情報活用能力の育成が次の学習指導要領ではさらに重視される方向だ。
5月12日に開催された中央教育審議会教育課程部会教育課程企画特別部会(主査=貞広斎子・千葉大学副学長・教育学部教授)では、情報活用能力を抜本的に向上させるための小学校、中学校、高等学校の具体的な取組の方向性について討議した。
情報活用能力の抜本的な向上に向けた検討のポイントは大きく3つ。
まず、小学校において体系的に情報活用能力を育成する時間を設置すること。次に、中学校技術・家庭(技術分野)の見直し。3つめが探究的な学びと情報活用能力育成の連携だ。
情報活用能力育成のための体系的な時間設定については現在、研究開発学校としては、宮城教育大学附属小学校(2023~26年度)が「小学校情報科」を創設。
また春日井市立出川小学校・高森台中学校(2022~25年度)では「情報の時間」を創設して情報活用能力の育成に取り組んでいる。
系統的に学ぶことで各教科の学びの質の深まりが見られるなどの明らかな成果を次の学習指導要領に活かす。その際には新たな教科ではなく総合的な学習の時間に盛り込む方向だ。
これにより、地域や学校差の解決や、探究的な学習の質の向上に役立つ情報活用能力の育成に向けて連携などを図る考えだ。
現行の学習指導要領では「情報活用能力の育成」が資質・基盤として初めて示され、小学校においてプログラミング教育を各教科で取り組むこととなっている。
体系的な時間の設置の必要性は当時から指摘されていたものの当時はプログラミング的思考の育成という枠組みであったこともあり実現しなかった。それが次の学習指導要領では総合的な学習の時間の中で実現することになりそうだ。
現行の学習指導要領では小学校においてプログラミング教育を必修化。高等学校では「情報Ⅰ」を必修化した。
これに対して中学校では、これまでも取り組んできた中学校技術・家庭(技術分野)に設置されている「D情報の技術」において定められている指導項目とともに、プログラミング教育等の一層の充実を図る方向で進んだものの、この間、先端技術は大きく飛躍。情報技術の理解を伴う情報活用能力の育成のみでは収まりきらない新たな可能性や課題も生じている。
そこで、次の学習指導要領では中学校技術・家庭(技術分野)の一層の見直しを図ることが検討されている。
その際は現状の科目を一新するのではなく、「D情報の技術」の充実に加え他の3領域(A材料と加工、B生物育成、Cエネルギー変換)でデジタル技術との関連を図ることを検討する。
3Dプリンターや3Dモデリング、IoTセンサーなどの内容をA~Cにおいても充実。生成AIやより高度化しているセキュリティ等についてはDで充実し、A~Cの基盤と位置付ける方向になりそうだ。
なお、本取組事例として沖縄県技術・家庭科研究会・中頭地区の沖縄市立美東中学校とうるま市立具志川中学校が報告。同校ではデジタル技術とA~Cを結び付けた授業を工夫。3年生ではIoT開発マイコンを活用して地域防災の課題解決に取り組んでいる。
さらに技術の進展の速さに対応するための在り方も検討。学習指導要領解説の一部改訂を適時行うことも検討する。
また、「技術・家庭」をそれぞれ独立させることも検討。分野としての目標が異なる両分野を同じ教科として評定している現状は合理的とは言いがたく別教科として位置づけることが適切であるという指摘もある。家庭科についてもデジタル技術の活用は想定されることから、議論の行方に注目する必要がある。
探究的な学びと情報活用能力育成の連携を具体化。探究的な学びの学習過程である情報の収集、整理、表現などの学習場面で機能するものとして情報活用能力を明確に位置づける方向だ。
現状、探究的な学びは様々な学校で充実が図られているものの、情報活用能力や情報技術を活かしている学校、そうではない学校がある。
そこで、探究のプロセスを自律的に駆動するために必要なものとして、情報活用能力の学習を位置付けることを検討する。
委員からは「GIGA端末は個別最適な学びを充実させる。探究的な学びも個別最適な学びの延長にあり、この充実に資する道筋を示したい」という意見があった。
なお「質の高い探究の在り方」を議題とする5月22日の同会議では本テーマについて集中的に検討する。5月21日12時まで、オンラインでの傍聴申込みを受け付け。
詳細:教育課程部会 教育課程企画特別部会(第8回)の開催について
【日時】10月31日(金)
【会場】出川小学校・高森台中学校
※宮城教育大学附属小学校は5月中に同校Webに掲載予定
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年5月19日号