7月30日、「教育×生成AIシンポジウム-生成AI時代、学びはどこへ向かうのか-」が東京大学およびオンラインで開催され、会場に1100人、オンラインで3000人以上が参加した。
主催は生成AIの活用を通じた教育課題の解決に向けた教育DXの加速事業 コンソーシアム事務局。元日本テレビアナウンサーで姫路市総合教育監の加藤聡氏と、哲学者で探究学習教材を開発している㈱バトンの田村正資氏がモデレータを務めた。
矢野和彦・文部科学審議官は「参加者数の多さに生成AIに対する関心の高さを感じる。現在、高校改革を含む大学、大学院などの人材育成システムの改革に政府をあげて取り組んでいる。中教審では次期学習指導要領の重要な柱の一つに情報活用能力の抜本的向上を挙げている。生成AIは19世紀の産業革命以上の変革をもたらすだろう。生成AIの可能性とリスクの双方を理解して適切に活用することが重要であると考えている」とあいさつした。
浅原寛子・初等中等教育局参事官(デジタル学習基盤担当)は、現在の取組を整理。
「情報活用能力の抜本的向上については、2040年代の社会を想定した必要な資質能力を見据え、AIそのものを学ぶこと、AIを活用して学ぶことにより抜本的向上を図ることが検討されている。情報活用能力は、各教科を駆動させる基盤である。生成AIパイロット校も478校に広がった。教育活用、校務活用に加えて教育分野に特化した生成AIの実証事業も進めている。この実践を参考にしながら、初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドラインの改訂を今年度中に予定している。さらにこの結果を踏まえ学校現場で安全にAIを活用できるような環境整備も進める」と話した。
アンドレアス・シュライヒャー・OECD教育・スキル局長
数年前、社会人になり役立っていると感じるスキルと不足を感じるスキルについて調査した。それによると、過去の成功に必要であったスキルが今も必要であるとは限らない。
AIの能力は予想より速く進化している。多くの分野で人よりうまくやり遂げることができるものの、現時点では「近道を提供する部分」に特に力を発揮している。しかし概念的な理解は難しく、クリエイティブな活用はまだ少ない。
2024年度時点の調査によると教育におけるAI活用は、AIについて学ぶ機会がある国の方が積極的である。国により状況が異なるが、日本とフランスは慎重な国に入る。
AIには汎用AIと教育用AIがある。この区分は重要だ。
汎用AIツールを使うときは教育的意図が必要である。コンテンツを消費するだけでは学びにはつながらないためだ。学びとなるのは、知的レベル認識レベルで関与して取り組むことから広がる。
米国の事例では、汎用生成AIを用いてエッセイを書いた学生に、何について書いたのかを聞いたところ、約8割が記憶していなかった。一方で、視点拡大のためにAIを活用するように伝えると、深まりのあるより良いエッセイを書くことができた。
インドネシアの事例では、5週間のやりとりで英語能力が向上した。特に中級および上級レベルの生徒において論理的なスピーチ能力が高まった。
生成AIツールには、代替や補完、拡張などさまざまな役割が考えられる。
間違いなく役立つのは、フィードバックの大規模展開だろう。
もう一つ明らかな点が、教員の生産性向上に寄与できる可能性だ。
一方で信頼性は限定的なため、AIと教員を組み合わせたハイブリッドモデルが考えられる。
教員の協力により開発された教育特化型のAIツールは安全性と共に、個別指導と公平性の質向上を助けるというエビデンスが示されている。有害ではないことを明らかにし、信頼できる教育特化型AIツールを実現するべきである。
なお、2029年に実施予定のPISA(学習到達度調査)において、新たな評価領域として「メディア・AIリテラシー(MAIL=Media and AI Literacy)」の計測を予定している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年8月24日号掲載