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早期自覚と対処を支援 アウトリーチ型支援と新任管理職の研修~都教委のメンタルヘルス対策

2023年3月20日

メンタルヘルス対策は基本的な考え方として1次予防(未然防止)、2次予防(早期発見と早期対処)、3次予防(職場復帰支援)に分類し、それぞれの段階に応じた予防対策を講じることが重要とされている。東京都教育委員会もこの3つの段階に合わせて、様々な対策事業に取り組んでおり、臨床心理士が学校へ訪問し、教員と面談を行うアウトリーチ型の相談を行うなど、公立学校教員に対し、メンタルヘルス不調を予防する「早期自覚・早期対処」を目的とした支援事業を行っている。

東京都教育委員会が進めるメンタルヘルス事業(東京都教育委員会資料より抜粋)

東京都教育委員会が進めるメンタルヘルス事業(東京都教育委員会資料より抜粋)

■アウトリーチ型の出張相談

1次予防では、自身でメンタルの変化をチェックし、簡単に取り組めるセルフケアに関する冊子を配布したり、年1回、定期的にストレスチェックを行うなど、心理的な負担について気付きを促している。

今年度は新たに、一部の地区を対象にアウトリーチ型の相談事業「教職員向けメンタルヘルス対策出張相談事業」に取り組んだ。臨床心理士等が直接学校を訪問し、その学校の全教員と面談を行った。日頃の業務においてストレスに感じることはないか、困っていることや悩んでいることはないかなどをヒアリングし、必要に応じてアドバイスを行った。参加者からは、「専門家と話すことで気付くことが多かった」「話を聞いてもらい、気持ちが楽になった」など好評で、次年度も地区を拡大して取り組む予定だ。

■新任副校長研修でメンタルヘルス対策

新任副校長は、新たに管理職となり業務が高度になる。また自分だけでなく他の教員のケア等も必要になる。東京都では新たに副校長になるタイミングで「副校長ベーシックプログラム」を行っている。公認心理師や臨床心理士が直接学校を訪問し、カウンセリングによる心のケアとともに、セルフケアやラインケア等に関する知識を身につけてもらう。

■面談の他に電話やメールも

2次予防は、相談者の状況に合わせた具体的な内容による相談が主だ。公認心理師や臨床心理士、教職員健康相談員(精神科医)が心の悩みに関して相談対応を行っている。相談の内容は様々で「最近よく眠れない」「やる気が出ない」「食欲がない」「仕事や人間関係の悩み」など多岐にわたる。都教育庁の担当者は「メンタルヘルス不調の原因は通常1つではない。学校での出来事だけでなく、多様な要因が複合的に絡み合って生じるのが一般的」としている。

土日に個別相談室を開設するほか、電話やメールでの相談も可能。公認心理師や臨床心理士が学校を訪問、カウンセリングを行う場合もある。職場でのメンタルヘルス対策や職場環境改善、ラインケアに関する助言・支援を行う。そのほか学校や教育委員会で開催するメンタルヘルスセミナーに訪問相談員を講師として派遣している。

■職場復帰訓練も

3次予防は、メンタルヘルス不調で休職中の教員を対象に、スムーズに職場復帰できるよう支援している。

医療機関での職場復帰訓練はグループで行っている。運動療法や対人関係・コミュニケーションスキルトレーニング、マインドフルネス等のレクリエーション療法等があり、期間は週3日で約3か月だ。所属校で行う職場復帰支援もある。医療機関での職場復帰訓練を終えた人や、自宅療養している教員が対象だ。心身の状態を振り返りながら通勤・職場に慣れるため、パソコンの練習等の軽作業から始め、授業参観や給食・清掃指導等を行い、教員や児童生徒とのコミュニケーションを図る。勤務の継続を目指し、管理職の支援により、授業を行い、少しずつ学校の環境に触れ、復帰を促していく。

プログラムは公認心理師や臨床心理士などの復職アドバイザーが学校を訪問し、本人と面談し、状況を確認しながら進めていく。

■医療機関との連携

東京都が公立学校共済組合と連携して職場復帰を支援するプログラムもある。医療機関プログラムと学校プログラムを一体的に行うリワークプログラムで、期間や日数は、医師が判断して柔軟に設定する。医療機関が行うプログラムは例として、ヨガや園芸活動、心理教育などがある。学校で行うプログラムは、学校の環境や対人環境(職員、生徒)に順応するためのカウンセリングや教育活動など。医療機関プログラムを先行し、状況を確認しながら学校プログラムを追加・併用していく。最終的には学校プログラム週5日の活動を目指す。

復職した後もフォローアッププログラムを行っている。精神科医による復職後の過ごし方のアドバイスや少人数に分かれての情報交換を行い、不安や悩みを分かち合い、安心し、自信につなげる時間を共有してもらう。

またメンタルヘルス不調により病気休職中や病気休暇中の教員が在籍する東京都公立学校の管理職を対象とした研修会を行い、精神科医による教員のメンタルヘルス不調に対するアドバイスや様々な支援事業を案内している。都教育庁の担当者は「教員自身の知識の向上に加え、管理監督者が職場環境や教員の状況を的確に把握し、予防に継続的かつ計画的に取り組むことが重要」と話す。

教員のメンタル実証モデル事業 文科省がオンライン説明会

文部科学省は216日、公立学校教員のメンタルヘルス対策実証モデル事業の説明会をオンラインで実施し、都道府県と政令市の教職員のメンタルヘルス担当者や人事管理担当者らが参加。説明会では事業の目的や概要、実証モデル採択に関する考え方、低コストで実施可能な取組等を説明した。

事業説明のほか、うつ病の症状の現れ方や特徴、1次予防(未然防止)2次予防(早期発見)3次予防(職場復帰支援)に分けて対策を進めるメンタルヘルスケアの基本的な考え方についても説明された。また、メンタルヘルスケアに取り組む上で、自身で行うセルフケアと管理職などのラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケアと事業場外資源によるケアの4つのケアが、継続的かつ計画的に行われることが重要であると説明。教育委員会や学校管理職においては、教職員の状況や個々の職場における具体的なストレス要因を把握し改善を図るため、職場環境の把握と改善に取り組み、教職員からの相談対応を積極的に行うことが必要であるとする。

同省は今後、公募を行い、有識者による審査を経て委託先を決定する。また、各委託先の取組状況についての中間報告や最終報告などの機会を設けるだけではなく、必要に応じて文科省や有識者と相談できるよう連携を進めるという。

さらに、実証モデルとして取り組んだ効果や分析について、役職におけるメンタル不調の傾向や精神疾患の理由など、さまざまな形で類型化できるように求めるなど、広く全国に波及させていきたい考えだ。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年3月20日号掲載

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