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学校施設

未来思考で学校施設を再構築~老朽化対策ではなく「地域拠点化」を~国研報告書が提案

2026年7月28日

人口減少・財政制約が進む中、学校施設の老朽化は自治体にとって喫緊の課題だ。築40年以上の学校施設は2026年度時点で約6割──1970年代建設の学校が一斉に更新期を迎えている。

国立教育政策研究所が2026年3月に公表した『地域とともに進める学校施設の再生・機能強化-老朽化対応を「地域の未来を育む拠点」となる学校づくりの契機に-』では、学校の老朽化対応を単なる更新ではなく、地域の未来を育む地域拠点化の契機とするという視点でまとめられている点が特徴だ。

本報告書は2023〜25年度のプロジェクト研究「老朽化した学校施設の計画的かつ効率的な再生・活用に関する調査研究」の成果。

本報告書では、学校が地域における数少ない公共拠点となる町村部において、学校を中心とした複合化により、地域生活に必要な機能を確保しつつ、公共施設全体の最適化を図ることを提案。学校を核とした複合化は、財政的制約が強まるなか、地域の暮らしを支えるための有効な選択肢の一つであるとしている。

例えば図書館、子育て支援施設、地域交流スペースなど、住民に身近な機能を学校施設に集約・複合化することで、施設総量を抑えつつ地域の生活を支える基盤を維持できる。

本報告書では学校施設再生を「地域政策」と捉えて進めるための計画・設計・運用のポイントを次の5つに整理した。

▼老朽化対策に限定せず、上位計画や地域振興策と連動させ、学校を地域再生の核として再定義する【計画・体制】

▼教育、企画、財政、建築等の多部局が連携し、組織の垣根を越えた推進体制のもとで、プロジェクトの理念を全庁的に共有する【計画・体制】

▼構想初期から住民等との対話を重ね、事業への理解と当事者意識を醸成するとともに、多様な主体の参画による共創型の施設づくりを進める【対話・参画】

▼専門家等が構想から運用まで一貫して関与し、人事異動等に左右されない知見の継承と計画の一貫性を担保する【対話・参画】

▼教育・防災・地方創生など、多角的な政策目的に対応する財源を最適に組み合わせ、自治体の実質的な財政負担を軽減する【財源】

施設の集約化や複合化を含めた総合的かつ中長期的な視点に立った検討を実現するためには計画段階において教育×防災×財政×地域振興など各部署の横断体制を構築すること、地域拠点化としての機能強化を図るための設計要件を検討すること、ワークショップの開催等を通じて地域の声を反映しやすい設計とすることが重要であるとしている。

■運用の利便性や安全面の配慮でデジタル技術を活用

地域利用を前提とした学校施設におけるセキュリティ確保についても言及。

学校施設を地域に開放し、地域住民が日常的に利用することを前提とする場合、児童生徒の安全を最優先としたセキュリティ確保が不可欠だ。必要に応じて出入口を分離し、電子錠(オートロック)やシャッターを設置して利用者を限定する、主要な出入口や共用部分には監視カメラを配置し、常時モニタリングできるようにする、校内外の「死角」を極力なくすレイアウト計画、オープンな空間づくり、ガラス壁面による見通しの確保などが考えられる。

事例集によると、北海道安平町の義務教育学校「早来学園」では学校側の日常的な入退室管理に、教職員と児童生徒に顔認証システムを導入。地域住民の利用については、オンライン上で開放エリアや共用エリアの利用を予約し、予約情報と電子錠が連動して予約時間になると自動で出入口が解錠されるようにしている。この仕組みにより教職員の管理負担が大幅に軽減された。

茨城県小美玉市では、施設の空き状況を可視化し、24時間いつでも予約できるオンライン予約システムと電子錠管理システムを導入。これにより利用者は、オンラインでいつでも空き状況を確認して予約申請ができる。また、スマートキー電子錠管理システムと入退室管理システムを活用することで、担当者が不在でも利用者自身で施設を利用できる。テクノロジーの活用により、行政側の管理負担の軽減や、利用者の利便性の向上ともに、施設の利用促進につなげることができる。

デジタル技術は、学校施設の地域開放を安全かつ効率的に実現する基盤として利用されている。

■多様な財源を確保するために

大規模な学校施設整備には相応の財源確保が必要。本報告書では財源確保のため「文部科学省の公立学校施設整備費負担金や学校施設環境改善交付金等に加え、関係省庁による補助金・交付金の活用や、地方債(起債)を含めた資金調達手法を柔軟に組み合わせることが鍵」としている。

多様な財源の利用を前提とすることで柔軟なアイデアが生まれる面がある。多様な財源を最大限に活用しよう、という目標は庁内連携が進むきっかけにもなるだろう。

例えば三重県いなべ市は、教育施設整備と廃校再生を一体の構想の中で整理し、教育施設整備には公立学校施設整備費負担金等及び合併特例債を、廃校再生には地域おこし協力隊や地域活性化起業人制度を活用している。

奈良県下市町では、地域経済循環創造事業交付金、地域観光新発見事業補助金、社会資本整備総合交付金、過疎対策事業債など、複数の制度を目的別に組み合わせることで、学校施設整備と旧校舎再生という複合的な事業を実現。

北海道東川町では、防災機能と教育・地域交流機能を融合させることで、緊急防災・減災事業債の活用要件を満たした。

■掲載事例にみる財源活用の傾向

掲載事例を補助金活用の側面から整理した。

●公立学校施設整備費負担金・学校施設環境改善交付金=全国的に最も利用されている。老朽化対応の中心財源。負担金は建物や運動場などの新築・増築など。原則1/2。交付金は長寿命化や安全性確保など既存施設を対象とする。原則1/3。

【利用自治体】安平町/東川町/帯広市/弘前市/小美玉市/柏市/君津市/八王子市/相模原市/磐田市/瀬戸市/松阪市/いなべ市/下市町/加古川市/邑南町

●5か年加速化対策=正式名称は防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策。北海道の事例で特に活用された。2025年度で終了し、2026年度から国土強靱化の新たな計画(〜2030年度)に移行(表参照)。

●地方創生推進交付金=安平町や東川町では‘地域とともに育てる学校’で活用。自治体の課題解決に利用できる。現在は地域未来交付金に移行。

●合併特例債=統合・新設など学校再編の財源として強力。川根本町、磐田市、松阪市、いなべ市、下市町で活用。

●地域おこし協力隊・地域活性化起業人制度=廃校活用や地域連携型の学校づくりで活用しやすいようだ。

未来指向で学校施設を再構築~老朽化対策ではなく「地域拠点化」を~国研報告書が提案

学校施設再生で併用可能なその他の制度

開始年度の関係もあり、今回の国研報告書の事例集には登場していないが、学校施設再生の文脈でともに活用できる可能性があるものを整理する。

■緊急防災・減災事業債(地方債)

全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災のための地方単独事業が対象。地域防災計画上に定められた公共施設等の耐震化に利用できる。2026年度総事業費5000億円。

2026年度は、新たに、次の事業を対象事業に追加。指定避難所における避難者の生活環境改善(厨房設備、入浴設備、洗濯設備、災害対応車等)、指定緊急避難場所における一時的な滞在のための防災東屋等及び防災コンテナの整備、庁舎・消防庁舎における衛星通信システムの整備。

■デジタル活用推進事業債

2025年度から開始。本事業債は、デジタル活用推進計画に位置づけて利用できるもの。申請の際はデジタル活用による効率化の効果等の記載が必須。住民や地域に対し直接・明確に効果が波及している点を申請書に記入することが採択のポイントだ。システム導入の初期経費、サイバーセキュリティ対策の強化に必要なシステムの導入、情報通信機器等の整備、地域の課題解決を図る地域社会DXの推進など多様な活用が考えられる。

昨年度実績によると、教育現場での利用度が極めて高いという。学校施設の地域開放や入退室管理、オンライン予約など、事例集で示されたデジタル活用の方向性と制度要件が合致するため、今後は学校施設再生と組み合わせて活用される可能性もある。共同調達によるシステムの導入も対象。

今年度の1次締切は6月上旬に終了したが、昨年度実績(2次募集10月)を踏まえると、2次募集もあると考えられる。

■森林環境譲与税

森林整備・木材利用促進の財源である森林環境譲与税は、2024年度より国が全国民から徴収している森林環境税を原資として自治体に配分される。校舎や体育館、特別教室などの木造化や教室、図書館、多目的スペースでの木製建具、木質化、机・椅子・本棚などの木製什器に利用でき、学校施設再生との親和性が高い。

補助金ではなく「譲与税」のため、自治体ごとに年度内で使途計画を作成することで利用できる。

森林環境税は”恒久税”として制度化されていることから今後も毎年継続されるため、計画的な利用が考えられる。自治体の自由度が高い財源として周知、一層の有効活用が期待される。※譲与税=国が徴収した税金を一定の基準に基づいて地方自治体へ‘そのまま配分する’もの。地方交付税とは別枠。使途が限定される「目的財源」である場合が多い

■高等学校教育改革等推進事業費

高等学校教育改革実行計画に基づき実施する次の単独事業の整備が対象。▽専門高校の機能強化・高度化に資する施設設備 ▽普通科改革を通じた高校の特色化・魅力化に資する施設設備 ▽地理的アクセス・多様な学びの確保に資する施設設備

事業期間は2031年度まで。2026年度予算1000億円。

既に今年度1次募集分の採択校を公表済み。秋頃に2次募集が行われる見込み。

みんなでつくる学校施設サポーター~2026年8月から開始

令和の時代に求められる学校施設は「子供たちの教育の場」であるとともに、地域創生の核」「防災拠点」という社会インフラの側面がある。

地域住民等との対話を通じた新しい学校設計が必要であることから、文部科学省では「みんなでつくる新しい学校施設づくり」を支援する取組を始めた。

具体的には次の4点について支援する。

■対話の場の設定・ワークショップ等のファシリテート支援

サポーターがワークショップでファシリテーターや講演・助言。ワークショップ等の企画段階で学校設置者等に向けてアドバイスを行う。

■バリアフリー・インクルーシブな教育環境実現に向けた当事者参画の実施支援

サポーターがワークショップに参加し、障害当事者等の観点から講演・助言。ワークショップ等の企画段階で学校設置者に対して、障害当事者等の観点からアドバイスを行う。

■地域の障害者団体等の紹介支援

当事者参画に取り組みたい学校設置者に対して、障害者団体等の紹介を行う。

■設計者の選定に向けた条件整理・選定方法の検討支援

プロポーザル方式等に新たに取り組む学校設置者の疑問に答える。

なお、学校施設整備の無料相談窓口は「CO-SHA Platform」より受け付ける(https://www.mext.go.jp/co-sha/contact.html

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年7月27日号掲載

 

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