分科会「情報リテラシーを育てる松江市『学び方指導体系表』の活用」では、元松江市学校図書館支援センター教育指導講師の林良子氏と、帝京大学教育学部の鎌田和宏教授が発表した。
島根県松江市では2012年から市独自の「学び方指導体系表」を活用している。2024年度には小学校部分を改訂した「学び方指導体系表 ~松江市の子どもたちの情報リテラシーを育てる 第6版(案)」(以下、体系表)が示された。
https://www.city.matsue.lg.jp/material/files/group/111/r6_taikeihyo.pdf
松江市の「体系表」の特徴は、①採択教科書に記載されている指導事項をピックアップし、小中9年間を一覧できる ②学校図書館支援センター(松江市教育委員会学校教育課)が作成。多くの関係者が関わっている ③教科書が改訂される度に体系表も改訂 ④授業実践に結ぶために単元関連表、学年系統関連表を作成。
特に体系表に記載されている指導事項等が、松江市で使用する教科書に即していることは大きい。この体系表をもとに、さらに各校でそれぞれの学校図書館教育の年間指導計画を作成しており、単元名だけでなく、情報リテラシーに関する指導事項も盛り込むようにしている。
この体系表と年間計画によって、授業者、司書教諭、学校司書が共通理解を図ることができ、司書教諭からは「松江市版なので説得力がある」「(まだ指導経験が浅くても)他の先生に”体系表のこの部分に取り組んで下さい”と伝えられる」、学校司書からは、教員と共通の体系表を見ていることから「この探究の過程のスキルは、あるクラスはできているが、別のクラスは不十分、といった子供たちの実態を教員に伝えられるようになった」「学習の支援を協働して行っている実感がわいた」、担任や教科担任からは「指導したことを、別の教科でも『あれやったよね』と声掛けをし、繰り返し指導するチャンスを作るようになった」といった声があるという。林氏は「体系表は見える図書館の力」と語る。
鎌田教授は「体系表でいろいろな教科の中に埋め込まれた、情報を扱うためのスキルを可視化する。可視化することで、教育課程を具体的に編成できる。体系表はその基盤になっている」と話す。松江市の体系表は、地域に限定し、同じ教科書をベースとして取り組むための‘活きた’体系表になっている、としている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年9月23日号掲載