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教育ICT

デジタル・シチズンシップと著作権教育 <3>「改正35条で変わる教育現場」

2019年11月4日
連載:35条改正&学校教育

授業のための公衆送信、すべて可能に

社団法人コンピュータ 一般ソフトウェア著作権協会(ACCS) 専務理事・事務局長 久保田 裕

一般社団法人コンピュータ
ソフトウェア著作権協会(ACCS)
専務理事・事務局長
久保田 裕

現在の著作権法35条では、授業のために他人の著作物を複製することと、遠隔地の教室との合同授業で他人の著作物を含む資料や授業の映像を同時中継で送信することが、授業を担当する教員または学習を受ける者であれば、著作者の許諾を得ずに行うことができることになっている。

では、改正された35条(未施行)では、新しく何ができるようになるのか。

改正35条1項では、学校の授業で使うために、授業を担任する教員や学生・生徒が公表された著作物を無許諾で複製・公衆送信・公への伝達をすることができると定めている。

ここでいう「公への伝達」とは何か。

著作権者には「公への伝達権」(23条2項)があり、公衆送信される著作物を受信装置を用いて公に伝達する場合、つまり、例えば放送されているテレビ番組をテレビで受信して、不特定の者や特定多数の者に見せる場合には本来は著作権者の許諾が必要なのだ。それが許諾不要となるのである。

改正35条1項により、放送されているテレビ・ラジオ放送をテレビ・ラジオで生徒に見せる・聴かせることや、インターネットで公開されている動画をPCで受信してスクリーンやディスプレイ等を用いて生徒に見せることが著作権者の許諾を得ずに自由にできるようになる。

ただし、公への伝達については、営利目的でなく、かつ聴衆・観衆から料金を受けない場合には、著作権の許諾なく行えるという例外ルール(38条3項)が既にある。授業中に同じことは既に自由に行えるため、新たにできるようになったものではない。

重要なのは「公衆送信」だ。授業のための公衆送信が全て可能になるため、他人の著作物を含む授業資料や映像の活用が許諾を得ることなく柔軟に行えるようになるのだ。

例えば、教員が授業の予習・復習のために、他人の著作物を含む資料を生徒のタブレット端末やスマートフォンなどに送信することが可能となる。オンラインストレージにアップロードして生徒にダウンロードさせる場合も含まれる。

また、例えば英会話学校内の外国語の先生のいるスタジオと教室を結んで英会話レッスンを行う際に、他人の著作物を含む資料や映像、音楽などを同時中継で送信するような、合同授業でない形態の同時中継も可能となる。さらに、事前に収録した映像等によるオンデマンド授業で、他人の著作物を含む資料や授業の映像を送信する場合などが当てはまる。

本改正により、ICTを活用した授業内容の充実や予習復習の効率化などが期待されるが、気をつけなければならないのが、「教育目的ならば、インターネットの活用が自由にできるようになった」のではなく、これまでの35条1項と同様の条件がついている点だ。

具体的には、①営利を目的としない教育機関であること、②教育を担当している教員等やその授業を受ける者が公衆送信(送信可能化を含む)すること。③公表された著作物であること④授業の過程における利用を目的とすること⑤必要と認められる限度内であること⑥著作物の種類・用途、公衆送信の態様に照らして著作権者の利益を不当に害しないことの各条件を満たすことが必要だ。また、教材の作成時(複製)と送信時(公衆送信)の両方について、改正35条1項を満たすのかの検討をする必要がある。なお、改正法によって可能になった公衆送信を行う場合、教育機関の設置者は、相当な額の補償金を著作権者に支払う必要がある。補償金の金額をはじめ補償金制度の仕組について現在検討が進められているところだ。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年11月4日号掲載

デジタル・シチズンシップと著作権教育

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