子供の読書活動について関心と理解を深め、子供が積極的に読書活動を行う意欲を高めることを目的に2025年度「子どもの読書活動推進フォーラム」(主催:文部科学省、国立青少年教育振興機構)が「子ども読書の日」となる4月23日、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。
「子ども読書の日」の4月23日に開催
文科省は2002年度から、子供の読書活動を推進するため優れた実践を行っている学校、図書館、団体(個人)を表彰しており、2024年度からは幼稚園、認可保育所、認定こども園(全類型)も表彰対象に加えている。この日、2025年度の被表彰者である、幼稚園15園、認可保育所6園、認定こども園(全類型)14園、小学校57校、中学校37校、高等学校29校、特別支援学校6校、義務教育学校5校、中等教育学校等2校、図書館43館、団体46団体、個人2人の合計262件が表彰された。
被表彰者の詳細=https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01485.html
野口教授の特別講演
専修大学文学部教授、放送大学客員教授で(公社)全国学校図書館協議会理事長の野口武悟氏による特別講演のテーマは「読書から『誰一人取り残さない』ために~読書バリアフリーの理論と実践~」。
現在、視覚障害者などが読める方式の書籍の割合は先進国で7%程度、開発途上国では1%未満。日本では2019年6月に読書バリアフリー法が制定。2025年3月には国の第2期基本計画も策定された。読書バリアフリー法では視覚障害に限らず発達障害や肢体不自由などにより、読むことが困難な人が含まれている。
なお読書バリアフリーにおいては担当者依存が課題となっており、担当者が移動すると取組がトーンダウンする傾向にある。「計画的・継続的に取り組むことが大事。そのため学校経営計画や図書館経営計画に読書バリアフリーを位置づけて取り組んでほしい」と話す。整備・推進のポイントは「単独で進めるのではなく、学校・園、地域の図書館、書店などが連携すること」。「読書から取り残されそうになっている人は障害のある人とは限らない。さまざまな要因で読書が困難な人がいるので、幅広い視点を持って、できることから1つずつ取組を進めてほしい」と呼びかけた。
「子供の読書活動優秀実践校・園・図書館・団体(個人)」の受賞者から16件がブース出展し、各取組が紹介された。
山形県立上山明新館高等学校は図書館が教室から離れた場所にあることから、生徒の来館を促すためさまざまなアイデアを企画。2024年度は鶴岡市立加茂水族館の学習・体験プログラム「クラゲ飼育水槽貸出」に申し込み、クラゲの展示が行われた。図書委員がクラゲの本の特集コーナーを用意したほか、「クラゲと一緒にランチタイム‼」などの企画を実施。2024年度の1人あたりの年間貸出冊数は開校以来最高を記録した。
山形県立上山明新館高等学校
長浜市立長浜北幼稚園(滋賀県)は2022年の夏休みを利用して従来の「絵本の部屋」の大改造を実施。仕切りの壁を取り除き、絵本の部屋と廊下がつながる開放的な空間にして「いごこちのよい絵本の部屋」づくりに取り組み、楽しむ園児たちの様子をクラスだよりで保護者に発信した。
長浜市立長浜北幼稚園
北島町立図書館・創世ホール(徳島県)では、多文化に触れることを目的に外国人をゲストに招き「外国絵本のおはなし会」を開催。ゲストの国の言語で絵本を読んだ後、日本語に訳したものを読み上げる。31年前の開館当初から開催形態を変えながら実施し、2024年には105回を達成。これまでに55か国の人が参加した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年5月19日号掲載