GIGA第2期の端末更新を迎える中、全国ICT教育首長協議会は「全国ICT教育首長サミット」を1月17日に都内で開催。ICT教育を先進的に展開している自治体を表彰する「日本ICT教育アワード」で13自治体が表彰され、そのうち11自治体が取組内容を報告した。
文部科学大臣賞は愛知県春日井市、総務大臣賞は茨城県つくば市、経済産業大臣賞は富山県朝日町、デジタル大臣賞は大阪府枚方市が受賞した。
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文部科学大臣賞 愛知県春日井市
春日井市では文科省の研究開発学校として、小学校及び中学校においてVUCAの時代に自ら学ぶ児童生徒の情報活用能力育成のあり方について研究・実践。
各学年35時間の「情報の時間」を設け、体系的な情報活用能力の育成のための小中一貫カリキュラムに取り組むとともに市長、教育長、教育委員会、校長、教員が連携して児童生徒と教員のウェルビーイングの向上を図っている。
教員研修では1人1台端末とクラウドを活用して授業をイメージした体験型で実施。研修でクラウドの活用方法と学習過程に沿った学び方を体験することで、すぐに授業に活かすことができる。「体験×活かす」研修は内容の習得と体験を同時に行うことができ、自ら学び続ける教員を目指すとともに、時間短縮にもつながり教員の働き方改革にも貢献できる。校長研修も同様に模擬授業を体験する。
「体験×活かす」教員研修(春日井市発表資料より)
校務や研修でクラウドを使った授業イメージを体験することで子供主体の学びへと授業観の転換が図られ、授業での活用が進んでいる。授業、校務、研修は相似形であると考えて一体的に進めている。
総務大臣賞 茨城県つくば市
つくば市では充実した探究学習を支えるために次の取組を展開している。
探究学習を支える7つの取組(つくば市発表資料より①)
今年度は市内全校で生成AIと向き合う授業を実施。使ってみる経験が大切だと考えて進めている。
増加する不登校児童生徒の個別支援でもICTが重要な役割を果たしている。
全校に校内フリースクールを設置し、教員免許をもつ支援員と免許不要の補助員を配置するなど個に寄り添った支援を実施。支援員には校務用端末とアカウントを付与し、担任と支援員が連携してオンライン授業を進めている。
全校に校内フリースクールを設置(つくば市発表資料より②)
経済産業大臣賞 富山県朝日町
朝日町は生成AIパイロット校として、生成AIを活用した業務改善、授業改善、情報活用能力の育成に向けて富山大学、民間企業、つくば市教育委員会の産官学で取組を進めてきた。
文科省の示すガイドラインに沿って町独自の指針を作成。
教員は校務でChatGPTやCopilotを利用。生成AIにテスト問題(児童生徒の指導)、あいさつ文(学校運営)、合唱コンクールの歌唱指導の計画(学校行事・部活動)、保護者へのおたより(外部対応)でたたき台を作成させ業務の効率化を図っている。
文科省の示すガイドラインに沿って町独自の指針を作成(朝日町発表資料より)
授業でもガイドラインと整合性をもたせ、4つのステップで活用。朝日中学校の英語科の授業では生成AIを活用して「話す力」を育成。公開授業ではバーチャル版ペッパーとChatGPTを連携させ、ペッパーと生徒が1対1で英会話に取り組んだ。会話の内容や速度は生徒が自分で調整でき、自分の力に応じて自己調整しながら学習を進めることができた。また、生成AIを協働学習のパートナーの1人として活用することで学びの広がりや深まりが見られた。
本町は2024年に町制施行70周年を迎えることから、「みんなでつくる朝日町100年年表」という企画を実施。町民から過去70年の写真を集め、画像生成AIで未来の30年を描き、計100年の年表を作成した。この授業は年齢制限のない画像生成AI(Adobe Firefly)を使用し、小学校5・6年生を対象に2日間で実施。児童は修正を繰り返しながら、自分が思い描く未来の町の画像を生成していた。このほか俳句作りや子供新聞づくりなど、小学校でも生成AIを組み込みながら教育効果が高まるよう研究を進めているところだ。
生成AIとのかかわりも盛り込んだ町独自の情報活用能力育成の体系表を作成。これを基に、教員が指導しやすいよう、学年ごとの情報チェックシートと学習計画表も作成している。
学年ごとの情報チェックシートと学習計画表(朝日町発表資料より)