ベネッセコーポレーションが運営する中学生向けフリースクール「ベネッセ高等学院 中等部」はこのほど、ベネッセ教育総合研究所と連携して行った生成AI活用の実践研究成果を公開した。
不登校を経験した生徒の日々の計画立案や振り返りに生成AIを導入したところ、活動内容を具体的に記入できる割合が上昇することが判明した。小・中学校の不登校児童生徒数が35万人を超えるなか、AIを生徒の主体性を引き出す「伴走者」として活用する取り組みとして注目を集めそうだ。
本実践研究は、不登校生徒が自ら目標を立てて行動を調整する「自己調整」の力を育むことを目的に、6月22日から7月3日にかけて生徒92人を対象に実施された。生徒は記録シート「Beログ」に朝の計画と夕方の振り返りを入力し、生成AIからフィードバックを受けた。
実験では生徒を、①AIが定型の挨拶のみを返す「挨拶のみ群」、②AIが生徒の記述に応じたヒントを示す「ヒント提示群」、③AIが生徒の記述に応じて具体的な例文を示す「例文提示群」の3グループに分け、計703件の記録を分析した。

分析の結果、夕方の振り返りで内容を1つ以上書けた日の割合は、「挨拶のみ群」が64.6%であったのに対し、「ヒント提示群」は94.3%、「例文提示群」は94.6%に達した。朝の計画作成でも、「挨拶のみ群」の55.6%に対してヒント提示群は71.3%、例文提示群は70.3%となり、AIのフィードバックが記入の第一歩を強力に後押ししていることが示された。
※朝の計画は84人、夕方の振り返りは64人を対象に、実際に記録した日のうち、計画や振り返りに関する内容を1つ以上書けた日の割合を、生徒ごとに算出した。例えば70%の場合、記録した日の約7割で、計画や振り返りに関する内容を1つ以上書けたことを示す。
夕方の振り返りの記述内容を詳しく検証したところ、「その日に何をしたか」を具体的に記入できた日の割合は、「挨拶のみ群」の53.7%に対し、「ヒント提示群」は76.8%、「例文提示群」は84.2%へと大きく向上した。
また、「集中できた」「途中で疲れた」といった自身の状態や取り組み方を振り返る「自己モニタリング」の記述も、「挨拶のみ群」の54.0%に対し、ヒント提示群は74.8%、例文提示群は76.5%と高い数値を示した。AIの適切な助言が、生徒自身が体験や心情を言葉にする際の手がかりとなった形だ。

※夕方の振り返りを分析できた64人を対象に、実際に記録した日のうち、出来事の具体性(何をしたか)、自己モニタリング(自分はどうだったか)を書けた日の割合を、生徒ごとに算出した。例えば70%の場合、記録した日の約7割で、その内容を書けたことを示す。
不登校の子供たちの中には、生活や学習のペースを自ら整えることに難しさを感じるケースが多い。個別最適な支援が求められる一方、教育現場の負担軽減も課題となっている。ベネッセは生成AIを単なる教材作成ツールにとどめず、生徒の思考を促す伴走者と位置づけた。
同校の教員らは、AIが最初の一歩を支える有効性を認めつつも、子供たちの不安や迷いに寄り添う教員の役割の重要性を強調する。AIにすべてを任せるのではなく、教員が状態を見守り支援につなげる「人とAIの協働」の実現に向け、研究成果を今後の運営に活用する方針だ。
なお、ベネッセは8月30日に開催される「多様な学びカンファレンス2026」に参画し、参加生徒も登壇して不登校支援におけるテクノロジー活用の可能性を議論する。