生徒が主体となり、学校図書館が交流や発信の”場”となっている事例を紹介する。
東京都渋谷区の渋谷教育学園渋谷中学高等学校(高際伊都子校長)は8月22日、学びのオリンピック「SOLA 2025」(下記詳細)の企画の一つとして、学校図書館を拠点としたビブリオバトルを開催した。Zoomを活用し、館内では同校図書委員会を中心に有志の生徒が運営・参加。他校の生徒ともオンラインでつながって行われた。
学校図書館2階の閲覧室を運営・開催会場にした「ビブリオバトル」。イヤホンをして行うので静かに進行する
午前は「ビブリオバトルSOLA国際大会/International Bibliobattle」として、スイスなど海外の学校も交え、まず日本ユネスコ協会連盟の担当者をゲストピーカーとして招き、同委員会も支援する「世界寺子屋運動」について紹介。その後英語でビブリオバトルを実施。午後は参加生徒が交代し、日本語で「ビブリオバトルSOLA全国大会」を行った。いずれもSOLAのテーマに沿って、SDGsに関連づけて本を紹介した。
全国大会は同校高校2年生の図書委員会委員長の司会で進行。参加者は同校の中学生と高校生、豊島岡女子学園中学校・高等学校(東京都豊島区)、立命館宇治高等学校(京都府宇治市)の生徒たち。前半は二つのグループに分かれて行った。
中学生が『14歳の水平線』(椰月美智子/著 講談社)について、SDGs14「海の豊かさを守ろう」などに絡めて紹介。参加者から「どのキャラクターに共感したか」「自然に対しての印象は変化したか」といった質問が投げかけられた。高校生の一人は『銀河英雄伝説』(田中芳樹/著 東京創元社)をSDGs10「人や国の不平等をなくそう」に関連づけ、現実の政治について考えながら読む魅力を語った。
決勝では2つのグループが合流。Googleフォームで投票を行い、チャンプ本は高校生が紹介した『方舟』(夕木春央/著 講談社)に決定した。
生徒たちは「色々なジャンルの本を知ることができた」「5分は思ったよりも長く、台本を考えないといけないと思った」「遠い場所にある他校の人とは、こうした企画に参加しないと話せない。話せて良かった」と感想を話し合った。
同校ではビブリオバトルに長年取り組み、他校との交流も深めてきた。コロナ禍の2020年12月にシンガポールを含む国内外の中高生とオンラインで開催し、好評だったことから、翌年よりSOLAの企画として開催している。例年、大会の様子について後日生徒が冊子としてまとめ、他校との交流の楽しさや本の魅力を発信している。
学びのオリンピックSOLA(Shibuya Olympiad in Liberal Arts)は2021年8月17日に第1回が開催された。まだコロナ禍で催し物の開催が制限される中、生徒が発案し、実行委員会を立ち上げた。「中高生が自らの手で運営する」「多様な興味・関心が交差する」「国際的かつ越境的な対話が行われる」を特徴とし、SDGsをテーマに様々なプログラムが実施される。今年のテーマは「世界に羽ばたくアクション~リベラルアーツの発信~」。
同校が会場となる対面イベントと、拠点とするオンラインイベントが国内企画と国際企画で開催され、いずれも他校の生徒にも積極的に参加を呼び掛けている。取材時は小学生の姿もあった。
「第4回 2050の未来を描く」
今年の企画の一つ、「第4回 2050の未来を描く」では、SDGs4「質の高い教育をみんなに」に沿って、未来の小学校教育についてディベートを実施。小学校教科担任制などについて意見が交わされた。他に街づくりをゲームでリアルに体験できる「SOLA街からのSOS2」、SDGsを分かりやすく伝えるために替え歌を作る「君の声は純金」ほか、「SOLA CUP」「推し活サミット」「MOGI国会」など全15のプログラムが実施された。
「君の声は純金」
HP=sola2025.com
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年9月15日号掲載