2024年度に創立90周年を迎えた日出学園(千葉県市川市)。同校では幼稚園から高等学校まで15年間の一貫教育で一人ひとりに寄り添う教育を目指している。このうち日出学園中学校・高等学校では、自ら学ぶ力を中学校時代から身に付けさせることを目的に、2020年度から企業と連携した放課後学習を展開。2026年度からは新しく、コーチング型学習支援を提供する「まなびコーチング」とともに放課後学習をリニューアルした。1学期間の運用を終え、既にさまざまな手応えと可能性を感じているという。佐久間究教頭と、同校の放課後学習の構築に関わった(株)まなびコーチングの筒井康隆氏に、工夫と成果を聞いた。

まなびコーチングの筒井氏(左)と日出学園中学校・高等学校の佐久間教頭(右)
――日出学園中学校・高等学校の特色を教えてください
■佐久間 設立当初から家庭的な雰囲気を大切にした少人数教育を行っています。
英語教育には早期から力を入れており、今年度から英語検定(英検)を全員受験することとしました。オーストラリアの姉妹校とは2年に1度、国際交流を行っており、本年6月、オーストラリアから約30人が本校を訪れました。本校からは、高校生を中心として中学生も含めた約30人が8月にオーストラリアを訪問したところです。交流を通して英語の力を鍛えており、海外大学に進学する生徒もいます。
情報教育では、情報関連科目の授業を早期から最大8単位を設定。「情報Ⅱ」も2024年度から開講しており、専門性の高い情報科教員が次期学習指導要領の内容も見据えた高度な授業設計を展開し、学校文化を支えています。DXハイスクールの採択校として、設備の充実も図っています。

メディアルームは図書館に隣接。ロボットや3Dプリンター、レーザ―カッターとともに生徒作品も多数
■筒井 20年ほど前、船橋市で個別指導塾を運営していた頃、日出学園の生徒も通っており、家族や学校に温かく見守られながらのびのびと育っているという印象を受けました。
4月から放課後学習で生徒たちに関わらせていただき、進学校としての実績を積み重ねながらも当時の良さは今も変わらないと感じています。
――2026年度から放課後学習をリニューアルした背景を教えてください
■佐久間 以前から外部事業者と連携して放課後学習を運営してきました。一定の成果がある一方で、利用者をさらに増やし、より活気のある学習環境にしていきたいという思いがありました。
また、自習の場を提供するだけでなく、本校の生徒の状況や学校の方針に合わせながら、一緒になって運営を改善していける体制にしたいと考え、運営体制の見直しを検討しました。
――新体制では、どのような形で放課後自習室を運営していますか
■佐久間 校舎最上階である5階の高校3年生の全教室と、廊下に設置されている約60席の個別学習ブースを、放課後から20時まで解放しており、「HLC=日出学園ラーニングセンター」と名付けています。教室ではグループで学び合い、個別ブースでは1人で集中して学ぶことができます。
対象は全中高生です。2020年度の開始当初は中学生のみでしたが、学習態度の育成や参加率に課題を感じていました。現在は高校生が真剣に勉強している様子を見て、中学生もよい刺激を受けています。
生徒は二次元コード付きカードを端末にかざして入退室を記録し、その情報は保護者に通知されます。
■筒井 教室長と大学生コーチが3~6人程度在室し、自習の見守りや、質問対応を行っています。通常は30~50人程度、テスト前などは100人を超えることもあります。授業の課題が中心ですが、教科の先生と連携した学習プリントの提供や英検対策も行っています。
温かい雰囲気づくりを意識して、手書きの掲示物を作成しています。また、大学生コーチを身近に感じてもらえるように、その日のスタッフ紹介を掲示しています。
家庭学習につなげたいというご要望から、オンラインコーチングやリアルの個別指導を行うコースもオプションで提供しており、希望者が増えています。

温かい雰囲気を醸し出す手書き掲示物。机上の端末(写真は設置前)に二次元コードをかざして入退出を記録

放課後学習室は高3の教室と約60の個別ブースを利用
――新しく運営を担うにあたり、どのような点を重視しましたか
■筒井 2~3月の準備期間には、各教科の教員と密にコミュニケーションを取り、課題感の共有や認識をすり合わせて授業との連動を図りやすくしました。
多少のざわつきがあっても学びに向かう雰囲気がある教室には、温かみと規律があります。そこで学校のルールと整合性を持たせながら放課後学習のルールを作成し、ルールを逸脱した際にも否定することなく生徒に伝えることで、自然と良い学習環境が形成され、参加者が増えていくようにしようと考えました。
そのため適切なコーチングができるように大学生コーチの研修には力を入れており、弊社独自の検定に合格した学生のみを派遣しています。
稼働後は来室状況を分析し、月1回のミーティングで改善を図っています。学校が利用している他社サービスの提供者と連携を図るなど、学校の要望に応じて柔軟な対応を心がけています。
■佐久間 まさにその点が、まなびコーチングに魅力を感じた点です。
導入を検討する際には、私を含めた管理職で、まなびコーチングが運営する他校の放課後学習の現場を見学しました。実際に多くの生徒が利用している様子を見るとともに、その学校の先生方からも話を伺う中で、決められたサービスをそのまま提供するのではなく、学校側と日々コミュニケーションを取りながら、生徒や学校の状況に合わせて柔軟に運営していることが印象に残りました。
本校の課題について相談した際にも、既存の形を当てはめるのではなく、本校の生徒に合わせたコーチングや仕組みを一緒に考えていただけると感じました。こうした形であれば、本校が目指していた、より多くの生徒が自然と集まり、学びたくなるような放課後の環境をつくっていけるのではないかと考えました。
実際に運営が始まって改めて重要だと感じているのが、筒井さんのような専任の教室長が日々現場にいることです。
生徒の様子を継続的に見てもらえるだけでなく、気になることがあればすぐに情報を共有し、学校側の考えを日々の運営に反映してもらえます。
外部の事業者に放課後の運営を任せるというより、学校の中に一緒に放課後教育をつくるメンバーがいるような感覚です。この日常的な連携があるからこそ、本校の生徒に合った環境をつくっていけるのだと思います。
――今後の展開や計画を教えてください
■佐久間 学校だけでは着手できなかったことに取り組めるようになり、新しいアイデアが湧いています。
卒業生を対象にしたコーチング講習が実現すれば、卒業生による放課後学習の支援も可能です。さらに授業と連動した教材作成や学習管理システムの構築など、アイデアベースで相談したことの実現を後押ししていただけるため、大変心強く思っています。
■筒井 現在、2学期からは高校3年生を対象に一般入試向けの支援策を提供するため、担当教員を交えて準備を進めています。
さらには放課後学習の場を進路や悩み相談の場としても充実させることで、学校のトータルサービスに発展できると考えています。
今後も、日常的な情報共有に加えて定期的な研修を継続し、充実を図っていきます。

2020年1月創業。創業以来、一都三県の私立中学校・高等学校に対して、放課後学習の支援サービスを提供。安定した運営品質と柔軟な対応の両立を重視し、各校の教育方針や生徒の実情、現場のニーズに合わせて運営内容をカスタマイズできる点が強み。2027年度からは関西エリアにも事業を拡大予定。教職員向け学習コーチング研修も提供。
国際教育、英語教育、ICT教育、情報教育に注力。2008年に完成した新校舎は全教室が南向き。校舎中央には大空間のアトリウムを設置。