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教育ICT

デジタル・シチズンシップと著作権教育 <2>「現行の35条でできること」

2019年10月14日
連載:35条改正&学校教育

遠隔授業「例外規定」対象 現行は‘生中継’

社団法人コンピュータ 一般ソフトウェア著作権協会(ACCS) 専務理事・事務局長 久保田 裕

一般社団法人コンピュータ
ソフトウェア著作権協会(ACCS)
専務理事・事務局長
久保田 裕

現在、著作物の教育利用に関するフォーラムにおいて、利用のルールを定めた改正35条の施行に向けて補償金制度のあり方などの検討が行われている。

このフォーラムには私も参加しており、教育関係の方々の話を伺うのだが、現場の先生方が現行の著作権法35条でできる範囲を正確に理解されているのだろうかと、若干不安を覚えている。正しい理解がないと先生方が萎縮してしまい、他人の著作物を利用しない方向に傾きがちだからだ。これでは教育の観点からもマイナスだろう。

学校の授業では、副教材として他人の著作物を利用する機会が多く、児童・生徒も、調べ学習として他人の著作物を利用することは多々ある。

著作権法の基本原則は、他人が創作した著作物を利用したいときには著作者である創作した人や会社の許諾を得て使うということで、これは学校においても同様である。許諾を得るとは、どの著作物をどのように利用するのか、利用の方法を提示して著作者と契約をすることである。著作者によって、無料の場合もあれば有料の場合もある。

ただし、著作権法には、許諾を得ずに自由に利用できる例外ルールがある。現在進められている議論の基礎となる「著作権法35条」について、改めて基本的なことを確認しておきたい。

まず、35条1項の規定によって、先生が授業の副教材として新聞のコピーをとったり、生徒が調べ学習でインターネットのサイトを印刷するなど、授業にともなう複製については、著作者に許諾を得ずに行える。ただ、この例外ルールを活用するには条件がある。

①営利を目的としない教育機関であること。学校の場合、公立でも私立でも「営利を目的としない教育機関」に当たる。塾や予備校、企業の研修施設は当たらない。②教育を担当する教員や授業を受ける者が複製すること。③授業のための使用が目的であること。学校であっても課外クラブで楽譜をコピーする場合は「授業の過程」ではないため例外ルールは使えない。④必要と求められる限度内であること。⑤既に公表された著作物であること。⑥著作物の種類や用途から判断して、著作権者の利益を不当に害しないこと。学校でしか利用されないワークブックや教育コンテンツは、この例外ルールが使えない。複製した著作物は、その目的の範囲内で配布できることが47条の7に定められている。

例外ルールの第2は、35条2項で、離れた学校の教室間を同時中継して遠隔授業を行う場合に、他人の著作物をお互いの会場向けに送信できるものである。

条件は次のとおり。①営利を目的としない教育機関であること。②公表された著作物であること。③直接授業を行う主会場と、遠隔授業を行う副会場が存在する授業形態であること。英会話学校と教室を結んだ授業のように、主会場に講師だけがいて、直接授業が行われない場合は条件を満たさない。④授業が生中継で行われること。オンデマンド授業は条件を満たさない。⑤授業を受ける者のみに送信であること。⑥主会場において、授業の教材として提供・提示または上演、演奏、上映、口述(読み聞かせ)されている著作物であること。⑦著作物の種類・用途、公衆送信の数・態様に照らして著作権者の利益を不当に害しないこと。

35条1項を活用して行える範囲はとても広い。上手に活用してほしい。

35条2項は認められる範囲が限定的で、活用場面はこれまでは少なかったかもしれないが、文部科学省の方針では「希望するすべての学校が遠隔授業を行える環境とする」としている。ぜひチャレンジしてほしい。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年10月14日号掲載

デジタル・シチズンシップと著作権教育



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