三菱みらい育成財団「みらい育成アワード」が9月20日、東京都内で開催され、2024年度の採択校の中から、特に優れた取組が表彰された。高等学校の部(カテゴリー1)のグランプリは群馬県立伊勢崎高等学校と京都市立京都奏和高等学校が受賞。受賞校は取組内容を報告。参加者と共有した。

三菱グループ創業150周年を記念して2019年10月に設立した(一社)三菱みらい育成財団。三菱グループ各社が100億円を10年間にわたり拠出する事業で、2025年度で6年目。
高等学校で総合的な探究の時間が開始されたことから、高校生から大学1・2年生と高校教員を対象にした学びを助成している。
宮永俊一理事長は「2025年度は436件と過去最多の応募数があり105件を選出した。人口減を始めとする様々な課題の解決に向けて教育の重要性が高まっている。
AI時代には自ら考え議論を通して学ぶことが一層重要。本財団の助成により多様な学びと出会いの機会を支援したい。本日は特に優れた実践を表彰し広く共有する場としてほしい」とあいさつした。
本財団では、次の5つのカテゴリーで助成を募集している。
カテゴリー1東地区グランプリの群馬県立伊勢崎高等学校の探究「iTanQ」では「学年・学校・地域・国を‘越えて’つながる」「社会の現実を五感を使って感じる」ことを2つの柱としつつ、学校を越え、社会でエージェンシーを発揮できる「シン・探究人」の育成を目指す。

特徴的な活動がAgency Day(エージェンシーデイ)の取組だ。これは「自らの歩みをふり返り、成果と課題を踏まえたうえで目標や未来を想像し、その日一日を自由に創造し、探究する」ことを目的にした一日。
生徒は、伊勢崎から自転車でスカイツリーまで往復したり、世界史の授業を通して興味を持ったことをきっかけに、読みたかった中国史に関するマンガや書籍を読破したり、普段できない様々な活動にチャレンジした。
一日を生徒に預けることで生徒が生き生きと活動するだけでなく、社会性や探究性などが10ポイント以上(※)向上。生徒の変容に教員も手応えを感じている。今年度は4月と6月に実施し、11月にも実施予定。※同財団実施のアンケート分析から
高橋みゆき校長は「小さな成果を積み重ねることを大切にしている。そのためにもAgency Dayはすべての学校にお勧めしたい」と話した。
同・西地区グランプリは京都市立京都奏和高等学校が受賞した。不登校経験や発達特性のある生徒が学び直しからリスタートする普通科定時制高校である同校では、卒業後、社会の創り手として主体的に行動する為には地域社会と関わり、自己の役割を認識する活動が必要であると考え、産学連携で、自らを育むプロジェクト「Makesmile」に取り組んでいる。
これは2つのコア科目「ビジテック」「キャリア」で構成。「ビジテック」とは産学連携で地域の方と関わり、まちのだれかを笑顔にするアクションを起こす「まちあるき」探究活動で、地域や社会に成果を還元する。
「キャリア」では、自己理解・進路実現・ソーシャルスキルの3つの軸で、企業訪問や大学訪問、社会的セーフティネットなどの実社会に直接つながる学びを重視している。スクールキャリアコンサルタントが2人常駐し、随時相談に対応している。
カテゴリー2では「札幌国際映画祭」において新たな賞を設置し、そこへの応募に向けた動画講座を実施した(株)トモノカイ、カテゴリー3は女子高校生を対象にしたSTEAM教育プログラム「みらいの扉キャンプ・みらいの扉ビジット」を展開した国立大学法人東京科学大学、カテゴリー4はVUCA時代に対応する新たな教養科目を新設した国立大学法人山梨大学、カテゴリー5は高校生に意欲と創造性を届けるための「伴走力向上」と「校内推進体制づくり」を目指した伴走型研修を提供するNPO法人カタリバが三菱みらい育成財団賞を受賞。
2025年度までの助成先は延べ468機関、参加者総数は約26万人。同財団の支援は残すところ4年。募集は例年2月から始まる。
詳細=三菱みらい育成財団
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年10月20日号