神戸市立工業高等専門学校(神戸高専)は、優れた人格、理論、技術を身につけた技術者を育てるため、「人間性豊かな教育」「基礎学力の充実と深い専門性を培う教育」「国際性をはぐくむ教育」を3本柱に人材育成を行っている。2023年度から神戸市外国語大学と同じ法人運営となり、講義の相互開放や学生交流を通じて、多角的な思考力と国際性を養える環境を構築した。
研究活動にも積極的に取り組んでおり、日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費)の獲得でも実績を上げている。神戸高専によれば、科研費の配分額は全国の高等専門学校の中でも上位に位置している。
企業との共同研究や実証実験への協力なども積極的に進めている。今回は神戸高専が今年1月から約1か月間にわたって実施した、新明和工業が行った配送システム実証実験への協力を中心に紹介する。
兵庫県宝塚市に本社を置く新明和工業は1920年に創業。終戦までは航空機製造を主力にしていた。戦後、航空機製造が全面禁止になると、航空機製造で培った技術をもとに、ダンプトラック、ごみ収集車、機械式駐車設備、各種産業機器など、社会インフラに寄与する製品を供給してきた。現在は海上自衛隊向けに「US-2型救難飛行艇」を納入するなど、航空機分野も事業の柱となっている。
今回の実証実験は昨今の社会課題の一つともなっている、宅配業界などにおけるラストワンマイル配送に関するものだ。増加する物流量、労働力不足、タワーマンションなどの大規模集合住宅における配送効率など、ラストワンマイル配送については解決すべき課題が多い。
新明和工業はパーキングシステム事業で培った搬送技術を応用し、配送員と荷受者双方の負担を軽減するとともに、ラストワンマイル配送において省人化・完全自動化を実現させるための新たな配送システムの構築に取り組んでいる。

自律走行ロボットが荷物の配達を行った
神戸高専が実証実験に参加するきっかけは、同校の卒業生で新明和工業の社員が進路関係の行事で来校した際、神戸高専の教員が新明和工業の手掛ける新配送システム開発に関心をもったことがきっかけだ。その後、新明和工業から神戸高専での実証実験を提案された。
同社ではそれまで、自社敷地内で検証を行っていたが、そこから一歩進め、集合住宅に近い受取環境での実証実験を検討していた。神戸高専では日常的に校内で書類や荷物の受け渡しが行われているうえ、複数の受取先(教員の研究室)が存在する。集合住宅に類似した環境であることが実証実験に適した場所だと判断された。「本校は教育・研究のみならず、産学連携や地域貢献も重要なミッションと考えています。本校が実証実験に協力することで、企業と教職員・学生の交流機会が生み出されるとともに、新たな共同研究のきっかけとなるなど波及効果も期待されます」(神戸高専 道平雅一教授)
実証実験は、配達を行う自律走行ロボットを用いて行う。神戸高専キャンパスの本部棟内の配送拠点にロボット格納可能な配送ステーションを設置し、4階建別棟にある教員の研究室(荷受け側)には配送棚を設置。
荷物を教員に届けたいときはステーションに荷物を預け、その後はロボットが自動で教員研究室まで配送した。実証実験により、配送作業を省人化し、荷受者は任意のタイミングで荷物を受け取ることができ、荷物の再配達の必要性も減少することが確認できた。
今回は、走行時の安全管理上の必要性や、エレベーター操作のため開発担当者が帯同した。将来的にはエレベーターや自動ドアなども自動で通過できるようにする。
「5年一貫教育である高専は、多様な探究活動に集中して取り組める利点があります。特に近年のIT技術の急速な進化による影響もあり、低学年から自ら作品やサービスを開発しようとする学生が増えてきています」
神戸高専は、近年の「グリーン・デジタル」への産業構造の変化や、「高度情報人材」に対する社会的ニーズに応えるため、26年度に学科再編を行う。従来の5学科体制(機械工学科、電気工学科、電子工学科、応用化学科、都市工学科)を、機械システム工学科、電気電子デザイン工学科、環境応用化学科、都市デザイン工学科に再編するとともに、システム情報工学科と知能ロボット工学科を新設。6学科体制(定員240名)にする。
「女性エンジニア養成枠」「高度情報人材養成枠」の新たな推薦選抜枠も新設。女性エンジニアやスタートアップに興味のあるエンジニアの養成が目的だ。県外受験も、自宅から通学可能であることを条件に認めた。さらに地元企業と神戸高専との連携強化を図るべく「地域共創テクノセンター」を27年度から運用開始する予定だ。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年3月16日号掲載