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教育ICT

個人探究の「過程」を記録、「評価」「支援」の質を高める

2026年3月17日

東北学院大学稲垣研究室は2月23日、「デジタルツインで実現!探究する学びの評価を新しくするワークショップ」を都内で開催。探究的な学びにおけるデータ活用について「情報収集の可視化」「アセスメントと学習過程の組み合わせ」「学習成果のオープンバッジ化」に注目し、探究の質や支援の向上、新たな評価の視点について提案した。

「デジタルツイン」からデータ分析

「デジタルツイン」とは、学習者や教育プロセスなどの実世界をリアルタイムにデータ化すること。データ化により、どのような支援や改善につながるのかを明らかにするため、東北学院大学稲垣研究室では、デジタルツイン化の手法及び得られたデータの探究的な学びにおける活用について研究している(※)。

その一例として、探究における情報収集の質や成果の向上と評価に役立てるためWebアプリ「RefNavi(レフナビ)」を開発・検証している。この日はその意義と有効性を参加者と共有した。

RefNaviは参考文献データの記録と可視化に特化しており、研究開発期間である2028年3月までは無償利用できる。その後も維持する方向で検討中(https://www.refnavi.net/)。

(※戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「ポストコロナ時代の学び方・働き方を実現するプラットフォームの構築 人口減少を機にひらく未来社会」サブ課題A 京都大学・緒方チームのサブプロジェクト)

「探究」のデータ活用でフィードバックの質を改善

稲垣忠・東北学院大学教授

次期学習指導要領に向けた中教審の「論点整理」には、「好きを育み得意を伸ばす」方法の一つとして総合的な学習(探究)の時間に「個人探究」が記載されている。本ワークショップではさまざまな校種の個人探究の見取りや支援をこのような方法で進めてはどうかという提案をしたい。

探究的な学びに活かすためのデータは、デジタルドリルにより得られるデータとは異なる。児童生徒によって使用するアプリが多様なため、ダッシュボードの構築も容易ではない。

また、デジタルツイン化によりAIを活用しやすくなるが、探究的な学びにおいてお勧めできない活用もある。例えば「失敗しないためのシミュレーション」だ。失敗も試行錯誤もない探究は探究とはいえないだろう。

探究的な学びを評価する際によく用いられるものは、学習過程全体のポートフォリオ、場面ごとのルーブリック、パフォーマンス評価である。

本研究ではそれらに加えて、教育データとして活動履歴の可視化、アセスメントとの組み合わせ、学習成果のオープンバッジ化の3つの試みを取り入れることで支援しやすくすることや、評価の価値を高めることを目指して研究している。

3つの試みの一つである探究的な学びにおける活動履歴データの可視化は「フィードバックのタイミングと質の改善」に期待できると考え、探究活動の過程を可視化して実際の活動に活かすことを想定している。

支援しにくい「探究の過程」をRefNaviで見える化

庭井史絵・青山学院大学准教授

SIP事業の一環として開発されたWebアプリ「RefNavi」は、自分が参照した文献やWebのURL等を記録することで、児童生徒の情報収集状況や傾向、変化を把握し、支援や気付きにつなげるものだ。書籍に関してはISBNコード入力により必要情報が一括で反映される。庭井史絵准教授はRefNavi活用で期待できる効果について説明した。

・◇・◇・

司書教諭として18年間勤める間、生徒たちの情報収集場面をたくさん見てきた。情報収集は探究の過程に必須である。しかし、成果物が出てきて初めて「実はうまくできていなかった、不十分であった」とわかる、ということが起こっていた。例えば、入手しやすい情報が中心で多様なメディアを利用できていない、目的に応じた資料が選べていない、参照した資料が浅いなどだ。学校図書館に来て「さあ調べましょう」と言った後は何の支援も見られない授業もあった。

現行の学習指導要領でも「さまざまなメディアに触れる(総合)」、「資料を使い分ける(国語)」、「成長段階に応じた資料を活用する(社会)」と記されている。しかし情報収集段階での支援は簡単ではない。RefNaviを活用することで情報収集のプロセスが見える化できれば素晴らしいと考えたのが本プロジェクト参加のきっかけだ。

情報収集段階の支援のためには、最後に参考文献リストをチェックしても遅い。しかしRefNaviにより同時進行で児童生徒自身が情報収集の様子を記録し、それを教員が確認することにより「多様なメディアに触れているか」「目的に応じた資料を情報源としているか」「探究の進行段階に応じた資料を選択しているのか」について把握することができる。書籍といっても図鑑や辞典、雑誌やコミックなどさまざまであるが、その傾向も見える化される。探究の進行に伴いどのような資料が多くなっていくのかもわかるため、探究の過程の評価につなげることができるだろう。

情報収集段階の「記録」と過程の見取りを通して支援

横井麻衣子・青翔開智中学校・高等学校司書

開校12年目である青翔開智中学校・高等学校では、開校当初から図書館を中心とした校舎設計で、全学年で週2時限実施する「総合的な学習の時間」を図書館が支援している。同校の探究について横井麻衣子司書が報告した。

・◇・◇・

青翔開智中学校・高等学校ではRefNaviをド入。教員側はRefNaviのメディア別グラフや時系列で情報の偏りや進捗を確認して、生徒の個別の情報収集の様子がわかるようになった

個人が参照したメディアを分類。時系列で確認できる

高校1年生はチームで、2年生は個人で探究を行っている。調査結果によると、課題研究のための情報収集について困りごとを抱えている生徒がいた。例えば「参考文献の書き方が不明」「いつ参考にしたのかを忘れた」「URLを記録しているが何についての情報なのか一つひとつ開かないとわからず時間がかかる」など文献の管理に着手しながらもやり遂げられず、途中で散逸してしまうなどだ。このほか情報源に偏りがある、もしくは古い、参考文献の記録方法が不統一などの課題もあった。また、よい情報と出会えた生徒もいるが、生徒同士での共有はできていなかった。

そこで2025年4月、2年の個人探究にRefNaviを導入。探究についての基本姿勢が身についているため、生徒は説明を聞くだけで「とても便利、使いやすい」と感じ、すぐに定着。自分なりにタグ付けして情報整理を工夫する生徒や、「総合的な探究の時間」以外の教科学習でも自主的にRefNaviを用いて資料を整理する生徒も出てきた。

教員側はRefNaviのメディア別グラフや時系列で情報の偏りや進捗を確認することで、生徒の個別の情報収集の様子がわかるようになった。

例えば、美術に関する苦手意識をテーマとしたある生徒の情報源は論文や行政資料などバランスよく、専門的な資料にもあたっていた。入口は美術だったが後半では社会科学の文献にもあたっていた。

博物館におけるデジタル展示物をテーマとした生徒は、50件以上と多くの情報にあたっていた。論文参照が多く、英語の論文もあった。最初は自然科学系の情報を参照していたが次第に博物館学の書籍なども参照していく過程を見取ることができ、情報収集の状況に応じたレファレンスを行うことができた。

本校ではジャパンナレッジSchool(辞書・事典、参考書、新書、統計資料など全900冊以上を一括検索/閲覧できるインターネットサービス)を利用している。RefNaviとジャパンナレッジSchoolが連携したことで、探究の初期段階の調査をより信ぴょう性の高い情報源で始めることができるようになった。

現在はタグ付け整理は個人内でとどまっているが、今後は、グループ全員で文献を共有することができるグループタグ機能や、ユーザごとに共有範囲を指定できるカスタムタグ機能などを上手く利用して、教員と生徒、生徒同士との共有ができればよいと考えている。さらに時系列の伸びや情報源の偏りが探究の質となんらかの関連や相関があるのかについて注目していきたい。

アンケートによると、登録が楽になり、記録する習慣がつき、調べた情報を記録するのが楽しくなったという声も上がっている。文献ごとにメモを残し、それをふり返ることも便利な機能として使っているようだ。最初は一つの種類の情報源を中心に参照していた生徒も、書籍、論文、Webサイト、行政資料など多様な情報源にあたることに意識を向けられる。外部の方に質問する際にも「ここまで調べたがこういうところが分からない」という聞き方ができるようになっている。

次年度は、高校1年からRefNaviを使った情報収集や整理を行う予定だ。

情報収集段階の「記録」と過程の見取りを通して支援

登本洋子・東京学芸大学准教授

登本洋子准教授はRefNaviの前身である参考文献管理アプリケーション「まいれふ」を開発し、機能を発展させたRefNaviを用いた情報収集過程の記録と可視の研究に取り組んでいる。

・◇・◇・

RefNaviはカメラ機能を用いてISBNコードを読み取ることで参考文献を管理できる

カメラ機能でISBNバーコードを読み込むことができる

探究的な学びをどう評価すれば良いのかという質問をよく受ける。評価は何のためにするのか。少なくとも探究的な学びにおいて評価は、より学びを深めることが目的である。どのような力を育てたいのかがまずなければ評価することはできない。

探究は、成果発表のみで評価されがちという傾向がある。しかしプロセスにおいても評価すべき点はある。一方で情報収集の過程は特に支援しにくいという声がある。まずこの部分を支援したい、どのような文献にどれくらいあたっているのかについて初期段階からリアルタイムにわかれば、助言がしやすいだろうと考えたことが現在のRefNaviにつながっている。

中高生が気軽に使えること、情報収集と整理の時間を短縮できることに配慮して開発している。まず、RefNaviにアクセスすることにより、さまざまなメディアが世の中にあることに気付くことができる。どのように情報収集を行うのかについてのリンク集や調べ方のヒントも掲載している。

多くの文献を参照するほど記録すべき量が増え、煩雑になっていく。そこでカメラ機能を用いてISBNコードを読み取ることで記録できるようにした。

どの箇所を引用したのかについての記載も意外と難しい。そこで入力例も示した。

教育課程部会 生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループでは発達段階に応じた探究の質の高まりについて議論されている。探究には「創作系」「研究系」「行動系」があるのではないかと整理された。しかしどの探究であっても情報収集が鍵になる。課題の質、プロセスの質、成果の質それぞれに情報収集が寄与すると考えている。

▼RefNavi=https://www.refnavi.net/index.php

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年3月16日号掲載

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