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図書館

学校図書館  探究し、個を尊重する場へ SDGsや社会課題に取組み学ぶ「デジタル社会で変化する学校図書館の役割」~ICT CONNECT21会長 東京工業大学名誉教授 赤堀侃司氏

2022年10月17日

8月に開催されたNPO法人学校図書館実践活動研究会による「子どもの学び市民フォーラムin東京」では、「デジタル社会における学校図書館」をテーマに赤堀侃司氏が講演。なぜ今1人1台端末なのか、そして学校図書館の役割の変化について語った講演の要旨を紹介する。

 

11台端末が学校に導入された背景として、学校と社会の関わりについて考えてみたいと思います。

まず学校はなかなか社会と繋がっていかない、という前提があります。2017年度全国学力・学習状況調査の小学6年では、小数の掛け算の正答率は977%でしたが、あるB問題の正答率は277%と低いものでした。また2007年高校生全国学力テストの設問「タコ足はなぜ危険なのか」では、「直列だから」「並列だから」など4つの選択肢があり、正解率は35%でした。

正答率が低い理由は問題が複雑だからではなく、学校で習っていないことは解けないからです。しかしそれでは社会的には通用しません。学校と社会は、基本的にシステムが異なります。

学校は正解ばかりを求めます。先生は正解を知っています。そして個人で取り組み、個人の成績がつきます。

一方、世の中には正解がありませんし、正解を知っている先生も、教科書もありません。そして組織で仕事をし、共同で取り組み、個人ではなく全体で評価されます。だからこそ学校で学んだことを、社会につなげていくことが必要です。

今、生きて働く知識が求められるようになりました。GIGAスクール構想は社会のモデルを学校に導入するという考え方です。

ICTは問題解決の道具として学校に入ってきました。書類の山はなくなり、コロナ禍で全校集会ができなくなった際は教室と校長室をつなぎ、校長の話を子供たちに届けることができました。

またICTは児童生徒の表現手段でもあります。プログラミング教育によって、表現できたことを誰かに話したくて仕方がないといった子供たちがたくさんいます。ICTが刺激となって、児童生徒が主体的に取り組むようになります。

授業も変わります。ある高等学校の家庭科では、ボタンホールの作り方の動画を教員が作成しました。生徒はその5分程の動画を視聴し、予習してから授業で実習する。教員の役割は、ティーチャーからコーチやアドバイザーへ。ICTにより子供観、学習観、指導観が大きく変わります。

知識から探究の場に変化

探究は疑問を持つこと、調べること、そして対話することで深まっていく

探究は疑問を持つこと、調べること、そして対話することで深まっていく

そうした中で、学校図書館の役割も「知識から探究の図書館」へと変わってきました。教育課程が知識中心から課題探究へと移って、これからは知識よりも探究する資質・能力が重視されます。

ある学校では給食の時間に子供たちと校長が話をしました。給食は値段が高いと言う子供に、弁当の値段と比較するとどうなるかという算数になりました。その後、校長は給食の歴史について調べました。子供たちは「犬食いって何?」という疑問から、マナーについて調べていく。給食の時間は探究の時間になっていったということです。

疑問を持ったことを調べ対話し、また疑問を持つことで学びが深まります。課題探究によって、認知的・非認知的・社会的なスキルが習得されます。学校図書館は探究活動を支援し、図書館司書の方には探究の仕方のコーチになって頂きたい。

また学校図書館には情報活用能力を育てる役割もあります。目的の図書資料を探すことも、教科で判断力を育てることも、オンラインで課題探究することもすべて「情報活用能力」です。何が真実で何かフェイクか、判断できる能力が必要です。探究では失敗もありますが、子供たちが世の中に出るまでに自立させて欲しいのです。

そして、世の中には戦争などの世界の課題やSDGsといった、様々な課題があります。それらの課題に取り組み、協働して学ぶ場として、学校図書館が機能して欲しい。知識は忘れることもあるが、探究したことは忘れない。そうした探究の場であって欲しいのです。

そしてとても重要なことですが、情報モラルを育てるために、学校図書館は自由と規律を守り、個を尊重する場であって欲しいと思います。「自分が安心してここに居られる」ということは、「自分が心地良い」ということであり、いじめや不登校とは対極にあります。学校図書館が個を大切にする場であれば、もっと子供たちは豊かになるのではないでしょうか。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年10月17日号掲載

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