=ICT for a Green Future」。日本、ベトナム、モンゴル、タイの4か国から36チーム114人の学生が参加し、社会課題解決型ソフトウェアの開発を競った。
受賞作品「エネまるクラフト(Enemaru Craft)」は、再生可能エネルギーの仕組みやエネルギー利用の考え方を、ゲーム感覚で楽しく学べる教育支援システムだ。
風の強さ、明るさ、温度などの環境データをセンサで取得。そのデータを仮想空間に反映させる。すると仮想空間で使える電気量が変化していく。再生可能エネルギーの仕組みや発電量の変化をゲーム感覚で学ぶことができる。技術力、独創性、社会的有用性、完成度、プレゼンテーション能力、実用性の観点から総合的に高評価を得た。

学生がデザイン・開発した環境センサ組込みデバイス
参加学生の竹澤諒さんは「自分たちのアイデアを形にした作品が、国際的にどのような受け止め方をされるかという点が一番の関心事でした」と話す。指導教員の都築啓太准教授によれば、開発にあたっては誰にとっても分かりやすく、使ってみたいと思える形に仕上げることを意識したという。「コンテストでは技術の高さだけでなく、その技術がどのような課題を解決し、どのような価値をもつのかを伝える必要があります。システムの機能面に加えて、ソフトの画面の見え方や授業での体験の流れなどを分かりやすく説明できるよう改善を重ねました」
チームメンバーはそれぞれ得意分野が異なる。
「メンバーの役割分担を明確にして互いの進捗や課題を共有し、試作品を何度も確認・修正していきました。相手に伝わるかどうかという観点で見直しを繰り返したことが、完成度の向上につながったと感じています」
参加学生の鈴木幹太朗さんは「当初、誰にどのように使ってもらうかがイメージできていませんでした。小学校で実証実験を行う目標ができてからは、どうしたら児童に分かりやすく使いたいと感じてもらえるかという方向で考えることができました」
コンテスト参加を通じて学生は、国際的な場で自分たちの成果を説明し、相手に伝える力が大きく伸びたと都築准教授は感じている。
「普段の授業や校内活動では、相手も分かっている前提で話すことも多いのですが、国際コンテストでは異なる文化的背景や価値観をもつ相手に対して、論理的かつ簡潔に説明する必要があります。これは非常に大きな学びでした。また、社会にどう役立つのか、どう見せれば伝わるのかを考えることで、技術を社会につなげる視点も育ったと思います」
海外の参加者と交流するなか、自分たちの現在地を客観的に知り、自信をもっていい部分とさらに伸ばすべき部分の両方を実感。成長につながる経験となった。
「日本語でも自分たちの価値を理解してもらうのは難しい。英語でプレゼンや質疑応答を行い、賞をいただけたのは自信になります」(竹澤さん)
「自分たちのシステムをどれだけよく見せるかが審査の鍵になると考えていました。英語によるプレゼンでしたが、自信をもって多くの人にシステムの良さを伝えることができたことが賞にもつながり、自分の力にもなりました」(鈴木さん)
都築准教授によれば、現在の高専生は非常に柔軟で吸収が早く、デジタル技術への親和性が高いという。「今の高専生は自分たちで課題を見つけ、チームで形にしていく力を伸ばしていくことができます。適切な環境ときっかけがあれば、非常に大きく成長できるポテンシャルを持っています」
高専は従来から実践的技術力の高さが社会から評価されてきた。今後はそれに加え、国際性、課題発見力、発信力、社会実装まで見据える視点がますます求められる。
「社会の課題は複雑化しており、単に技術を知っているだけではなく、その技術を使って何を実現するのか、誰のために役立てるのかまで考えられる人材が必要です。高専は年齢的に早い段階から専門教育を行い、ものづくりや実験、チーム活動を重ねていく教育機関ですので、こうした人材育成と非常に相性がよいと考えています」
今後は地域連携や企業連携、国際交流をさらに進め、社会や世界と接続しながら学ぶ場を増やしていく考えだ。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年5月25日号掲載