School Voice Projectはこのほど、家庭・児童生徒との連絡のICT活用状況について実施したアンケート調査の結果を公表した。
調査は昨年12月から今年1月にかけて、全国の小中高校(一条校)に勤務する教職員を対象に実施した。回答数58件。なお同調査は2022年にも実施している。

■連絡業務におけるICT活用が広がりを見せる
Q1. あなたの勤務校で、「家庭・児童生徒との連絡手段として」アプリやメールなど、ICTの活用が行われているものをすべて選んでください。(複数選択可)

前回調査と比べて、ほぼすべての項目について「活用されている」と回答した人の割合が増加した。「学校からの緊急配信」におけるICT活用は、前回の約90%から100%に増加。次いで割合の大きい「欠席連絡」「アンケート」「文書、課題等の配付」については、それぞれ90%、88%、72%という結果になり、前回はいずれも全体の約4割に留まっていたところから、大幅に向上した。
唯一、活用の割合が減ったのは「メッセージ(児童生徒)」で、前回の20%から17%に。また、「活用されていない」の回答者については0人(前回4人)となり、いずれの学校でも、連絡手段として何らかのICT活用が行われていることがわかった。
■課題もあるが、全体の9割以上が働き方に「良い影響があった」
Q2. 家庭・児童生徒との連絡手段にICTを活用することによって、働き方にどのような影響がありましたか。(設問1で「どれにも活用されていない」と回答された方は起こる影響を予想してお答えください)

前回に引き続き、全体の9割以上が「良い影響があった」もしくは「どちらかというと良い影響があった」と回答した。「どちらかというと悪い影響があった」と回答したのは、小学校で2人、高等学校で1人のみだった。
<導入の成果に肯定的な意見>※抜粋
- 電話連絡等が少なくなり、対応にかかる時間が減った。記録も残るので、後で確認することもできる。【小学校・教員】
- 紙回収の仕分け時間がなく、すぐデータ化されてとてもよい。連絡も同じく一斉配信が可能で漏れがない。文書や画像がすぐに送信できる。【小学校・教員】
- 欠席連絡をアプリを用いてできるようになったことで、保護者の負担は減ったと思う。また、PTAの集まりの可否についてなどはアプリを用いて解答して貰うことで、よりスムーズな集計ができている。【高等学校・教員】
- 朝、欠席連絡の相手をする手間が減った。学校からの連絡も直接保護者に届くので、中継する手間が減った。保護者アンケートも、担任が集約したりしなくて良くなったので、その内容に一喜一憂しなくてよくなった。これについては精神的にも負担が軽くなった気がする。【小学校・教員】
<肯定・否定の双方を含む意見>※抜粋
- 24時間メッセージは入ってくるので、それを見逃さないように、気を配らないといけないのは大変です。当日の連絡は見逃さないのですが、前日の23時とかにクレームの連絡が入ったりもします。未読が分かりやすくなるなど、現場の声でシステム側もアップデートされていくとより良いものになると思います。【小学校・教員】
- 欠席連絡は、ICTを活用しているが未だに学校に電話連絡があったり、入力していないと学校から所在確認などを行なっている。完全にICTに移行するまでには時間がかかると思う。【小学校・教員】
- ほとんど使われていない。欠席連絡はオンラインでしてほしいが、そのプログラムを組めたり、サービスを購入する費用がない。ICT支援員がいないと、DX化は進まない。ICT支援員を常勤化し、GIGAスクールサポーターも配備されなければ、多忙化は解消されない。【小学校/中学校・教員】
- 学校全体としては、紙代の節約、印刷・配布の手間がなくなったので良いが、ICT担当の負担として、年度初めの登録や転入生の登録などの手間が増大した。【小学校・教員】
■まとめ
前回調査から約3年を経て、各学校で連絡業務におけるICT活用が確実に広がっていることがうかがえる結果となった。特に「欠席連絡」「アンケート」「文書、課題等の配付」については、それぞれ90%、88%、72%と活用している学校が大幅に増加し、効率化や負担軽減につながっているという声が多く寄せられた。働き方への影響については前回と同様、全体の9割以上が「良い影響があった」もしくは「どちらかというと良い影響があった」と回答した。
課題については、前回のような「教職員への操作説明が負担」「環境整備が追い付かない」といった意見は見られず、登録作業の手間や家庭ごとの連絡の不備など、活用が進んだからこその問題が挙げられた。また、時間を問わず相互に連絡できることの功罪や、連絡共有が簡便になったからこそ、手間をかける部分を増やしたという声も。今後はますます、学校の非効率的な部分を簡略化・省力化し、本質的な支援活動や学習活動へ注力するためのICT活用が求められる。
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