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教育ICT

SINETで集約型接続 教員用端末は学習・校務兼用<鴻巣市教育委員会教育総務課主任・新井亮裕氏/学校支援課副参事・若林朋子氏>

2021年8月3日
第78回教育委員会対象セミナー・東京

7月5日、東京都内で教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を開催。守谷市教育委員会、杉並区教育委員会、鴻巣市教育委員がGIGA端末配備後の活用推進や研修、体制整備のポイントを報告。1人1台端末を8年間活用している川崎市立川崎高等学校附属中学校が成果を報告した。


鴻巣市教育委員会 教育総務課主任・新井亮裕氏

鴻巣市教育委員会 学校支援課副参事・若林朋子氏

埼玉県鴻巣市教育委員会(小学校19校・中学校8)は、学習・校務兼用の教員用端末(Surface pro 7)650台、児童生徒用端末(Dell Latitude3190Education2in1)8509(小学校5575台、中学校2929台、予備5)を配備し、本年4月より、学習系も校務系もSINET経由で各種クラウドプラットフォームを活用している。同市では教育総務課(インフラ)、学務課(服務管理)、学校支援課(活用方法)等、各課が連携して主体的に深い対話や協議ができる組織づくりに取り組んだ。市の環境整備について教育総務課の新井亮裕主任が、学校活用について学校支援課の若林朋子氏が報告した。

…・…・…

本市では20199月、「鴻巣市学校教育情報化推進計画」を策定。基本理念は「ICT機器の活用により、新しい時代で活躍するために必要な資質・能力の育成」だ。子供がICT機器を文房具のように使う姿を目指してICT環境を刷新。今年度より全27校で運用を開始した。

■共同研究でSINETを検証

児童生徒11台端末導入によるインターネット利用の増加のため、全国でトラフィックが急増している。そこで本市では、トラフィック増大に対応可能なセンター集約型のネットワーク形態をSINETにより実現したいと考え、SINET直結クラウドの構築、実トラフィックの調査、セキュリティ水準を担保する仕組みの確立等について大学及び企業と共同研究を行うこととした。

学校は閉域網からSINET経由でクラウドプラットフォームに接続し、教員はインターネットを経由せずに校務情報に接続できる。昨年度、先行して導入したパイロット校では、1人あたり約052Mbpsの帯域が必要であった。これを市内全体約9000人が活用する場合、468Gbpsが必要だ。SINET接続までの区間がボトルネックにならないように設計することが重要である。そこで学校から鴻巣市独自の閉域網には1Gbpsのベストエフォート回線で接続。閉域網からSINETノードへは、5Gbpsの専用線で接続している。

校務系クラウド基盤Microsoft Azure(統合型校務支援システム、勤怠管理システム、採点支援システム、備品管理システム)からはSINET1Gbpsで接続。SINET網内はL2VPNとし、安全で高速・高品質な通信を低価格で構築。増大したトラフィックも一元的に受けることができる。

また、Office365やドリル教材、辞書や協働学習等教育コンテンツのインターネットサービスも、SINETの力で安定した通信を実現している。

校務系はゼロトラストの考え方を導入。これにより、教職員は、校務系、校務外部系、学習系のネットワークの使い分けを意識する必要がない点も特徴だ。鴻巣市独自の閉域SIM経由で、自宅からも校務支援システムを利用できる。

子供は自宅のWi―Fi経由で学習教材を活用できると共に、オフラインでも学べる環境を用意している。

■運用開始後のトラブルも迅速に解決

全校運用開始後、ある一定の帯域以上になるとボトルネックが発生した。

主な原因は、Windows関連のアップデートや教材コンテンツのダウンロード等であった。

そこで、共同研究における技術支援をしている事業者(IIJ)の協力により、集約型FW側で、トラフィックシェーピング(単位時間に送信できるデータ量に上限を設けて通信量を平準化する)を実施。さらに導入事業者(内田洋行)により、各種教材アプリの使用帯域を制限し、暫定的に対応。その後、通信事業者(KDDI)によりネットワークを再設計した。迅速に対応できたのは、「集約型ネットワーク構成」のメリットの1つであると感じている。

■ユーザの努力も必要

ローカルブレイクアウト構成という選択肢もあったが、その場合ベストエフォート回線の契約となるため、品質改善を行うのが難しい。また、ローカルブレイクアウトであっても物理的な回線は局舎等で集約されるので、結局のところ集約されることとなるというのだ。それならば、自治体ごとに集約・管理し、管理下とできる集約型構成の方がトラブル時に改善しやすいと考えた。セキュリティ品質や管理も一元化できる。

子供たちの学びを止めないためには、事業者任せとせずに、教育委員会側が主体的に動く必要がある。今回のGIGAスクール構想では、端末・校内LAN・アクセス回線・WAN等の事業者がそれぞれ異なることが多い。そのため、全体設計はもちろん、トラブル発生時の切り分け等は、教育委員会でしかできないからだ。

ネットワーク帯域は限りある資源。無尽蔵に使えるものではない。効率的で効果的な運用を引き続き検討していく必要がある。

■授業活用をWGで検討

インフラ構築が完了し、教育現場での有効活用を進めていくのが学校支援課のミッションだ。

そこで「鴻巣市ICT教育『のすっ子未来計画』」に基づき、2020年度からワーキンググループで協議。パイロット校5校ではアドバイザーに指導を受けながら、端末の持ち帰りによる運用も含めた日常的な活用を行った。チェックリストも提示。保護者や児童生徒にはテクノロジーについての同意書等で本市の方針を周知した。

端末貸与式に始まり、電子黒板に教材コンテンツを提示する活用からスタート。プログラミング学習や読書タイムでの活用、端末を持ち帰ってTeamsでつながる、デジタルシティズンシップ教育などに数か月間で取り組んだ。

この取組を全校に広げるため、「のすっ子未来通信」を発行して市内全教職員で共有。ICT支援員は授業活用の事例をまとめ、資料としてクラウド上で閲覧できるようにした。パイロット校の運用を通して「鴻巣市ICT活用に関わる導入パッケージ資料」を作成して全校に送付すると共にクラウド上に掲載。全校運用開始後は、各校の取組を鴻巣市広報誌の特集号で掲載。導入事業者と定期的な情報交換を行い、今後の方策を検討すると共に、協力して「活用ステップガイドbook」を作成。各方面の協力を得て広げている。

市教委主催の研修会も実施。市研究会との共同授業研究会も行うために情報交換を行っている。

■年2回の調査で検証

さらに、今後の取組につなげるための実態調査をアドバイザー及び導入事業者との連携により年2回行ってデータ分析と検証を行う。調査内容は、ICT活用技能等、粘り強さ、デジタルシティズンシップ等だ。

全校集会では、市教委が全校児童に対して、端末貸与の理由と目的を講話した。教員対象に端末導入の目的等を話すことは多いが、児童生徒に直接語りかけるのは初の取組。今後も、各校での取組を市内に広げ、子供たちがICT環境を文房具のように使える姿を「チームこうのす」で目指す。【講師】鴻巣市教育委員会教育総務課主任・新井亮裕氏/学校支援課副参事・若林朋子氏

【第78回教育委員会対象セミナー・東京:2021年7月5日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年8月2日号掲載

  1. 守谷市教育委員会教育指導課指導主事・嶋田知成氏
  2. 放送大学客員准教授/杉並区教育委員会済美教育センター・倉澤昭氏
  3. 鴻巣市教育委員会教育総務課主任・新井亮裕氏/学校支援課副参事・若林朋子氏
  4. 川崎市立川崎高等学校附属中学校教諭・藤澤泰行氏
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