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【学校給食セミナー報告】特性知って使い分ける 冷凍食品で社会の変化に柔軟に対応する

2022年9月19日

コロナ禍による臨時休校や自然災害の影響等、学校給食には近年の非常事態への対応が求められる場面が増えているなか、「冷凍食品の活用で、変化に柔軟に対応できる学校給食を」をテーマにした学校給食セミナー(一社・日本冷凍食品協会主催、教育家庭新聞社共催)が8月18日、群馬会館(群馬県前橋市)で会場参加者(23人)とオンライン(80人)によるハイブリッド形式で開催された。栄養教諭、学校栄養職員、教育委員会担当者等が参加した。食育指導と冷凍食品活用の意義、現場での活用事例紹介、メリット等について基調講演、実践発表、意見交換会等を通じて語られた。また会場では冷凍食品メーカー等9社から学校給食向けの製品の説明もあり、活発な情報交換の場となった。後援=群馬県教育委員会、前橋市教育委員会、(公社)全国学校栄養士協議会、(公財)群馬県学校給食会

【基調講演】
献立の幅広げ楽しい給食演出
公益社団法人全国学校栄養士協議会 会長 長島美保子氏

基調講演は「学校給食の課題と冷凍食品を活用した対応について」を演題として全国学校栄養士協議会会長・長島美保子氏が登壇した。講演の要旨は次の通り。

学校給食の目標は学校給食法(2008年改正)の第1条に「学校における食育の推進」が規定、第2条では「適切な栄養の摂取による健康の保持増進」や「食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い」など7点が明記されている。給食の時間は各教科や学校行事、特別活動など学校の教育活動全体で取り組むこととされている。

4次食育推進基本計画では特に地場産物の活用について、栄養教諭による地場産物の食の指導を現在月平均91回から12回以上にするなど食育推進の目標値が示されている。学校給食が「生きた教材」とされるのは「見る、食べる体験」を通して「興味・関心」を持たせることができるから。それには「児童生徒が美味しく、安心して食べることができる献立」、「教育的な配慮のされた献立」であること。栄養教諭が行う食に関する指導には、給食時間に給食を教材にした直接指導、または資料提供して担任からの指導がある。また教科等の内容と連携し、学級・教科担任とのTTでの指導がある。

学校給食の時間は、子供たちにとって学校生活の中で最も楽しみな時間である。冷凍食品を正しく理解し、活用することで献立の幅を広げ、豊かで楽しい給食を目指すことも必要。冷凍食品も時代や社会のニーズに応じて多様化。2005年の栄養教諭制度スタート、食育基本法公布のころから地場産物、地産地消を取入れた冷凍食品が多くなり、近年はアレルギー対応の製品へのニーズが高い。

冷凍食品を活用する課題と対応

感染症対策を行い開催

日本冷凍食品協会の調査では、半数近くの市・町教育委員会が「物資調達基準」等で、「国産品を使う」「合成着色料・保存料は使用しない」「遺伝子組み換え食品が使われていないもの」など制約・条件を設けている。商品開発に取入れ課題を乗り越えてほしい。

コロナ禍による長期間の学校休業で給食がなく、子供たちの家庭での食生活には栄養の偏りが心配された。保護者にも外出制限などで負担感が増大した。冷凍食品を活用することで時短と家事の効率化が図れることを、啓発する必要がある。

災害時への備えとして冷凍庫に普段から「食べなれた」冷凍食品を常備することも大切。自然解凍で食べられる果物・デザート等がある他、カット野菜等でスープ等が簡単に作れる。

給食の現場で、冷凍食品の活用で豊かな献立作りや安定した調達が得られ、調理時間の短縮などメリットがたくさんある。その半面、衛生的でしっかりした品質管理が行われている等の特性を、他の教職員や保護者に正しく伝えられることが欠かせない。さらにメーカーとの情報交換によって給食現場の声を伝えるなど、栄養教諭・学校栄養職員のコミュニケーション力を磨くことが課題となる。

 

【実践発表】
料理や作業工程考えて活用を
群馬県川場村学校給食センター 栄養教諭 本間ナヲミ氏

群馬県川場村学校給食センター栄養教諭の本間ナヲミ氏は「冷凍食品の活用について」をテーマに、現場における活用の実態を報告した。発表の要旨は次の通り。

献立には、給食を通して子供たちに何を伝えたいのかを考え作成。栄養管理、衛生・安全、地場産物・郷土料理を取入れるなど学校給食に求められていることも配慮しなければならない。調理場の実態は食数・調理員数、施設設備、調理可能時間等、場所によるかなりの違いがある。

冷凍食品を使うメリットは下処理が省力化され調理時間が節約できるので、他の献立に手がかけられる点が最も大きい。また野菜等は旬の素材を使うので栄養価が高い。コロナ禍で急な食数の変更があっても長期保存で調整が可能、そして生野菜類は価格変動が大きいのに対し価格が安定していること。

強化したい栄養素 工夫し献立に反映

食育の観点から群馬の郷土料理「おっきりこみ」を献立に加えている。調理してから喫食まで1時間あり、生麺では汁を吸いすぎのびてしまうため冷凍麺を使う。また副菜に使う厚揚げや豆腐は、学校給食の大量調理で煮込んで使う献立の場合は崩れやすいので、冷凍食品を使うことで煮崩れが少なくできる。

冷凍の野菜、液卵、豆のペースト等の素材品は、特に子供たちに不足しがちな栄養素をとらせたい献立に反映できる。多くの子供が敬遠する豆類だが、冷凍豆ペーストをカレーに加えて使用することでとろみが増すのでルーを減らすことができ、塩分も控えられて、学級担任にもこの情報を伝えた。また中学生には鉄分をとらせたいので、麻婆豆腐に冷凍の豚レバーチップを豚の挽肉に混ぜて使用した。

冷凍の竜田揚げ、唐揚げ等の加工品も献立内容に応じて使っている。ちらし寿司がメインの献立では、調理員と相談して、ちらし寿司に手間をかける時間を、副菜には加工品を活用することで調整した。またデザート類は楽しい給食の演出に重要で、子供たちの思い出に残るものだ。

冷凍食品にも生鮮食品にもそれぞれメリット、デメリットがある。食育の観点から、給食を通じて子供たちに何を伝えたいのか、それにはどのような給食を作りたいかを考えること。献立内容や時期、作業工程や施設設備を考慮し、必要に応じて冷凍食品を活用していければ良いと思う。

【意見交換】
長島 栄養教諭間の情報共有は有効
本間 大量調理では分量の工夫を
三浦 厳格な品質管理で安心活用を

基調講演、実践発表、メーカー等の情報提供と試食会を踏まえ、長島氏と本間氏にコーディネーターとして日本冷凍食品協会広報部長・三浦佳子氏が加わり、意見交換と質疑応答が行われた。

Q:冷凍野菜を使うが葉物は見栄えなど不安。上手な使い方ポイントを教えてほしい。

会場での質疑応答 (壇上右から三浦氏、長島氏、本間氏)

本間 本センターは食数が少ないので、葉物は和え物等には生の野菜を使用。卵焼きや炒め物に冷凍野菜を使っている。またスチームコンベクションオーブンを加熱に使うと食感も良く仕上がるようだ。

三浦 冷凍野菜は7~8割ブランチングしているため、さらに加熱しすぎて見栄えや食感を悪くしてしまうことがある。食数や設備に応じて加減が必要だが、経験していただくことが大事。

長島 現場は冷凍食品の基礎的な知識や扱い方を学ぶ機会がなく活用している。メーカーの助言があるとありがたい。

Q:レバーチップを上手に取り入れているが、使用方法の工夫は。

本間 苦手な人には少量でも分かるようで、料理によって分量を工夫する必要がある。麻婆豆腐はしっかりした味なので1割位入れている。

Q:レシピの共有等食育や給食運営に関する情報共有の事例があるか。

長島 栄養教諭として子供たちの食の指導に時間を充てたい、そのため給食管理だけに時間をかけることは現実として難しい。手抜きでなく効率化しながら給食を運営するため情報の共有は有効だ。松江では市内の栄養教諭10人が1か月ずつ担当し献立や「便り」を作成し全員にメールで発信。各自が実態にあわせアレンジして使った。

本間 当地区では月1回交流の場を設け、食育や食材の情報交換しているほか、自信のある献立を集めるなど、少しずつ良いものは皆で共有するような方向にある。

Q:冷凍食品の使用について、保護者に良い説明の方法を知りたい。

本間 「便り」では子供が簡単に作れる朝ごはんを紹介しているが、その中で冷凍野菜も使っている。あまり抵抗なく受け止められている。

長島 一部にまだ冷凍食品への偏見があるかもしれないが、効率よく活用することへの理解は得られる親世代になってきた。給食試食会などで、この料理に手間をかけるためこちらは効率を考えて冷凍食品を使ったなど、丁寧に説明し理解を求めることも大切。

三浦 冷凍食品の使用は「手抜き」ではなく「手間抜き」。できた時間は食育指導や献立作成に充ててほしい。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年9月19日号掲載

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