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【教職員のメンタルヘルス】新年度の「教職員のメンタルヘルス対策」

2014年4月18日
連載

良い職場環境を作る

一体感・連帯感・安心感・所属感

本紙で昨年度好評の連載となった「教職員のメンタルヘルス‐心の悲鳴に耳を傾ける」は、日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会の土井一博理事長と鈴木隆広会長の協力を得て、昨今、課題となっている教職員のメンタルヘルスの現状について紹介してきた。今年度も6月16日号から連載を再開する。そこで土井理事長に、なぜ今教職員のメンタルヘルスが問題となっているのかを聞いた。

日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会 土井一博理事長

 現在、学校現場には「(実質の)勤務時間」「膨大な事務作業量」「生徒指導」「保護者対応」の状況を抱えており、これにより仕事量が増えメンタルヘルスに問題が生じることがあります。

ですが、これらの同じ問題を抱えていても教職員一人ひとりが悩みを悪化させることなく、スムーズな学校運営がなされている学校もたくさんあります。その違いは何でしょうか。それは「職場環境」であり、本協会では「職場環境尺度」を作っていくことでその解決の糸口を探りたいと考えております。

様々な社会状況を受け、一般企業でもメンタルヘルスの問題を抱えている中、「学校の先生は何が大変なの?」と聞かれることがあります。そう聞かれたらどのように答えるでしょうか。すぐに成果が見えない、24時間の対応、関わるのが人で個々の対応が違う、命を預かる、など精神的な重圧が多い仕事です。

これまで、子供達のために膨大な時間を割き対応してきた先生方が、昨今では教育の中身にまで介入されるようになってきています。それは、教員自身の”やりがい”自己肯定感の低下にもつながってきています。

本協会は、これまで学校現場のメンタルヘルスに介入してきた実績等を経て、「一体感」「連帯感」「安心感」「所属感」のある職場環境からは休職者が発生しないということを世の中に発信したいと考えております。そういった職場環境を作るために、次の3つの提案をしたいと思います。

■「人となり」を知る

まず先入観や不信感のない時期の”繋がり”を大切にするということです。例えば、新年度が始まった4月1日から始業式の始まる1週間の間に、教師自身が主役になれるお互いの”人となり”を知るための時間を確保してもらいたいです。
お互いの情報が何も伝わらないまま仕事が走り出してしまうと、相手に対する先入観や不信感が先に根付きます。4月の初め以外にも、各学期の始まる直前に同じような機会を設定しスタートできるといいですね。

■メンター制度を導入

次に、新任教員を対象にしたメンター制度の導入です。3年~5年目までの教員が新任とペアを組みメンタルケアを目的とした世話役を買って出るシステムです。これは新任教員だけではなく、メンター役である中堅教員が育つという副産物も生まれます。この制度は、異動1年目の教員に対しても有効でしょう。

■家庭への連絡

最後に、4月中に各担任はクラスの各家庭に連絡をしてほしいと思います(電話ではなく手紙でも構いません)。
必勝先手、何も問題がない時に担任の方からアプローチをかけ、「保護者と一緒に子供を支えていきたいので宜しくお願いします」と伝えておくと、それ以降の保護者の反応が違いますから。何か問題が起きた時に初めて家庭に連絡を入れるような関係しか作れないから、保護者からの信頼が得られないのです。

職員の目標を立てる

図に示す「職場環境づくりピラミッド」を参考にして下さい。提案する5層のピラミッドのうち重要となるのが、中央に位置する「1つの目標に向かう」という体験をすることです。

ある学校では4月に「教員自ら進んで子どもに声をかける」という”職員室目標”を設定し、全員で頑張りました。ここで大切なのは、教員の頑張りを管理職が評価してあげられるかということです。「みんなで一つのことを頑張った」という体験をした教員がはじめて同僚に安心することができるようになるのです。「他人に安心することができるか」が、職場の雰囲気づくりの鍵となります。

私は川口市教育委員会の学校教職員メンタルヘルスチーフカウンセラーを務めておりますが、この感情の共有体験については1学期の早いうちに実施してほしいと管理職に話しています。実施した学校の教員からは、「なぜこのようなことを今までやらなかったのか」という声もあがっています。セルフケアとともにこれまで述べてきた「お互いの人となりを知る」、「メンター制度」等を参考にして、学校組織に対して積極的に”しかけていく姿勢”を大切にして教員のメンタルヘルス予防に取り組んでほしいと思います。

執筆=土井一博(どい・かずひろ)日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会理事長、川口市教育委員会学校教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー、順天堂大学国際教養学部客員教授(教職課程)

【2014年4月21日号】

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