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コロナ後を見すえた養護教諭の役割~埼玉大学教育学戸部秀之教授に聞く

2021年2月16日

今しか得られないデータ
生の声を収集・記録する

 コロナ禍の影響で初のオンライン開催となる、令和2年度全国養護教諭連絡協議会第26回研究協議会。同会シンポジウムで今年度もコーディネーターを務める、埼玉大学教育学部の戸部秀之教授は養護教諭に「コロナ禍の中にある今しか得られない、児童生徒の健康データと生の声を集積してほしい」と期待する。

――新しい生活様式に取り組んだ2020年を経て、改めて養護教諭に伝えたいことは

まずはお礼を言いたいです。1日の3分の1を学校で過ごす子供たちの感染防止に尽力していただき感謝しています。未知の感染症への最大の武器は、手洗いやうがいなどの一人ひとりの行動。小学1年生から当たり前の習慣として学んできたことが最大の効果を発揮しています。健康教育の大切さを実感できる時期に来ています。

今なら、毎年行っている予防や咳エチケットなどの重要性を、他教員や社会が再認識してくれています。養護教諭には、今年は特にすごい働きをしたのだと認識してほしいです。

その上で養護教諭に伝えたいのは、ポストコロナを見通して考えていく視点です。学校で必要な体制は概ね2020年で形になっています。感染対策に対応する今だけでなく、「今をどう将来に活かすか」が今後は重要となっていきます。

2度目の緊急事態宣言中も、昨年春のような手探り状態ではなく、子供の感染の特徴やストレスの把握、家庭での問題や感染者差別の未然防止など、起こりうる留意点を整理できています。最初の緊急事態宣言よりは対応しやすくなっていると思います。

――今後の学校が意識していくことは

養護教諭からの話を聞いていると、最近は消毒やトイレ掃除なども平時に近くなってきているようです。

その一方で、感染予防における慣れや気のゆるみが教員・児童生徒・家庭それぞれで見えてきています。もう一度気を引き締め、「持続可能で有効な感染対策」を継続して行っていただければと思います。

換気は教員がコントロールできますが、手洗いは子供たち自身で行うもの。手洗いが楽しくできる健康づくりを進めましょう。家庭と学校それぞれでの健康観察をしっかり進めてもらい、メリハリのある感染予防を続けてください。

――今後の児童生徒への懸念事項は

ウイルスを過剰に恐れて神経質になっている子供もいます。さらに、保護者が過敏になっているケースもあります。授業中に話し合い活動が盛り込めないことのほか、いくつかの大きな学校行事がなくなり、授業時間が増え休日が減っている今年度の環境が、子供たちに与える影響はやはり大きいです。

家庭内でも、保護者の仕事や収入の変化をきっかけに、家族の不安が子供に影響しているケースもあり、教育格差は今後さらに広がっていく可能性が高いです。

昨年春の長期の臨時休業中に睡眠障害・生活リズム・コロナ肥満などで健康状態が悪化した子供が増え、その多くが、夏季休業までに健康状態をコロナ禍以前に戻せていません。特に肥満は簡単には解消しないので、養護教諭は引き続き、児童の健康状態を把握する必要があります。

――養護教諭に今後取り組んでほしいことは

子供の声を、できるかぎり丁寧に収集・記録してほしいと思います。コロナ禍にある今しか集められないものです。将来の子供たちの健康管理につながる貴重なデータとなるので、養護教諭の皆さんには頑張っていただきたい。

昨年からの「感染拡大の影響で外に遊びに行けない」「親密なスキンシップが親子や友達同士でできない」などの声が集積され、記録としても残っていると、「遊びやスキンシップは子供たちにとってこれほどまでに大切である」ということが子から子へ、世代を越えて伝えられます。

保健の授業でもコロナ禍の状況を活かせる単元は多いです。将来の授業の内容に活かすためにも、今のうちに、コロナ禍の影響を映す「生の声」を集め、記録しておいてください。

――文部科学省が次年度予算で新たに計上した「児童生徒の視力低下対策」についてご意見を

子供たちの視力低下は最も著しい健康課題。毎年低下傾向にあり、今もその勢いが止まっていません。

子供たちが視力低下を自覚するのは、視力がかなり落ちてからであることが多いため、セルフチェックでこまめに視力計測を行う習慣をつくることを意識した環境づくりが求められます。

2010年に私が発表した論文では、児童を対象とした視力低下予防プログラム「視力セルフチェック」を作成し、小学校中学年から高学年を対象に2年間実施して経過を観察しました。学期ごとに1回ずつ、休み時間に子供たちが自分で視力を計測する機会を設けました。友達と一緒に楽しみながら測ることで、「少し前までは見えていたのに今日はぼやけて見える」と自覚し、視力低下の早期発見にもつながりました。

視力低下を防ぐ保健指導は今後ますます重要になります。ぜひ皆さんの学校でも視力低下対策に取り組んでいただければと思います。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年2月15日号掲載

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