特別支援教育では、児童一人ひとりの認知特性や学習のつまずきに応じた支援が求められている。特別支援教室「ひまわり」の谷川由美主任教諭は、九九の定着に課題を抱える児童への支援として、大日本図書のゲーム教材「九九パンケーキ」を活用した。
「ひまわり」は小平市立小平第六小学校を拠点校とし、小平第十二小学校、小平第十三小学校、上宿小学校の4校を巡回しながら、多様な特性をもつ児童の学習支援を行っており、自閉症、情緒障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの児童が在籍している。

谷川主任教諭
九九パンケーキは、サイコロで出た数の段の九九カード(パンケーキ)を手持ちの中から順番に出して積み上げていくゲームだ。バターをのせた人がパンケーキタワーを獲得し、最終的に最も多くパンケーキを取った人が勝ちとなる。カードに九九の式が書かれており、九九が苦手な児童もヒントを得ながら取り組むことができる。
谷川教諭は、算数や読み書きに困難を抱える4年生を対象に、本教材を活用。4年生では割り算や筆算など抽象度の高い内容が増え、九九があいまいなままでは学習が進まない。なかには九九が思い出せずに手が止まり、涙を流してしまう児童もいるという。
谷川教諭はこれまでも、九九の苦手な段だけをまとめた小さなカードを作成し、困ったときに参照できるようにするなどの支援を行ってきた。そのうえで九九パンケーキを導入した理由について「教材をひと目見て、かわいい!おいしそう!と感じ、九九や、数字に苦手な子供も楽しく学べるのではないかと考えた。自宅で家族と試した際もとても盛り上がり、学校でも使ってみたい、と思った」と語る。
1学期に、毎週1回、5〜10分程度を約2か月間、課題別指導(実態による個別課題)の中で活用。
最初はルールの理解に時間が必要だが「絵がかわいい、おいしそう」「遊んでみたい」など、児童自身が教材に好意的な印象を持てることが最初の意欲づけになった。
児童が手持ちのカードを机に並べることで、どの段が苦手なのか、どの数字で悩んでいるのかが一目でわかり、指導の手がかりになったという。

写真左 九九パンケーキタワー(対戦型)、写真右 九九パンケーキタワー(協力型)
ゲームを繰り返すうちに、児童の数字への気付きも増えていった。
サイコロで8が出た際、手持ちのカードに8の段の数字がある場合は「いいカードが出た」と即座に判断して喜ぶなど、数字を見るとすぐに何の段かがわかるようになった。
こうした気付きは割り算の理解の基礎にもなる。数字への興味・関心が深まることで、算数に取り組むことに対する負荷が軽減されることにもつながる。楽しく成功体験を積み重ねることで、算数への前向きな気持ちも日々、育っていったという。

写真左 めくって段あつめ、写真右 スピード段あつめ
特別支援教室では日頃からボードゲームやカードゲームを活用しており、「順番を守る」「相談しながら目標に向かう」など、苦手の克服につながる活動として位置づけられている。
谷川教諭は「話すことが苦手でも九九が得意な児童に活躍の場を提供できる。さらに、九九があいまいな児童への支援のほか、グループでの協力型ゲームとしても利用できる可能性がある。通常級の2年生の終わりや3年生の初期段階、小集団指導(コミュニケーション)で取り入れるなど、学年をまたいだ展開なども考えられる。教材ではサイコロやネズミ、バターなど複数アイテムを扱うため、児童によっては負担になる場合もあるかもしれないので、その点は配慮しながら進めたい」と話した。

大日本図書に九九パンケーキ開発のきっかけを聞いた。
「『数学の楽しさを伝える math channel』との出会いをきっかけに、小学校での山場のひとつ『九九』を楽しく学べるゲーム教材を作りたいと考えた。九九が苦手な子も一緒に楽しめるゲームにしたかった。もともとは家庭向けを想定して企画したが、発売以来、学校の授業や特別支援学級に広がっており、『わり算の素地になる』『九九が身についていない児童に使いたい』という声が届いている。今後も算数が楽しくなるゲームを製作していきたい」
九九パンケーキの遊び方は4通りあり、うち3つは運と戦略で勝てる内容。1つは九九を覚えてきた上級者向けの遊び方だ。担当者は「ぜひオリジナルの遊び方を考案して数字に慣れ親しんでほしい」と話した。

教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年10月26日号掲載