1963年に創立した大阪公立大学工業高等専門学校(大阪府寝屋川市)。高専全58校のうち公立は3校であり、同校はそのうちの1校。
全国に先駆けて2005年度から1学科制(総合工学システム学科)を取り入れ、ものづくりに関わる企画・設計・生産をトータルに考え、実践できる技術者の育成に取り組んでいる。目的は社会のニーズに応えること。
それまでは機械工学、システム制御工学、電子情報工学、工業化学、建設工学の5学科を設置していたが現在は、総合工学システム学科の中にエネルギー機械、プロダクトデザイン、エレクトロニクス、知能情報の4コースを設置。
1年次は全コース共通の一般科目(英語や基礎数学など)及び専門共通科目(情報など)を学び、2年次から4コースに分かれて専門知識と技術を習得する。
3年次からは「応用専門分野」科目で幅広い分野を学び、学生自身が自分の興味関心を広げて将来の職業に対する意識を高めるようにしている。
近年の同校の高専ロボコンにおける活躍は目覚ましい。6年連続で全国大会出場を果たし、2023年及び24年大会で2連覇を成し遂げた。
2024年大会の競技テーマは「ロボたちの帰還」。昨今話題となった月面探査機SLIMの「ピンポイント着陸」や、はやぶさ2の「サンプルリターン」などをイメージした競技内容で、ロボット自身が別のロボットを発射して狙った場所に着地させ、発射されたロボットが目的地にあるボールや箱といった形状の異なるオブジェクトを回収。元のロボットが待機する場所に持ち帰る。
同校チームは「安定して迅速にミッションを完了する」コンセプトで設計。細かな調整を迅速に行うためにすべての発射機構を電動化し、正確な着地を目指した。
オブジェクトを回収するロボットには、素早く回収できる機構を装備。回収後はオブジェクトを一気に投げ戻すことで、短時間でミッションを達成できるような工夫を重ねた。
2024年大会での優勝の瞬間
同校の安藤太一氏(総合工学システム学科メカトロニクスコース・エレクトロニクスコース講師/生産技術センターIoT&ロボティクス部門長)は、ロボコン参加の意義について、
「ロボコンは単なるロボット制作にとどまらず、チームで協力し、試行錯誤を繰り返して課題を乗り越えるプロセスに価値があります。その過程を通じて、学生は精神的に成長し、協調性を身に付けていきます。技術の習得は授業で可能ですが、人間としての成長はロボコンなどの活動でこそ得られると考えており、大きな意義があると感じています」と話す。
ロボコンへの参加は、学生主体のクラブ活動という位置付け。
失敗を恐れず挑戦し続ける環境づくりが重要と考え、学校として活動場所や活動時間を確保。顧問は主にメンタルケアや相談役を担いロボット制作に関する具体的な指示はしない。
近年ではこのほか「廃炉創造ロボコン」や「キャチロボバトルコンテスト」など様々なロボットコンテストにも挑戦している。
27年度には、大阪公立大学の中百舌鳥キャンパスへの移転が決定している。大学キャンパスの中に高専が存在する全国初のケースとなる。
安藤氏は「先端の工学研究を行っている研究室が徒歩わずか数分のところに存在する環境は高専の学生にとって大きな刺激になる。移転後は大学との連携をさらに進めたい」と抱負を語った。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年6月16日号