(公社)全国学校図書館協議会(以下、全国SLA)は11月22日、第9回学校図書館担当指導主事研修会｢学校図書館にもっと注目を！ －探究心を持ち、主体的に学ぶ子どもたちを育てるために｣をオンライン開催。講演とグループ討議の2部構成で行われた。
文科省 教育改革調整官・坪田知広氏が講演
講師に迎えたのは文部科学省教育改革調整官の坪田知広氏。坪田氏は文科省初等中等教育局児童生徒課長在職中の2016年｢学校図書館ガイドライン｣作成に携わった。2022年7月名古屋市教育長に就任、2025年7月より現職。
坪田氏は名古屋市教育長在職中、教育指針｢ナゴヤ学びのコンパス｣の策定やいじめ対策のほか、新聞配備や学校司書の配置等、学校図書館関連施策を推進した。｢学校図書館の価値について、関係者以外の人には学校図書館法や審議会の答申を引用するだけでは伝わりにくく、嚙み砕いて説明する必要がある｣と話し、指導主事や関係者が行政の財政部門に説明し予算を確保するためのポイントを解説した。
多くの人にとって学校図書館は単に本を借りたり読んだりするところであり、教科の学びや本やネット上の情報を活用した探究学習をする場というイメージはまだできていない。坪田氏は｢学校図書館は新しい学びのキーステーション｣とし、学校図書館活用と学力の関係、｢学校図書館長｣である校長がどのように役割を果たすことができるのかなどを解説。さらに学校図書館の可能性として、学校が長期の避難所となった場合の学校図書の活用、教室に居づらい子供のための居場所、自習室としての需要の高まりなど、実際の事例を交えながら解説した。
名古屋市の場合、学校への新聞の配備が進んだ理由として、議会の後押しと併せ、名古屋市長が推進するキャリア教育になぞらえて新聞配備の主旨を説明したこともスピード感のある配備につながった。学校図書館はキャリア教育センターの役割も担うことができる。
学校図書館ガイドラインでは｢登校時から下校時まで｣開館すると書かれている。常勤の学校司書がいることは理想ではあるが、それを推進するためにも｢まずは常時開館に取り組むことが必要｣と語った。
今できることに最大限取り組み、その効果を数値化し集約することで、学校図書館の必要性が伝わり、予算化に結び付いていくという。
今回の研修会には教育委員会、司書教諭、学校司書などが参加しており、後半では参加者によるグループ討議が行われた。テーマは全国SLA指導主事研修委員会が作成している教育委員会向けパンフレットについて。これは2025年度文部科学省委託事業｢学校図書館行政促進を目的とした教育委員会向けパンフレットの作成｣を受けたもの。これまで同委員会では指導主事向け、校長向け、教職員向けにも作成している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年12月8日号掲載
