3月13日、教育DXを積極的に推進する自治体を表彰する「教育DX推進自治体表彰」が開催され、17自治体が表彰された。山西会長(一般社団法人ICT CONNECT21)は「世界的に『1人1台端末』が当たり前となった今、どんな学びをつくるかが問われる。そのリーダーシップをとるのが教育委員会である」とあいさつ。
17自治体は教育DXの取組を5分間で紹介。「端末配布」では終わらないそれぞれの自治体の創意工夫と一歩進んだ取組が次の学びを形づくっている。

オンラインを含めて17自治体が参集した
荒川区(小学校24校・中学校10校)は2024年夏に教職員の校務環境を刷新。
これまでの教員用端末「2台持ち」から「Chromebook+仮想Windows環境」による1台運用をスタート。校務のクラウド化とゼロトラスト構想を同時に進め、時間、場所にとらわれない柔軟な校務環境を実現している。
茨城町(小学校4校・中学校2校)では町内のICT活用格差を縮める目的でICTメンター制度を設けており、会議は年5回開催。ICT研修にも力を入れており、2025年度はデジタル教科書やAI探究などをテーマに9講座を設けた。
大学生・大学教授と連携した授業改善プロジェクトも実施。
遠隔教育システムを活用した教育の質向上に関する実証事業や生成AIを活用した英語教育高度化実証事業などの国の事業にも積極的に参加している。
甲府市(小学校25校・中学校11校)では教育データを「こうふのたからばこ」に蓄積してダッシュボードに見える化。ダッシュボードは「学習ログ+校務ログ」を統合し、常に改善を加えている。
タイピング大会を年3回実施。データを”子供自身が見て伸びを実感できる”仕組みにより、1年間でスキルの伸び率が88%であった。
モデル校を作らず、全26校で均等にICT活用やDXを推進するのが四国中央市スタイルだ。STEAM教育は、四国中央STEAMラボと大学連携で実施。
また、世界初のARスポーツ「HADO」を学校に導入して心拍データを生成AIに分析させてアドバイスを得るなど、新しい学びに積極的に取り組んでいる。
全教職員に業務用スマートフォンを配布し、ゼロトラストを想定したネットワーク環境を構築してロケーションフリーな校務環境としている。
摂津市(小学校10校・中学校5校)ではMicrosoft A5+Copilotで安全を担保しながら生成AIを積極的に活用。「大人がまず使って失敗する」ことが重要と考えている。
生成AIの校務利用は、校務支援センターと連携して推進。自動採点システムは、中学校で導入。各業務につき最大70%の教員が効率化を実感した。
ICT活用率は全国トップクラスのつくば市(小学校33校・中学校14校・義務教育学校4校)は、つくば市教育研究所が中心となり、学習ログや授業データを分析し、エビデンスに基づく授業改善を実施。
AI活用では、教材作成、発問例の生成、英語スピーキング練習、児童のつまずき予測など、個別最適な学びを支える実践に着手。研究機関との連携による探究プログラム、オンライン国際交流、ロボット・ドローン・3Dプリンタを活用したSTEAM学習など、未来の学びを市全体で積極的に取り組んでいる。
離島である瀬戸内町(小学校9校・中学校8校)はStarlink(衛星インターネットサービス)を用いた遠隔授業で複式学級を支援している。Starlinkは「ユーザ端末(アンテナ)+Wi-Fi」のセットを設置するだけで利用でき、光回線の工事が不要。離島や山間部の学校で導入が進んでいる。フィジー島や台湾との国際交流もオンラインにより活発に行うことができる。
AIを用いた音読やプレゼンテーションの練習で英語力の向上を図る、探究的な学びでNotebookLMを活用するなどAI活用にも着手している。
垂水市(小学校7校・中学校1校)では「情報活用科」を新設。情報活用能力の体系表を作成し9年間で情報活用能力を育成している。
情報活用能力を活かしながら地域課題解決学習(防災プラン提案、産業連携など)に取り組んでおり、全国学力学習状況調査でも成果が表れている。
取手市(小学校13校・中学校6校)は「デジタル相談窓口「ハートとアート相談室」を設置。専門家とつながることができ、22時まで相談可能だ。校内オンライン相談窓口は、信頼できる教員を選択して配置するようにしている。
日進市(小学校10校・中学校5校)は子供の安全・プライバシー・学習権をICTで保障する仕組みとして「こどまもfor School」、通称”こどまも”の仕組みを構築。
過度な監視を避けるガイドラインを整備するとともに端末活用を可視化。子供の意見表明権も尊重。電子図書館に学習動画(2分程度の動画教材)を搭載し、ICT活用と権利保護のバランスを意識して学ぶことができるようにしている。
東村山市(小学校15校・中学校7校)ではベテラン教員の”経験値アップデート”を支援。べテラン教員がICT活用に不安を抱えやすい点について、技術支援員+校内ICT担当+管理職が三位一体で伴走。
62歳の再任用教員の成功事例を市全体で共有し、「できない」を責めるのではなく、”できるようになるプロセス”を組織で支えることに取り組んでいる。
枚方市(小学校44校・中学校19校)は、校務用生成AIを2024年度から本格導入した。
Microsoft Copilotを活用できる環境を整備して「探究科」で生成AIを活用。パイロット校の好事例を市内展開している。
本宮市(小学校7校・中学校3校)は効率よく知見を共有して授業改善を進めるために「記録のデジタル化×生成AIの要約」を組み合わせた運用を開始。
授業後のふり返りをVoiceメモ(音声)で記録し生成AIが自動で要約・論点整理。分科会(教科部会)での共有などが短時間でできるようになり「新しい当たり前」が始まっている。
柳川市(小学校14校・中学校6校)ではGIGA端末の活用を「学習の基礎体力づくり」と位置づけ、タイピングスキルを「読み書きそろばん」に並ぶ基礎スキルとして徹底強化を図っている。
2024年10月に「GoldFinger(ゴールドフィンガー)」の自治体ライセンスを導入し、「学年×10文字」を目標に文章入力スキルに特化した指導を行っている。速度だけでなく「正確性」を重視して指導。導入からわずか2か月後の2024年12月には、6年生は「基礎レベル」課題で正答率100%を達成した。
京丹後市(小学校14校・中学校6校)では「行政がブレーキにならない」を合言葉に施策を進めている。英語力強化の取組では、発音矯正アプリELSA SpeakとGoogle Geminiを組み合わせ、児童生徒が”話す英語”を主体的に練習できる環境を整備した。
AIが発音をスコア化し、改善ポイントを即時フィードバックするため、児童生徒の学習意欲が高まり、英語のスピーキング指導が効率化した。AI活用を日常化する取組も推進。市内の子供たちとAIがラッピングバスを共同制作するなど「AIを使いこなすまちづくり」を目指す。
貝塚市(小学校10校・中学校4校・義務教育学校1校)では市内の教員有志による「AIワーキンググループ」が中心となり”現場の先生が現場の先生に教える”研修を実施。
授業のねらいを整理、発問例の生成、計算問題の大量作成、掲示物のデザインなど、現場主導で成果を共有。「現場が動き、行政が後押しする」取組が定着している。
嘉手納町(小学校3校・中学校1校)では教員の校務負担を減らすため校務からAIを活用。校務DXが”AI活用の入り口”として機能している。
AI活用を”禁止”ではなく”安全に使う”方針で生成AI活用ガイドラインを整備。AI活用事例集(校務編・授業編)を作成し、プロンプト例も共有している。心理的ハードルを下げることにつながり教職員に余裕が生まれ、発問例の生成や単元構成の整理、レベル別プリント作成など、授業の質向上にもつながっている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年4月27日号掲載