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教育旅行

東北の学び情報を発信 歴史や自然・災害切り口に~東北教育旅行のオンラインセミナー研修

2023年2月20日

(一社)東北観光推進機構は「震災・防災・減災学習」をはじめとする東北6県と新潟県の学びの魅力を、学校関係者などに発信する「東北教育旅行オンラインセミナー~“こころ”と“いのち”の教育旅行・東北まなび旅~」を12月26日に開催。歴史・文化、自然・環境・SDGs、震災・防災・減災学習等の切り口からプログラムを紹介した。さらに都内中学校の事例発表や語り部の特別講演など充実したセミナーとなった。

 

同機構からは「だからこそ東北で学ぶ」と題し、東北の教育旅行プログラムなどを紹介。東北6+新潟の学びの要素としてまず「歴史・文化」が挙げられた。縄文時代の「ムラ」を体験できる青森県の三内丸山遺跡、奥州藤原氏の歴史が偲ばれる岩手県の平泉、平成に至るまで金が産出された新潟県の佐渡金山跡など古くからの歴史が根付いている。

「自然・環境・SDGs」関連では、山形県の加茂水族館での海洋問題研究や宮城県の蔵王での樹氷観察など東北の豊かな自然を切り口とした様々な学習素材がある。また、冬の東北は秋田県の「たざわ湖スキー場」や福島県の「裏磐梯猫魔スキー場」など、すべての県で学校団体の受入れの経験が豊富で、収容能力に優れたスキー場があるので、スキー修学旅行も行える。

「震災・防災・減災学習」については、岩手・宮城・福島を中心に被災した建物である震災遺構を見ることができるほか、被災した人が語り部となって震災時の体験を伝えている。さらに、東北や新潟では豊かな自然のもと「農山漁村・民泊」を受け入れている。

同機構が運営する東北修学旅行・教育旅行サイト「東北まなび旅」には修学旅行モデルコース148コース掲載。さらに「震災遺構・語り部リスト」として全153件を登録しているほか、「東北教育旅行イメージ動画」も配信している。

東北まなび旅=https://www.tohokukanko.jp/manabi/

【事例発表】
東京都練馬区立開進第二中学校 牧野英一校長

農水産業体験を通して豊かな自然に触れる

農水産業体験を通して豊かな自然に触れる

民泊農家とのお別れに涙する生徒たち

民泊農家とのお別れに涙する生徒たち

開進第二中学校では2003年から東北への修学旅行を実施。2022年も510日から12日まで23日の行程で宮城県南三陸町および岩手県平泉を訪れた。

東北方面への修学旅行の魅力は、①「人間 Human」、②「自然 Nature」、③「文化 Culture」、④「歴史 History」の各視点から捉えることができるという。

第一の魅力である「人間 Human」だが、民泊体験のお別れの場面には思わず生徒が涙するような、東北の人が持つ人間味に触れることができる。「自然 Nature」に関しては農業や漁業、林業などを体験することで東北の人が厳しい自然と共存していることを理解できる。

「文化 Culture」では「ねぶた祭」をはじめ歌や踊りなど、その土地の文化を体験することで一生の思い出に残るものとなる。「歴史 History」では豊かな東北の歴史を体験することで、持続可能な社会が古くから形成されていたことが分かる。

修学旅行先を選定する基準として「生徒がまた行ってみたいと思えること」を第一に挙げる。そうした修学旅行にするためには、①POSITIVE「前向き」、②ACTIVE「実体験」、③TWOWAY「双方向」の3つの要素が必要。修学旅行のプログラムを作成する際には、訪問先の特性や学校の意向などを踏まえた上で、「人間」「自然」「文化」「歴史」の4つの視点を取り込んでいく。その上で「POSITIVE」「ACTIVE」「TWAWAY」の3つの要素が満たされることで、笑顔があふれる実りの多い修学旅行になると牧野校長は語る。

【特別講演】
「震災を乗り越えて」やまもと語りべの会 井上剛氏

中浜小の児童が避難した屋根裏倉庫の内部

中浜小の児童が避難した屋根裏倉庫の内部

やまもと語りべの会の井上剛氏は東日本大震災発生当時、現在は震災遺構として残された宮城県山元町・中浜小学校の校長を勤めていた。震災発生時には児童や教員ら90人と2階建て校舎の屋上に避難した。

津波の高さは約10メートルに達し、2階の天井にまで届いたが全員が無事。その体験をより多くの人に伝えるため、語り部として活動している。同校は1989年竣工で、校舎の建設にあたり校地を2㍍かさ上げ。この2㍍が津波から身を守る結果となった。

震災発生2日前の39日に三陸沖を震源とするM73の地震が発生した。そこで教職員を対象に臨時打ち合わせを行い、地震が発生した際の対応を周知・検討し、共通理解を図った。震災前日の310日には臨時朝会で、児童らに地震への注意を呼びかけていた。

同校屋上には200人が入れる屋根裏部屋が2つもあり、津波が押し寄せた際に児童はそこに避難した。

津波が去った後には「最大の危険は去りました。今夜は屋上に泊まります。食べ物も水も無いし、寒くなりますが朝まで頑張ろう」と児童を励まして危機を乗り越えたという。

この体験を伝えることが多くの人の命を救うことにつながると井上氏は信じて語り部を続けている。希望する学校にはオンラインで体験を伝える事前学習も行っている。しかし自分の目で見て、体で感じることが大事なので、震災遺構となった同校を訪れてもらうことが望みだという。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年2月20日号掲載

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