全国の高等専門学校生がAIとものづくりを武器にビジネスアイデアを競う「第7回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON2026)」が開催された。応募は過去最多の119作品。一次審査98作品、二次審査34作品を経て、最終的に10チームが本選に進出。
本選は東京・渋谷ヒカリエホールで行われ、AI・ロボティクス・社会課題解決をテーマに、全国の高専生が本気の事業プレゼンを展開した。

最終審査に残った10チームがプレゼンテーション。アイデアと技術、ビジネスアイデアを競った
実行委員長の松尾豊教授(日本ディープラーニング協会理事長)は、「ロボットや実世界で動くAIすなわちフィジカルAIが急速に広がっている。高専生の‘ものづくり力’との相性が良く、スタートアップも増えている。Dコンへの期待はますます大きくなっている」と、AIの急速な進化を背景にフィジカルAIの重要性を強調した。
全国高専連合会の大塚智彦会長は、高専の使命として「科学技術人材の育成」を掲げる。第1回は12校18チームだったが、今年は40校91チームに拡大。これまでに12社のスタートアップが誕生しており、Dコンは「起業の入口」として機能している。
「Dコンは、高専生が自ら課題を発見し、AIやDL(ディープラーニング)を掛け合わせて新しいビジネスを構想する場。アントレプレナーシップ教育の象徴的な取組」と話す。
自身も高専出身である中村裕之文部科学副大臣は「日本の未来を頼むよ」と高専生の挑戦を激励。「Dコンに参加している時点で、大きな可能性の一歩を踏み出している。課題を見つけ、仲間と協働し、自らの技術で解決する姿勢は今後ますます重要」と語った。
Dコン最大の特徴は、ベンチャーキャピタル(VC)が実際に投資したい金額=企業評価額で順位が決まる点だ。
5分プレゼン+5分質疑を通してVCが「投資したいか」を本気で判断。最優秀賞は起業資金100万円(2位50万円、3位30万円)を獲得する。松尾委員長は「VCには実際に出せる金額で評価してもらう。社会と同じ物差しで評価されるからこそ価値がある」とその意義を説明した。参加10チームは、AIエージェントによる配送最適化、AR×介護DX、認知症早期発見AI、飲食店DXなど、多様な領域で独自の技術を披露。
その中で企業評価額1位を獲得したのが、下水管点検ロボットを企画・制作した豊田高専「Kanro AI」だ。下水管内部を自走し、リアルタイムで劣化を検知するAIロボットで、狭い管内でも自律走行し、点検結果をクラウドで可視化。すでに事業者と実証も行っている。さらに「メーター課金モデル」である点が、インフラビジネスモデルとして高評価を得、企業評価額は5億6000万円を獲得。
2位は、災害通信デバイスを企画・開発した沖縄高専Rewave。LPWA通信を活用し、広域で低電力通信を実現。災害の混乱時において、AIが信頼度の高い情報のみを抽出して提供する。既に名護市で全校導入、能登半島地震でも309台が稼働している。特許取得済で実装力が高い点が評価された。企業評価額4億円。
3位は、初期消火ロボットを企画・開発した沖縄高専「Seesar Labs」。温度センサーで異常熱を検知し、犬型ロボットが自動で消火器を噴射する。スプリンクラーを利用できない倉庫市場のニーズに合致していると評価された。犬型ロボットの動きもスムーズだ。企業評価額3億円。
松尾委員長は「世界的にAI投資が加速するなか、VCの目も肥えている。だが、高専生は確実に進化している」と総括。大塚会長は「Dコン出場はゴールではない。ここから先、起業に向けた挑戦が続く。失敗を恐れず、社会に価値を届けてほしい」と語った。
社会への変革力を評価される経済産業大臣賞は、アドフォンを開発した沖縄高専Rewaveが受賞。農林水産分野の変革力を評価される農林水産大臣賞は、盆栽を愛でる行為を深化させた舞鶴高専「ことの葉」。農林水産分野に深く根ざした伝統文化である点、欧州盆栽市場を視野に入れたビジネスモデルが高く評価された。
技術を活かして未来を切り拓く点を評価される文部科学大臣賞は、介護の判断業務をARグラスとAIでリアルタイムに支援するシステムを企画、開発した神山まるごと高専「codell」。開校3年目、同校初の3年生である。現場の判断を支えるARプラットフォームとしての汎用性に加え、離職率の高い現場に新たな可能性を示した点が高く評価された。
アクセスネット、NECソリューションイノベータ、セブン銀行、TOPY工業、トヨタ自動車、フソウ、ポーラメディカルなど、多くの企業が賞を提供。高専生の技術と発想が、産業界からも評価された。
Raspberry Pi 5(8GB)の贈呈や会社見学、ATMショールーム見学など副賞も魅力的な点が企業賞の特徴だ。
本選に出場した10チームは次。沖縄高専からは3チームが選出されている。▼仙台高専・広瀬それいけ!運搬マン▼神山まるごと高専・codell▼沖縄高専・Omoide.lab▼舞鶴高専・MAIZURU▼沼津高専・SOUTA▼久留米高専・Atelier-I▼沖縄高専・Seesar Labs▼沖縄高専・Rewave▼豊田高専・Kanro AI▼釧路高専・超音サンマ
松尾研究室では完全オンデマンドでAI実践ブートキャンプを開催する。
第1週は8月26日から、第2週は8月31日からそれぞれ3日間、確実3時間を予定。単位認定も可能。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年5月25日号掲載