文化学園大学杉並中学・高等学校(東京都杉並区)は2026年度より、新コース「イノベーションリーダーズコース」を設置する予定で、現在認可申請中だ。本コース設置に先立ち2025年5月、同校の中学校3年生が新コースの授業を体験。体験授業は年度内に5回実施する予定。
同校はこれまでもグローバル教育や探究的な学びに注力してきており、その成果と実績を基に新たにイノベーションリーダーズコースを設置する。その名の通り、イノベーションリーダーの育成を目指すコースだ。「基礎科目」「学校設定科目」「iプロジェクト」の3本柱で進める。
基礎科目は、従来の教科学習をプロジェクト型で学び、教養と探究スキルを磨くことを目的とする。
学校設定科目は、同校に併設された研究期間「BSICE」(後述)と連携し、より新規性のあるプロジェクトを積極的に導入。
iプロジェクトは個人探究を中心に進めコンピテンシーの育成を図る。学年が上がるごとに学校設定科目とiプロジェクトの時間をより多く確保するため、教育課程特例校の申請も行う。進路については総合型・推薦型10割を想定している。
なお同コースのほか、同校には「ダブルディプロマコース」「特進コース」「進学コース」がある。
この日行われた体験授業は、BASICで動くこどもパソコン「IchigoJam」開発者である福野泰介氏(公益財団法人IchigoJam財団代表理事)が講師を務め、生徒ははんだ付けから挑戦。LED点灯のオン・オフのプログラミングなどを体験した。
左から教育イノベーションセンター長の染谷氏、副センター長の上松氏
BSICE(Bunka Suginami Inovation Center for Education)は、学校現場を研究フィールドとして様々なパートナーとの共創を目指す研究機関だ。
教育イノベーションセンター長の染谷昌亮氏に設置の経緯と目的を聞いた。
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もともとは教員としてSTEAM教育や探究活動を中心に企業と連携したプログラムを推進してきました。
生徒たちの変容や成長が顕著だったことから学校全体の方針に据えようと2022年、次世代教育開発部を設置し、大学生と協働して社会課題探究プログラムや企業・農家等と連携したオーガニック給食の考案、課外活動団体と連携したSTEAMプロジェクトなどを展開してきました。
この取組を校内だけではなく社会全体に広げようと立ち上げたのがBSICEです。
BSICEには「プログラム開発部門」「教員養成・支援部門」「教育効果測定部門」を設置。プログラム開発部門では、企業や大学、自治体やNPO等と連携して専門的な知識や技術を取り入れた学びを展開するプログラムを開発し、本校のイノベーションリーダーズコースを実証フィールドとします。
これらの取組のいくつかは既に次世代教育開発部で着手しており、それをさらに発展していく考えです。
教員養成・支援部門は、オープンイノベーションの知見をもつ教員養成が目標です。本校が提携するカナダのBC州ではPBLやSEL(社会性(Social)、情動(Emotional)、学び(Learning))が定着しており、BC州の教員免許をもつ教員と授業デザインを研究。研修プログラムの開発も想定しています。
AIを利用した教職員のメンタルヘルスサポート体制の構築にも取り組みます。
教育効果測定部門は新しい取組で、これらの実践の効果をわかりやすい形で提供・発信します。教育効果を測定する特別教室の設置も準備中です。
現在、BSICEではそれぞれの部門において共に活動するパートナーを募集中で、第一弾を7月に公表予定です。
大きな挑戦ではありますが、学校教育全体に幅広く貢献していきたいと考えています。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年6月16日号