
水谷教授(校長に就任予定)
愛知県は自動車、航空機、ロボットなどの分野で日本を代表する企業が集積し、日本一の「ものづくり県」とも言われる。産業集積地であることの強みを活かし、「デジタルものづくり人材」の育成を目指す愛知県立高等専門学校の設置準備が、2029年4月の開校を目指して進んでいる。
設置・運営主体は愛知県公立大学法人だ。
愛知県県民文化局学事振興課高専設置準備室に、新高専設置の準備に至った背景を聞いた。
「少子高齢化、生産年齢人口の減少が深刻化することが見込まれるなか、国の推計によれば、2040年には労働生産性を高めるAIやロボットなどの活用を担う人材が約300万人不足すると考えられています。理系人材の不足が懸念されており、国は公立高専の新設促進を図っているところです。高専は実践的な技術力を備えた人材を育成する5年一貫の高等教育機関として、卒業生に対する産業界からの評価が非常に高く、地域課題の解決や地域経済の高度化に資する人材育成の中核となることが期待されています。こうしたなか、愛知県でも新高専設置に向けた準備を進めているところです」
愛知県内には現在、国立の豊田工業高等専門学校(豊田市)があるが、県立高専としては今回が初設置となる。
開校予定地は名古屋市千種区。既存の愛知総合工科高校のキャンパスに併設される。
教室や実習に必要となる施設は、愛知総合工科高校の既存施設を使用するほか、高専の研究活動を担う高専研究棟を新設する。
最寄り駅は地下鉄東山線の星ヶ丘駅。名古屋駅から約20分、星ヶ丘駅からは徒歩5分だ。
高専設置準備室では名古屋都市部から直接アクセスできる利便性の良さをアピールしている。
設置学科はデザイン情報工学科のみ。定員は1学年40名の合計200名。同学科では、機械および電気電子技術と情報技術を活用し、社会の課題やニーズを本質的に捉え、魅力あるサービスや製品を生み出す実践的技術力が身につけられる教育を行う。
4年次からはロボティクスコースとAI・デジタルコースの2コースを用意。ロボティクスコースはロボットやモビリティの仕組みや高度な活用法を学ぶ「情報融合型コース」。AI・デジタルコースは、情報技術の学びを深め、AI、サイバーセキュリティやデータサイエンスなどの仕組みや高度な活用法を学ぶ「情報特化型コース」だ。

「デザイン力」を育成するカリキュラムのイメージ
愛知県立高専の教育の中核は「デザイン力」だ。高専設置準備室によればデザイン力とは、課題発見力、分野横断的統合力、解決策創出・実装力の3者の相互作用により発揮される統合的能力を指す。
課題発見力とは社会や産業に内在する課題やニーズの本質を的確に見出す力であり、分野横断的統合力とは数理的基礎をはじめとするリベラルアーツの素養と、情報分野、機械・電気電子分野などの知識・技術を横断的に結び付けて応用する力だ。解決策創出・実装力とは解決策を構想・設計し、実装・検証まで遂行する力を指す。
「DXやAIの急速な進展などにより、将来の社会・産業構造は大きく変化していくでしょう。従来通りの方法や答えでは解決できない社会の課題やニーズに対して、さまざまな分野の考え方や技術を組み合わせ、課題やニーズを本質的に捉え、これまでにない解決策を見出す必要があります。私たちはそうした力をデザイン力と定義しています」
大学、企業、自治体などとの連携にも力を入れる。愛知県立大学や愛知県立芸術大学をはじめ、近隣の大学や高専などと連携・協働し、分野を横断した教育、研究を進めていく。
企業とはPBL(課題解決型学習)における実務家教員による教育、インターンシップなどを行う。
愛知県とはSTATION Ai(スタートアップ支援拠点)をはじめとする県の取組と連携し、講演会、ワークショップ、起業プログラムなどを通じて人材育成を図る。
初代校長には、水谷法美氏が就任する予定だ。水谷氏は土木工学の専門家で、名古屋大学大学院工学研究科教授、名古屋大学副総長などを歴任。26年4月から愛知県顧問に就任し、愛知県立高専の設置に向けてアドバイスなどを行っている。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年8月24日号掲載