学校法人水野学園「東京すし和食調理専門学校」は、店舗実習教室「こもち月(こもちづき)」が完成し見学会を開催。調理実習教室で授業視察、「こもち月」では学生による試食会も行われ、より実践的で深い学びの場である新施設を体感した。
2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された和食は、インバウンド需要の高まりとともに、世界中から注目。それと同時に和食料理人の活躍の場は、世界中に広がっている。
長谷川校長による鱧の骨切り
長谷川哲也学校長は「日本の文化を味わいたいという訪日外国人にとって、選択肢の一つが和食。和食ブームの高まりとともに海外の和食店も増え、その美味しさは世界中に認識されている」と語る。
同校の学生は日本人7割、外国人3割。和食に特化し、包丁の使い分けから調味料の使い方、調理方法に至るまできめ細やかな指導体制が特徴。「授業は実習に7割を割き、だからこそ技術が磨かれる。しかも少人数制で一人ひとりのサポート体制が強み」。
また基礎技術をしっかり身に付けさせている。かつらむき、鯵をおろす、お寿司の巻物などは1年生で習得する。
醤油、味噌などの調味料や食材の味を学び、味付けで重要な味覚トレーニングも実践。学年が上がるにつれ、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の五味の味覚が研ぎ澄まされるようになるという。また校内にある別施設の蔵には、学生が自ら漬けた梅やラッキョウが置かれ、発酵調味料を学ぶ場所になっていた。
卒業生の就職率100%の同校は、求人倍率が7.1倍。今年は10倍になっている。
和食は、すし・割烹・会席・そば・天ぷら・鰻・ふぐ・精進料理など専門店が多く就職先も多彩。例えば韓国・釜山で日本料理店を経営しミシュラン1つ星を獲得した卒業生、すしを握りながら英語で接客する外国人卒業生など、専門技術を活かし実力を発揮している。
清潔な白木のカウンターで、すしを握る学生たち
無垢の白木のカウンターが清潔感を醸し出している「こもち月」は、テーブル席もありより広い空間に生まれ変わった。長谷川校長は「もち月とは満月のこと。その1日前がこもち月。料理人になる一歩手前ということで私が命名した」と名の由来を語る。
カウンターでは校長自ら鱧の骨切りのデモンストレーションを行い、その後学生にバトンタッチ。
同校では骨切り用、刺身包丁など多種多様な包丁が数多く用意されているので、どんな和食の分野に進んでも対応できる包丁の技術がしっかり身に付いている。
握りを出す際は、魚の種類と仕入れ漁港も説明するなど、まさに接客とサービスの実体験の場。3年生では献立作成、材料の価格など店舗運営に必要な知識も学ぶ。
この日のお椀は季節に合わせた鱧で、学生自身で決めた内容だった。校長は最後に「この場所で魅せる技術や細やかなサービスを学び、もち月に近づくように精進して欲しい」と語った。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年8月11日号掲載