
岩渕成紀/著
農文協
四六判 400頁
2750円
稲刈り後の田んぼに水を入れ、冬の間も湛水しておく、あるいは湿地状態にしていくことを冬期湛水水田という。著者らは冬期湛水水田を「ふゆみずたんぼ」と呼びならわし、全国で普及・啓発に努めてきた。
「ふゆみずたんぼ」は稀少な動植物の住みかとなり、代替湿地として渡り鳥の中継地となるなど、生物多様性の観点からも注目されている。さらに「ふゆみずたんぼ」ではイトミミズによってトロトロ層が成されることで、化学肥料や農薬に頼らない稲作が可能になることもわかってきた。宮城県を拠点に「ふゆみずたんぼ」の生きもの調査をしてきた著者が、全国の実践者を訪ね、多様な取組を聞き取った記録となる。
気仙沼市大谷地区の学校田んぼ、塩竃市寒風沢島の田んぼ、南三陸町志津川熊田地区の田んぼ、陸前高田市、石巻市渡波の復興など東日本大震災からの水田の復興における「ふゆみずたんぼ」の活用や、生物多様性や渡り鳥の保護にかかわる国際条約(ラムサール条約)において、水田の価値を位置づけるなど、著者自身の取組も紹介する。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年10月20日号掲載