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教育ICT

教育DX活用のステップ示す 1人1台端末を全校で教員と子供たちのものに<奈良教育大学教職大学院准教授・小崎誠二氏>

2021年9月6日
第79回教育委員会対象セミナー・松山

教育家庭新聞は8月2日、愛媛県松山市でセミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を開催。愛媛県での開催は初。夏休みということもあり小中高等学校教員が多く参集した。


奈良教育大学教職大学院准教授・小崎誠二氏

奈良教育大学教職大学院准教授・小崎誠二氏

高等学校の国語教員で2007年から昨年度まで奈良県教育委員会において奈良県域でのGIGA端末配備を担当した小崎誠二准教授は、その経験から、新しいことに取り組む際に進捗していくための心得を十か条にまとめて紹介した。

…・…・…

GIGAスクール構想は、学校教育を担うすべての教員と児童生徒がインターネットを上手く使えるようになることが最初のステージ。奈良県内の小中学校ではGIGA端末を既に配備済で、この夏休み、基本的に子供たちは端末を持ち帰っている。自宅でも塾でもファミレスでもどこでも端末を活用できるのがGIGA環境。今年の自由研究は、端末を活用した作品やデジタル提出が増えるかもしれない。もちろん端末で東京五輪を見ても良い。慣れることが重要だ。YouTubeの見過ぎなどの懸念もあるが、アカウント管理で履歴は残る。プライバシーの問題で勝手に見ることはできないが、何かあれば確認できる仕組みにはなっている。

ある学校では820日頃、子供のアカウントに一斉にメールを送り、夏休みの課題の進捗状況を聞く予定だ。デジタル提出ができるので、作品や課題の提出は、学期始まりの日ではなく、できた段階で提出ができ、教員は、届いた順に点検しておけば良い。

GIGA端末配備の担当者としての経験から、新しいことに取り組む際に進捗していくための担当者の心得を十か条にまとめてみた。

▼意見を聞くのではなく、異見を訊く

反対意見やネガティブな意見の中に、課題解決の糸口がある。まずは相手の言い分をしっかり聞いてから丁寧に説得するように心がけた。

▼革新ではなく、核心と確信に迫る

勢いや流行に乗るのではなく、本来どうあるべきかをじっくり考えること。今までできていたことを基準にするのではなく、もしこれがなかったら、とゼロベースから考えることが、物事を前に進めるきっかけになる。

▼競争や狂騒をせず、協想と共創を心がける

立場により意見は変わる。横並び意識の強い学校教育の中で、周りと比べて自慢したり落ち込んだりするのではなく、信頼できる仲間をつくり、本音で語り合えるところまで時間をかけて向き合い続けることが重要。

▼押し進めるのではなく、推し勧める

人が動くのは、正しいことを言ったときではなく、納得したとき。納得いくまで話し合いをした上で、信頼できる相手に結論を委ねることで物事が進んだ。

▼情報は白日の下に晒し、複数の選択肢を用意 決定は委ねる

進むべき道の大きな流れを決定するのは、正誤や、声の大きさ、実力者ではなく、大多数のサイレントマジョリティの意思であることが多かった。対立する意見は、お互いの可能性を残しておくことができれば、自然によい流れに淘汰されていくことが多い。

▼知らない人に任せる

新しくチャレンジすることにブレーキをかけるのは、その物事をよく知っていると自認している人たちであることが多い。新しい現実に目を向けることができずに、頭の中だけにある知識や経験や勘、そして、成功体験が、本来のあるべき正しい姿を見えなくしてしまう、考えを保守的にしてしまうことが多い、という怖さを自覚しなければならない。

▼当たり前のことだけを当たり前にやる

当たり前のことを当たり前に実践するということは、とても難しい。私の周りでは、滅私、みんなでやりたい、と思っている人が成功している。

▼不易流行を大切にする

本質的なものを忘れない中に、新しい変化も取り入れていくことが「不易流行」だ。新しいことにチャレンジすることを嫌う人がよく使う「教育には不易と流行がある」という使い方は正しくない。

▼人の記憶を大切にする

デジタルデータの記録は、固定されてしまえば永遠にブレないが、人の記憶は、時間とともに良い記憶は美化され、悪い記憶は薄れていく。数値にかかわる記録は文字や録音として残し、大切に思うことは、人の心に記憶してもらえるように心がけるとうまくいくことが多い。

▼今実践していること、起きていることに例える

説明を受けている人が、今していることを例にすると伝わりやすい。例えば「100%安全でないと、端末の持ち帰りをさせられないという気持ちはよくわかります。ただ、体育の授業でケガする可能性は否定できないから体育の授業は受けさせない、ということではないと思います」、「11台の端末配布は、先生にとっては、いきなり新車を与えられて運転してどこかへ行け、使わなければもったいない、と言われたようなもの。準備も必要です」のように伝えている。

紙の良さ、デジタルの良さはそれぞれがある。奈良県では「どちらが良いのか」についての議論はしない。どちらでも良いからである。

11台端末環境が整うと、教員主導の授業が変わる。児童は、自分の意見や考えの発信に慣れ、授業展開が教員のあらかじめ考えていた指導案が変わることも増える。そして、そのほうが良い授業になることも多い。

例えばクラウドが活用できれば、教員は研究授業を視聴したり、先輩の板書を見ることが増える。

GIGA端末を子供たちのものにする

11台端末を全校で教員と子供たちのものにする活用のステップの一例を以下のようにまとめてみたので参考にしてほしい。

1=他自治体の指導主事と相談する

2=校長と話す

3=教員と話す

4=51%のことをする

5=授業実践を録画する

6=授業実践をWebサイトに掲載する

7=地域のメディアに紹介してもらう

8=担当の教員の授業を見せてもらう

9=校内研修に参加させてもらう

10=外部講師を呼ぶ

11=学校だより、校長だよりに掲載してもらう

12=保護者と話す

13=教員と一緒に研修講師を務める

14=学校外の研修参加率を上げる

15=オンライン研修の受講率を数字で示す

16=校内研修をオンラインで自治体内にシェア

17=第三者(大学教員や保護者)と協議の場を設定する

18=自校のWebサイトに実践事例を掲載する

19=子供の発表をWeb公開する

20=オンラインで宿題を出す

資料=https://spark.adobe.com/page/pQYO71Nbb6CDc/【講師】奈良教育大学教職大学院准教授・小崎誠二氏

【第79回教育委員会対象セミナー・松山:2021年8月2日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年9月6日号掲載

  1. 松山市教育研修センター指導主事・小田浩範氏
  2. 奈良教育大学教職大学院 准教授・小崎誠二氏
  3. 愛媛県立松山南高等学校 教頭・重松聖二氏
  4. 西条市立神戸小学校教諭・十亀亮一氏
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