潰瘍性大腸炎やアトピー性皮膚炎など免疫介在性炎症性疾患の患者を対象に、絵画や彫刻などのアート作品を募集する「第5回 アッヴィ アートプロジェクト『PERSPECTIVES』」の受賞作品10点の発表および表彰式が、新薬の研究・開発などを行うアッヴィの主催により7月29日(火)、都内で行われた。
受賞者と審査員が一堂に記念撮影
「アッヴィ アートプロジェクト『PERSPECTIVES』」は「疾患と生きる。私の新たな可能性」をテーマに、患者が疾患と向き合いながら、自身のPERSPECTIVES(視点や考え方)を通じ、日々の想いや感じたことを絵画や彫刻、立体造形、陶芸、写真、書道、手芸などのアート作品で表現。
患者の創作活動から生まれた作品を通して、より多くの人に疾患について知ってもらうきっかけを作り、患者への理解につなげることを目的に実施されている。
「作品」と「作品に関わるエピソード」を2024年6月3日から12月13日にかけて募集したところ、今回は126点の応募が寄せられた。13人の審査員により、作品の表現力、オリジナリティ、メッセージ性、エピソードの内容などの観点から厳正なる審査を実施。
その結果、最優秀賞1点、優秀賞1点、審査員賞3点、佳作5点が選ばれた。受賞者および受賞作品は以下の通り。
<受賞者および受賞作品>
最優秀賞:市川孝子さん(悪性関節リウマチ・83歳)「紙飛行機の夢、もっと遠くへ」
優秀賞:古賀綾乃さん(潰瘍性大腸炎・6歳)「おなかのなかのうみ」
審査員賞:JAさん・仮名(潰瘍性大腸炎・17歳)「ぼくだけの光と影」
審査員賞:竹原優李さん(潰瘍性大腸炎・23歳)「希望のかたち」
審査員賞:岩本紗和さん(小児リウマチ、非感染性ぶどう膜炎、痛覚変調性疼痛・12歳)
「扉をあけて~羽とともに~」
佳作:小林侑里香さん(アトピー性皮膚炎・18歳)「『あなた』という私と『自分』という
私との狭間が連れていく場所、私はここで生きる」
佳作:久保田結さん(尋常性乾癬・17歳)「ふたつの心」
佳作:吉田美智さん(アトピー性皮膚炎・22歳)「ループ」
佳作:高崎信子さん(掌蹠膿疱症・60歳)「孤独なイエロー」
佳作:大槻陽翠さん(小児リウマチ・7歳)「わたしはくらげになりたい」
最優秀賞の市川さん
最優秀賞は市川孝子さん(83歳)の絵画作品「紙飛行機の夢、もっと遠くへ」が受賞。悪性関節リウマチの治療を続けている市川さんは「最初は患部をとってしまいたいと思うぐらい、つらい日々が続きました。ある日、息子の『紙飛行機でも飛ぼうとするよ』という言葉を聞き、私も変わろうと思いました。多くの人に支えられながら、しなやかに大空を舞うように、30年近く頑張ってきました」と語る。
優秀賞の古賀さん
優秀賞は古賀綾乃さん(6歳)の絵画作品「おなかのなかのうみ」。4歳で潰瘍性大腸炎を発症し、1年半ほど症状が安定せず外出もままならなかったが、現在は合う薬が見つかりほとんど病気を意識することなく生活が送れている。古賀さんは「たくさん水を飲んだら、おなかの火事が消えたらいいのにと考えて描きました。おなかが痛くなったりして大変だけれど、これからも頑張ります」と語った。
アート審査員の佐久間氏
アート審査員で美術家の佐久間あすか氏は「難病に負けない表現力が、すべての作品に備わっていました。自己免疫疾患という深刻な病気を抱えているとは思えないぐらい力強さと生命力と明るさを感じさせる作品が多かったことに驚きました。アートを通して強く前向きに表現するということは同じ病気で悩んでいる人に希望の光を与えて、勇気や意欲が沸いてくると思います」と総評した。
今回、受賞した10点の作品はアッヴィのWebサイトおよびバーチャル空間上に構築したオンライン美術館で鑑賞できる。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年8月11日号掲載