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図書館

情報を読み取り考えを深める~杉並区立桃井第三小学校

2021年4月19日
春の学校図書館特集

探究する子供を支える

東京都杉並区立桃井第三小学校(末永弘校長)は、GIGAスクール以前から1人1台タブレット端末を導入したICT推進校。調べ学習でタブレット端末を利用する中で、読む・捉える・理解するといった力がより求められることが分かってきたという。情報はさまざまなメディアから溢れている。そこから必要な情報を見つけ出して読み解き、自分の考えを深める情報スキルの育成に、学校図書館が大きな役割を果たしている。

タブレット端末の日常的な使い手

学校図書館で図書資料とタブレット端末を 利用するのが日常の風景だ

学校図書館で図書資料とタブレット端末を利用するのが日常の風景だ

桃井第三小学校は、2011年度からICTを活用した校内研究をスタート。2014・2015年度には杉並区教育委員会の教育課題研究指定校となり、タブレット端末250台を導入した。以来、5、6年生が1人1台端末を活用。さらに2020年度は4年生も1人1台端末となり、1~3年生は40台を授業に応じて活用している。同校でICT機器の導入と情報教育を担当している大山努主任教諭は「タブレット端末は特別なものではなく、子供たちは日常的な使い手になっている」と話す。

「リテラシー、つまり文章を読む、物事を理解する、捉えるといったことをしっかり教えるという学校の役割がある。一方で時代背景としてICT機器が発達し、情報が溢れる中、デジタルメディアと紙の資料の両方が活用できて、探究し、自分で考えることができる情報活用能力を伸ばさなければならない。そうした文脈が学校図書館と共有できており、必然的に一緒に取り組んでいる」という。

大山主任教諭(左)と土屋学校司書

大山主任教諭(左)と土屋学校司書

2018年に赴任した土屋文代学校司書は、それまでも区内の小学校に勤務し、同校で2校目。各学年の教員と話す中で「タブレット端末を利用した調べ学習は、時間をかけても上手に調べられない子がいる」との声が聞かれ、「情報を読み取ることに課題がある」ことが分かってきた。「読書はすべての土台。その上にさまざまなメディアから読み取る力を、情報全般を扱う学校図書館で育てる必要性を感じた」と話す。

なお杉並区は学校図書館活用に力を入れる。杉並区立済美教育センターには学校図書館支援担当部署を設置。学校司書は区立小学校38校、中学校21校、小中一貫校2校すべてに配置し、養護学校1校には2名の司書教諭を配置している。

利用指導に重点
検索は経験を重ねて

情報を選んで判断する力や読み取る力を身につけるために、力を入れているのは、資料を扱うための「利用指導」情報スキルの積み上げだ。

基本的な国語辞典や漢和辞典の使い方は各担任が教科の授業で指導している。学校図書館では担任と土屋学校司書が、参考図書や百科事典、年鑑などの見方などを教え、分類や本の奥付、著作権などについて指導する。

知りたい情報はテーマごとに分かれて資料に掲載されている。調べるテーマにつながるキーワードを自分の頭できちんとつかまえることで、細分化された情報を見つけられることを、さまざまな参考図書を使って子供たちは身につけていく。この力はインターネットで調べる際にも重要だ。

「前提として、文章をきちんと読み取る、読むことを楽しみ、意欲的に読めるようにする。特に低学年は読み聞かせ等によって言葉の力をつけることを大切にしている」(土屋学校司書)。

インターネットの活用については、今年1月に大山主任教諭が各学級の図書の時間を使って「インターネットの調べ学習のコツ」の授業を行った。4年生の音楽「日本の民謡」と、5年生の総合的な学習の時間「オリンピック・パラリンピック」の単元に関連付けた内容とした。

Googleなど検索サイトの活用方法について、子供たちは“なんとなく”検索結果を上から順に見ており、読むことにも時間がかかる。そこで、なぜキーワードをスペースで区切って入力するのか、検索結果の一覧には自分の入力したキーワードが太字で出ること、WebサイトのURLがどこに掲載されているかを学ぶ。

オリンピックで獲得したメダルの数について検索すると、個人がまとめたWebサイトも出てくる。丁寧で誠実な内容ではあったが、調べ学習で引用するにはふさわしくない。JOCの公式サイトに正式な情報が掲載されている。

「“公式”とされるものや公的機関など、信頼できる情報源について助言するのが先生の役割、と子供たちに伝えている。学校教育における調べ学習に適したWebサイトを使用しているかどうか、今後、1人ひとりのタブレット端末を教員が確認していくことは不可能であり、子供が判断していくことになる。検索を制限するのではなく、失敗してもそこから学び、確かなものに当たることのできる、思考力やスキルを育てたい。そのためには多くの経験を積むことが必須」と大山主任教諭は話す。1時間の授業を経て、子供たちの調べ学習は大きく前進したという。

情報教育と読書指導の朝の15分間モジュール

計画的に情報活用能力を育むため、同校では次の3つの指導計画を作成している。

①情報教育年間指導計画…タブレット端末や電子黒板で身につけたい操作を、どの単元で、いつごろ実践すればよいのかが分かる、学年ごとの一覧表。区内の他の推進校の一覧表を参考に、自校に合わせて大山主任教諭が作成した。

②学校図書館活用計画…読書指導、情報スキル指導をどの教科でいつ行うかまとめたもの。「総合」「情報」の項目も加わる。

③情報モラル・情報リテラシー教育指導計画…毎朝8時30分~45分の「モジュール」時間の金曜日の枠内で取り組む。例年この時間は「朝読書」だったが、突然の休校で1人1台端末を家庭に持ち帰る事態に備えるため、大山主任教諭が急遽作成。2020年10月~2021年3月の金曜日15回で各学年が取り組む内容を示した。スズキ教育ソフト「あんしん・あんぜん情報モラルオンライン」、NHK for school「スマホ・リアル・ストーリー」「しまった!情報活用スキルアップ」などの動画、SNS東京ノートを利用。(=表)

2021年度の金曜日の朝のモジュールは、読書と情報モラル・情報教育を組み合わせた、情報活用能力全般を身につける時間になる。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年4月19日号掲載

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