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教育ICT

資質能力を育む学校環境 PC室からアクティブラーニング室へ~放送大学 中川一史教授

2021年12月7日

放送大学 中川一史教授

全国の小中学校に1人1台の情報端末が配備された今、これからのPC室や普通教室はどうあるべきか。中川一史教授(放送大学)は、「PC室の役割を見直し、新たな学習環境を実現することで、児童生徒と共に教員も『新たな学び』に向かうマインドセットに貢献できる可能性がある」と語る。

PCはかつて、PC室に行って活用するものでした。それが、2018年頃から普通教室でも活用できる可動式の情報端末の導入が始まり、「普通教室でできることは普通教室で行う」流れが始まりました。

「固定されたPC40台に向かうことでできる学びは限られる」ことに皆が気付き始めた頃、GIGAスクール構想の前倒しにより急激に11台端末が導入され、学びの可能性はさらに広がっています。

では今後、PC室はどうなるのか。

PC室はもともと、新たな学びを体験する場所でした。その役割を発展し、普通教室ですぐに取り入れられない環境を、ここで実現し、体験する場としてはどうか。11台端末を家庭にも持ち帰って活用できることで、学びをアップデートしやすくなりましたが、それに合った能動的な教室空間があっても良いのではないか。例えば、可動式の椅子、曲線や多角形の机で実現する自由なレイアウトや色彩豊かな明るく心地よい空間、複数の大型提示装置等の設置による協働的な空間は、今求められている力の育成に寄与するのではないか。今こそ、新たな環境が新たな学びにどう活かされるのかを体験できるようなPC室のフルモデルチェンジに取り組むチャンスなのではないかと考えています。

PC室以上に高い稼働率
アクティブラーニング室

個別最適な学びと協働的な学びを一体的に進めることは、これまでの普通教室でも可能です。しかし、新たな学びの創出には、教員のマインドセットが必須です。そこで既存の教室空間からの脱却は、マインドセットに役立つ可能性があると考え、アクティブラーニング情報サイト「GAIA LABO」に協力し、PC室や普通教室をアクティブラーニング化した学校の教員と児童生徒約1200人にアンケートを行いました。

注目したいのは、アクティブラーニング室を「毎週活用している」教員が5割以上いたことです。学校規模にもよりますが「ほぼ毎日」使っている教員もおり、これまでのPC室以上に、稼働率が高いのです。

さらに65%以上の教員は、その教室の用途を「協働学習」としており、ほぼすべての教員が「グループワークがしやすい」「子供たちの発表機会が増えた」と回答しています。「普通教室よりこちらの教室を使いたい」という回答も9割を超え、「普段おとなしい子供の発言機会が増えた」「子供たち同士の関係が良くなった」と感じている教員は8割を超えているのです。

この結果には大変驚きました。

これは、アクティブラーニング室が協働学習を展開しやすい空間であり、教員が教室を移動する手間があったとしても「使いたい」と思う場であるということです。

ここに行きさえすればすべての課題が解決するわけではありません。授業改善の工夫は前提です。しかし、その努力が実りやすい、効果が上がりやすいという実感があるからこその数字ではないでしょうか。

体験による実感なんとなくやりやすい、楽しい、という感覚を積み重ねることで学習活動が変わればマインドセットにもつながります。深い学びにつなげる、その実現を、新しい学びの空間が後押しする可能性を感じています。

これまでの教室から
新たな学校環境へ

フィンランドの小学校はどの教室にも後方に自由なスペースがあります。ソファがあり、カーペット敷で直接座り込んだり寝転んだりすることができ、子供たちはそこで各々のペースで学習しています。そういった場の良さを理解して取り入れるためには、体験が必要です。アクティブラーニング室は、その第一歩となります。

各校のPC室や普通教室のフルモデルチェンジの前段階として、教育センター等にアクティブラーニング室を設置して教員が協働的な学びを体験することも可能です。

これまでの教室とは異なる空間では、予想していた以上に容易に、全員が前を向き椅子に座った学びから脱却できるはずです。さらに、この体験は、特別教室や保健室の一部、自習室や講義室、フロアの一部、さらには全普通教室の再構築にもつながっていきます。学びやすさ、集いやすさ、集中しやすさ、話し合いやすさ、安心感等を提供する空間とそこでの学びをイメージしやすくなるからです。

能動的な学びの導線
促す空間に進化する

能動的な学びの場を体験できるスペースに

この新しい学習空間に、3Dプリンターや高性能PC、高解像度ディスプレイ、ロボット等STEAM教材などを導入することで、クリエイティビティをさらに刺激する空間に発展することも可能です。

20数年前、ある公立学校のデザイン案を求められ、様々な提案をしましたが「子供たちがどこにいるかわからなくなる」「教室が騒がしくなる」「集中しにくい」等の意見により当時、採用された案はわずかでした。協働的な学びやクリエイティビティの育成が明確に求められている今であれば、もっと多くの案が実現したかもしれません。

「GAIA LABO」には、PC室や普通教室を「話しやすい空間づくり」、「学校で一番新しく進化したスペース」、「ものづくりをテーマにした空間」とした各校の導入事例や、新たな学びを創造する提案が掲載されており、様々な事例をビジュアルで見てイメージすることができます。

提供社のガイアエデュケーションは、教育ICTに特化したオリジナルファニチャーメーカーとしてアクティブラーニング+教育ICTの先進的な空間づくりに取り組んでいます。その感覚を活かし、新しい学びの導線をリードする、これまでの常識から逸したダイナミックな学びの空間づくりに貢献し、積極的に効果測定を発信していただきたいと考えています。現場の既成概念を覆すような「学びが育つ」教室空間を期待しています。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年12月6日号掲載

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