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図書館

教育の地域間格差解消に向けて ~「AI学校司書」で目指すこと~京都産業大と自治体による共同研究

2025年10月21日

学校図書館でAIを活用することで、司書教諭や学校司書が不在の場合でも、毎日の児童生徒の主体的な学びや教員の授業実践のための資料提供が可能になる。その実現に向け、京都産業大学文化学部国際文化学科・大平睦美教授は学校図書館の資料等の活用をデータベース化し、学校間共有の仕組みの構築に取り組む。今年7月には日本事務器㈱と小中学校の学校図書館に対する遠隔レファレンス(AI学校司書)の共同研究に関する契約を締結。学校間や地域間の教育格差の解消を目指している。

遠隔レファレンスにより人的配置の課題解決を図る

大平睦美教授

大平教授は、これまで学校図書館の情報化によって、学校間・地域間の教育格差の解消を図る研究を重ねてきた。

特に小規模校では、学校図書館の課題の一つである人的配置において、司書教諭や学校司書が常駐していないケースが多い。このため小規模校を中心に、児童生徒の教室外での学習活動の停滞、探究学習などで児童生徒が主体的に学ぶための資料の不足、教員が図書資料や教材の活用をしたい場合にも相談する相手がいない、といった状況が続いている。

大平教授は「学校図書館法によって、すべての学校に学校図書館が存在するにも関わらず、人の配置がないために授業で利用できないとすれば、教育の機会均等が失われてしまう」とする。

大平教授が研究する遠隔レファレンスによる「AI学校司書」は、学校図書館を通じた教育の機会均等を目指しており、学校司書が不在の場合でも、児童生徒や教員に対して、適切な資料を提供できる仕組みの実現を図るものだ。

情報を知識に変えるため多様な資料の比較検討を

遠隔レファレンスは、学校図書館の「学習センター」「情報センター」の機能を拡充し、多様な資料を活用した調べる学習や探究学習に取り組む教員の授業支援にフォーカスしている。

大平教授は「図書館は情報を提供する場だが、情報は知識ではない。情報を知識に変えるためには、多様な情報を収集し、比較検討することが必要」とする。現場で活用できる実践的な資料の提供が求められる。

そこで学校図書館が備える資料や教材が、自発的な学習や授業でどのように活用されたのか、実態をデータベース化し、オンラインで共有する仕組みを構築することを目指している。データベースの共有によって、学校司書が教材選択にあたって参照できる基準(スタンダード)を作る。さらに教員と司書教諭、学校司書が共有、リアルタイムで追跡・確認ができるようになれば、教員の教材研究や授業実践に役立つほか、その多くが一人職である学校司書の支援にもつながる。

都市部・山間部の自治体の課題解決に向けて実証実験

授業で使用した資料についてアプリで記録。5段階による本の評価、資料の使用者(児童生徒/教員)、学年、教科、単元名と使用方法、感想など

現在、同学と、千葉県千葉市、和歌山県日高郡日高川町それぞれにおいて共同研究を行い、主に教科学習に使用した学校図書館の資料について、教員が評価やレビューを記録し、データの蓄積を行っている。記録に際しては日本事務器(以下、NJC)が提供する書評用アプリ「BOOK MARRY(ブックマリー)」を活用している。

まず2021年9月より、千葉市で実証研究を開始した。小学校2校、中学校1校の協力校にアプリの入った教員用iPadを提供。協力校以外の教員とのやりとりなどを千葉市中央図書館がとりまとめ、同市公民館図書室も協力し、教員は図書資料を活用した際にレビューを記録するほか、教員と、大平教授、NJCと丁寧にやりとりし、使いやすいUIの開発に取り組んでいる。

2024年8月からは日高川町でも実証研究を開始。同町は小学校4校・中学校5校が小規模校かつ山間部にあり、学校司書の移動に時間がかかり、各校での在室時間も短くならざるを得ないため、同研究による遠隔レファレンスに期待が寄せられる。実証研究は教育委員会が主導し、学校単位のアカウントを用意。多くの教員が自主的に個人のスマートフォンにアプリを入れて、千葉市同様データの蓄積に協力している。

従来の情報検索とは異なる実践的な資料提供へ

2つの市町の協力のもと、2025年10月現在4000件を越えるレビューデータが蓄積されている。これに加え、現在AIに学習指導要領・教科書データ、各教員が作成した教材データ、出版・流通している書籍データ等を読み込ませている。これらをAIが学習することで、従来の情報検索とは異なり、より実践的で深度のある資料提供が可能となる。

NJC渡辺氏(右)と、同企画部・池下綾乃氏(左)

今年7月には京都産業大学とNJCが学校図書館に対する遠隔レファレンスの共同研究に関する契約を締結。これまでの大平教授と千葉市、日高川町、NJCの学校図書館支援の取組をさらに大きく展開していく。NJC事業戦略本部バーチカルソリューション企画部図書館・文教ソリューション担当 チーフマーケッターの渡辺哲成氏は「本研究を技術面でサポートし、社会的な貢献につなげたい」と話す。

NJCとの共同研究の期間は2027年までの3年間の予定。期間内に、地域限定・科目限定での「教育現場の集合知+AI」(=AI学校司書)による遠隔レファレンスの実現を図る。

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年10月20日号掲載

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