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学内外連携の核として養護教諭に高まる期待<全国養護教諭連絡協議会 第24回研究協議会>

2019年3月22日

現場の課題解決のコーディネーター役を基調講演・フォーラムから提言

あいさつに立つ村井会長

あいさつに立つ村井会長

全国養護教諭連絡協議会の第24回研究協議会が2月22日、都内のホールで開催され約1200名の養護教諭が全国から参加した。児童生徒等の健康課題が複雑・多様化している現状を受け、昨年度に引き続き「時代の変化に対応した養護教諭の役割を追究する~『チームとしての学校』の力を高める養護教諭の役割とは~」という主題のもと、期待される役割を示した基調講演や児童生徒の健康課題へのチームとしての対応事例を紹介するフォーラムが行われた。養護教諭に期待されるのは、保護者や学校との連携の中核になることだと確認された。

開会のあいさつで同協議会の村井伸子会長は「『チームとしての学校』においても、養護教諭をはじめ教職員が自らの専門性を発揮し、心理や福祉等の専門スタッフの参画を得て、連携・分担することによる児童生徒の健康課題解決が期待されている」と語った。

文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課の三谷卓也課長も「児童生徒の健康課題に適切に対応するには、校長のリーダーシップのもと、学校保健活動の中核的な役割を果たす養護教諭が学校内外の連携を促進するコーディネーターとなり、教職員や学校医、スクールカウンセラー、保護者および地域の関係機関等と連携し、チーム学校として組織的に対応することが重要だ」と述べた。

続いて特別講演では、泉州広域母子医療センター・センター長、りんくう総合医療センター・産婦人科部長を務める荻田和秀氏が登壇。

妊婦の交通外傷の起こりやすさや早産の割合の増加、胎盤を経由した風疹ウイルスによる胎児の先天性風疹症候群疾患、「望まない妊娠」などによる産婦人科への未受診問題など、生々しい事例を交えて臨場感たっぷりに医療の今日的な課題を紹介した。

午後は文科省健康教育調査官・松﨑美枝氏による基調講演「現代的健康課題を抱える子供たちへの支援」、愛知教育大学長・後藤ひとみ氏がコーディネーターで「子供たちの現代的健康課題の解決における養護教諭の役割」をテーマにした教育現場の養護教諭らによるフォーラムが行われた。

文科省は平成29年度に「就学時の健康診断マニュアル」を改訂した他、平成20年に発行された「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」の改訂にも取り組んでいる。松﨑調査官はこれらの中で触れられている健康課題への支援について解説。勉強会等で研鑽に努めることを求めた。

フォーラムでは幼稚園から高校まで、校種も内容も違う4事例の発表と、それぞれの活動から得られた、現代的な健康課題の解決のために養護教諭が果たす役割の提案が行われた。学校不適応の生徒の削減という共通目標を設定し、教職員の組織を有機的に動かして取り組んだ事例など、養護教諭がコーディネーターの役割を発揮していることが重要だ。

基調講演
現代的健康課題を抱える子供たちへの支援

発達障害や人間関係 増える課題は研修で資質向上

文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課の松﨑美枝健康教育調査官は、「現代的健康課題を抱える子供たちへの支援」をテーマに基調講演を行った。その主な内容を紹介する。

平成2年度から5年ごとに公開されている「保健室利用状況に関する調査報告書」の平成28年度の調査結果によると、保健室を利用する背景要因として特に多かったのは、小学校で発達障害・友達との人間関係・いじめ問題、中学校および高等学校では友達との人間関係・発達障害・家族との人間関係だった。他にも、進路についての相談などもあり、発達障害の増加により人間関係に悩む子供も多く、児童生徒の心の健康への課題は多様化している。

■アレルギー・ガイドラインを改訂

学校でのアレルギー性鼻炎発症も決して珍しい疾患ではない。近年では、登校してから突然発症する子供もいる。

社会全体でのアレルギー政策のゴールは、すべての児童生徒が安心して学校生活を送ることにある。そのための取組の1つとして、文部科学省はHP上で「アレルギー疾患対策」というページを用意している。その中の「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」は、平成20年に発行されたものであるため、現在改訂作業が進められている。来年度中には、改訂版を学校向けに配布する予定だ。

感染症対策についても新改訂された冊子がある。講演会場では、国立感染症研究所感染症疫学センターが平成30年度に公開した「学校における麻しんガイドライン 第二版」を紹介した。これはまだ冊子化されていないので、現在は同センターのHPでの公開のみとなっている。

■就学時健診マニュアル15年ぶり改訂

一方、発達障害への政策も着実に進んでいる。平成29年度には、「就学時の健康診断マニュアル」が15年ぶりに改訂された。このマニュアルは日本学校保健会のHPからダウンロードできる。一部の教育委員会では発達障害を持つ児童生徒への対策が遅れているが、今後はさらに早期発見・支援が望まれる。

■スタッフ間の連携が養護教諭への期待

保健室での健康相談の内容が多岐に渡る中で、学校に求められているのは「健康な生活を送るための力を児童生徒に身に付けさせること」。そのためには保護者・学校・養護教諭間での連携を取ることが重要なことから、養護教諭に期待される役割は「養護教諭の専門性を活かした、スタッフ間の連携を担うこと」にある。

専門性という養護教諭の資質をさらに向上させるには、自ら学び続けるモチベーションを維持できる環境が必須だ。研修との接続の促進や、施設整備・育成指導のための各教育委員会・大学機関との連携も進んでいるが、養護教諭の育成目標(資質向上)とそのための研修制度は都道府県ごとに独自に設定されている。「勤め先の学校の所在地である各県や政令指定都市のHPを確認してほしい」と松﨑氏は語った。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年3月18日号掲載

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