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教育ICT

加速度的に変化する時こそ「そもそも論」が重要 県域ドメインのメリットを活かす<鹿児島県教育庁 義務教育課 課長 加藤晴彦氏>

2022年11月7日
第91回教育委員会対象セミナー・鹿児島

第91回教育委員会対象セミナーを10月11日、鹿児島で開催。1人1台端末活用について鹿児島県教育庁、武雄市教育委員会、久留米市教育委員会、高森町教育委員会が報告。1人1台端末活用のアップデートについて山本朋弘教授が提案した。


鹿児島県教育庁 義務教育課 課長 加藤晴彦氏

鹿児島県教育庁 義務教育課 課長 加藤晴彦氏

2009年度から文部科学省に入省し、20214月に鹿児島県教育庁義務教育課に就任した加藤晴彦課長は、鹿児島県の教育情報化の現在と今後について報告した。

…◇…◇…

全校の約3割が離島 4割がへき地にある

鹿児島県は南北600キロメートルに及ぶ広大な県土に小学校488校、中学校205校、高等学校68校、特別支援学校16校が点在しており、約3割の学校が離島に、約4割の学校がへき地にある。全学級数に占める複式学級の割合は全国1位だ(2020年度)

そのため小規模校も多く、教職員の目が届きやすく対話や協働的な学びには取り組みやすいが、多様な価値観に触れる機会の少なさ、地理的特性による学習手段の制約等の課題があった。その課題の多くをICTの積極的な活用で解決すべきであると考えている。

格差が生じにくい調達を工夫

県土が広大なことから多様な文化があるため時代の変革期において格差が生じやすいという面がある。そこで11台端末配備の際は、共同調達で実施。追加パッケージに幅を持たせ、地方財政措置分についても同価格での提供を依頼。離島の輸送分を別料金としない等、地理的不利を生まないように配慮。ほぼすべての学校で11台端末環境が実現した。

県教委における教育情報化推進体制として「義務教育課」「高校教育課」の下に学校教育ICT教育班を設置。学校教育ICT推進班6名で、小・中・高の12年間を見通した教育の情報化を推進している。

生徒質問紙で課題を把握

次は活用である。

GIGAスクール構想とは、学習指導要領を実現するために必須の教育環境である。整備後、その目的は達成されているのか。2022年度全国学力・学習状況調査(生徒質問紙)によると、主体的な学びや個別最適な学び、対話的な学びにおいて本県の取組は、残念ながら全国平均を下回る傾向だ。革新的な授業が可能な環境であるにもかかわらず、これまでの授業にありがちな展開も見られる。授業支援ツールで児童生徒の意見集約を効率的に行うものの、その後、再び教員主導になる授業もある。本来であれば、児童生徒同士が意見や考えを吟味し合う過程に進むべきところである。

PC・タブレットなどのICT機器を授業でどの程度活用したか」等いくつかの項目について、対生徒と対学校で大きな差も見られる。教員は「やらせているつもり」だが、児童生徒は十分にやっているとは考えていないのである。

また、端末の持ち帰りについては、日常的に行っているのは小学校で約27%、中学校では約23%で、日常的な活用まではたどりついていない。

課題解決の肝は目的の理解と共有

この理由は何か。

これは、GIGAスクール構想の目的を共有・理解できていないまま日々の授業実践に追われているのではないか。

教育とは、子供が未来社会で夢を実現したり活躍したりできるようにするためのものである。にもかかわらず、未来社会でどんな力が必要なのか、そのためにどのような教育が必要なのかを考える時間がないのではないか。

単元を終わらせることが目的ではなく、単元を通して子供にどんな力を身に付けさせたいのか、そのためには何をどのように学ばせるのか。急激かつ加速度的に変化する時代こそ「そもそも」論の確立が重要だ。

この「そもそも」をまとめたものが学習指導要領であり、その解説書的な位置づけが「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~(答申)(20213)である。

学びの転換の必要性について、しっかりと対話・共有することが実現の肝であり、ゴールが見えないまま進めることは本末転倒である。そこで今年度はあらゆる研修会で「そもそも論」を中心に討議を進めている。

ICT活用推進ティーチャー認定講習を企画

本県では遠隔授業は離島やへき地校を中心に早期から着手し、定着している。今後は各地区の教職員を対象とした研修「地区ICT活用推進講座」を11月以降、実施する。

また、鹿児島県ICT活用推進ティーチャー認定講習を鹿児島市学校ICT推進センターと連携し、オンラインで開催することを検討中である。

みらいの学び推進事業では先進モデル校を指定。3年後の全国学力・学習状況調査において4教科ともに全国平均を超えることを目指す。

GIGAスクール運営支援チームも設置して学校や教育委員会等を支援する。また、隔月を目安に「KagoGIGAミーティング」をオンラインで開催。教職員と管理職、指導主事等が情報交流を行っている。

常時書き込み質問し合えるチャットルームKagoGIGA情報交流室もMicrosoftTeams上に設置した。

鹿児島みらいのデジタル人材育成推進事業では、県内のデジタル人材を活用した授業を行う。現在推進校を募集中だ。

今後は教育データ利活用を視野に入れ、県域教育用ドメインのメリットを生かして小中高等学校12年間のデータ蓄積・活用方法を検討する。

現在、国から「情報モラル教育推進事業」を受託しており、中種子町で実践中だ。今後は、禁止に偏りがちな情報モラル教育ではなく、ポジティブに情報やデジタルツールを利用・選択できる力を育むことが重要だ。

教育DXの第3フェーズに進み、全ての子供達の可能性を最大限まで引き出す、真の意味での個別最適化を推進するため、県全体で教育環境の質の向上に取り組む。

【第91回教育委員会対象セミナー・鹿児島:2022年10月11日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載

 

  1. 鹿児島県教育庁 義務教育課 課長 加藤晴彦氏
  2. 中村学園大学教育学部 教授 山本朋弘氏
  3. 武雄市教育委員会 学校教育課 新たな学校づくり 教育監 徳永貞康氏
  4. 高森町教育委員会 教育推進員 古庄泰則氏
  5. 久留米市教育委員会 教育ICT推進課兼教育センター 指導主事 関和浩氏
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