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教育ICT

1人1台端末を活かす学習環境へ 学習者用デジタル教科書&多要素認証 ~東京学芸大学附属小金井小学校

2022年1月5日

東京学芸大学附属小金井小学校では、1人1台情報端末活用に向けて国や大学、企業と様々な実証事業や共同研究に取り組んでいる。12月15日、学習者用デジタル教科書+教材(以下、学習者用デジタル教科書)や指紋認証ドングルによる多要素認証、探究学習に取り組んでいる4年2組理科の授業を取材した。授業者は理科が専門教科の小林靖隆教諭。同校では5・6年が国語と社会、4・6年が理科の学習者用デジタル教科書を導入している。

前時の板書内容を大型提示装置に映して振り返り。児童はすでに学習者用デジタル教科書にログイン済だ

学習環境を整える

情報端末(Windws10)画面に「SmartOn」と表示されると、児童は指紋認証ドングルを挿入。ドングルに指をあてると数秒でWindowsとMicrosoft365にログイン完了。児童は、MicrosoftTeams(以下、Teams)に設定したチーム「4年2組」と「たのしい理科学習者用デジタル教科書」(大日本図書)にログインした。

学習者用デジタル教科書上に書き込んで毎時間提出する

児童はデジタル教科書上に様々な書き込みをしており、付せんを矢印でつないで思考の流れをまとめたりイラストにまとめたりしていた

この日の課題は「月は時間が経つとどのように動くのか」。小林教諭は、前回の板書内容を大型提示装置に提示して振り返った後、一昨日の「月の動き」の映像リンクをTeams上に投稿。これは、約10時間分の月の動きを小林教諭がタイムラプス機能で10秒ごとに1コマずつ撮影したもの。児童は各自の端末上で動画を再生し、月の動きを確認。それを見てわかったことや疑問を次々に発言。さらに各自の学習者用デジタル教科書上に、理解したことや発見したこと、疑問などを付せん機能で書き込んでいった。「東から出て西に沈むという予想は当たった」「月の形が違うと動き方も変わるのかを知りたい」等、児童によって様々だ。タイピングも速い。複数の付せんを矢印でつなげて思考の流れを整理している児童、月の動きのイラストを書き込んでいる児童もいる。

次に小林教諭は「みんなに見せたい記事がある」と、Teams上にURLリンクを投稿。クリックすると、この日の4日後が「今年の最小の満月」であると記載されている。「この日は観察のチャンスだ」と教室が沸く。

授業の終わりに児童は、学習者用デジタル教科書に書き込んだ内容を各自の端末でスクリーンショットし、Teams上に投稿した。大学がSARTRAS(授業目的公衆送信補償金制度)に加入しており『改正著作権法第35条運用指針(2021年度版)』に基づいて活用している

小林教諭は「学習者用デジタル教科書には様々なメリットがある」と話す。「これまで理科は、独自教材を使った授業展開が多かった。学習者用デジタル教科書には、実験の注意点や観察のポイント等をわかりやすくまとめた動画が豊富。児童はさらに安全に配慮して実験するようになった。各自で何度も確認でき、動画上にラインも引ける。今までよりも教科書を利用する機会が増えた」

学習者用デジタル教科書はクラウド版とインストール版があり、同校ではクラウド版を選択。「クラウド版は、家庭からもログインできる。後で気付いて追加したいことや修正も簡単にできる。保護者もログインして自分の子供の学習の様子や教員とのやり取りを閲覧しており、安心感につながっているようだ」

Teamsも毎時間活用。「Teamsとクラウド版学習者用デジタル教科書は相性が良いと感じる。意見をやりとりしたり、児童の撮影した写真や動画、教科書に書き込んだ内容をTeams上に投稿して共有できる。学び方が変わったことで、教員に対する期待の内容も変わった」

スクリーンショットで投稿した各自の学びの記録は毎回、小林教諭がコメントして戻す。児童はこのコメントを楽しみにしているそうで、花丸やスタンプのみでは満足しなくなったという。今後は、児童によりノートやデジタルを自由に選択できるようにしてさらに主体性を発揮しやすくしたいと考えている。

■「理数探究」でTeamsが活躍

42組のTeams内には様々なチャネルを設定しており、武蔵野大学と連携した「理数探究」では「鉱石調査」「ウーパールーパーの解剖」「気象調査」「和紙」等、テーマごとにチャネルを設定。各班から途中経過が届く。予算は各班1万円で、「鉱石」「遮光板」「太陽電池キット」等、探究に必要なものを児童が投稿して教員が購入している。

■ICT支援員は週2

同校ではネットワークが未整備の教室もあるが、中高学年のクラス教室ではクラウド版の学習者用デジタル教科書に全員がログインしても問題なく使うことができる。また、ICT支援員は、週2回程度の来校がある。およそ1回分は大学予算、もう1回分は同校が独自に獲得した文科省事業予算によるものだ。

1つのドングルで多要素認証
指紋認証で即ログイン

今回、多要素認証システムとして実証したものは、指紋認証ドングル「BISCADE(ビスケード)ドングル」(東芝インフラシステムズ)を多要素認証システムSmartOn(ソリトンシステムズ)と連携したプロトタイプで、GIGAスクール構想配備による児童生徒端末や校務用端末の多要素認証に特化した新しい仕組み。「ドングルによる所持認証」「指紋照合による生体認証」の多要素認証が1つのドングルで実現。簡単かつ安全にWindowsログイン認証とMicrosoft365認証ができる。

指紋認証ドングルに指を触れてログイン完了

小池教諭

本実証担当の小池翔太教諭は「GIGAスクール構想で求められているのは、日常的な活用とそれに伴う安全管理。当初、指紋認証は、パスワード入力に不慣れな低学年向きと考えていたが、本仕組みは、リスクや恐怖など負の側面を強調しがちなセキュリティ教育から脱するきっかけになった」と話す。「パスワードは重要、と言ってもピンとこない児童もいる。自分の指紋を登録したドングルはネットワークにつながる大切な鍵であると伝えると、とても大切に扱うようになる。物理的なものがあると、なくさないように配慮する、という気持ちを持ちやすく、パスワードの重要性もイメージしやすい。さらに、指紋など生体認証や多要素認証が何故安全なのか等セキュリティ意識も醸成しやすい」

4年生は情報端末を日常的に活用し、キーボード入力にも慣れておりパスワード入力を苦にする児童は少ないが、1秒でも早くログインしたいという気持ちもある。また、パスワードは入力回数が少ないほど漏えいリスクが減る。指紋認証に失敗した場合はパスワード入力に切り替えることもできる。

小林教諭は「児童は指紋認証ドングルを宝物のように大切にしている。専用ケースに入れている児童もいる。指紋登録は左右の指から2本を選んで登録するので1人につき70秒程度かかるが、児童は自分の順番を心待ちにしていた。登録がすむと、様々な角度で指紋認証を試す児童もおり、新しいテクノロジーの体験になっていた」と語る。指紋認証ドングルを万が一紛失しても個人情報が流出することはなく、かつ教員が管理できるため授業の進行には支障がない。本製品は2022年リリース予定。

本実証に伴い活用した「Lenovo IdeaPad D330」については「頑丈で安心。落下するなどヒヤリとすることもあったが、問題なかった」と話した。

教育家庭新聞 新春特別号 2022年1月1日号掲載

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