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教育旅行

教員対象「スチール缶リサイクル工場見学会」で体感 鉄の製造と資源の再生

2022年9月19日

回収された金属が分別され、新たに鉄として生まれ変わるまでの流れを実際に見て、リサイクルの意義やスチール缶の特徴を学ぶ、「スチール缶リサイクル工場見学会」が8月2日に実施され、東京都内を中心に小・中・高等学校、特別支援学校の教職員が参加。三洋商事㈱、JFEスチール㈱東日本製鉄所(千葉地区)を見学した。

 主催=スチール缶リサイクル協会、日本製缶協会、(公社)日本缶詰びん詰レトルト食品協会、後援=全国小中学校環境教育研究会、東京都小中学校環境教育研究会

「手サイクル」で目指す資源化率100%
三洋商事

三洋商事。1Fで解体し大まかに分別した後、2F(写真右奥の部屋)で手サイクル。同社は産業廃棄物処理業としては初めて、環境大臣にエコ・ファースト企業として認定された

三洋商事。1Fで解体し大まかに分別した後、2F(写真右奥の部屋)で手サイクル。同社は産業廃棄物処理業としては初めて、環境大臣にエコ・ファースト企業として認定された

午前中に見学した三洋商事は「地球にありがとうを伝える企業」を経営理念に掲げる。企業などで使用済みの機器類を中心に、産業廃棄物のリサイクルを行っている。

資源化率100%、廃棄物ゼロを目指し、回収した機器類の解体・分別は、すべて手作業できめ細かく行っている。

手作業を重視しているのは、リサイクル率を高めるため。一般的な機械による分別は効率が良い場合もあるが、同社では細かい部分も見逃さない「手サイクル」により、98%以上のリサイクル率を実現している。

解体ルームで大まかに分けた機器類を、さらに手サイクルで細かく分別する。同社ではチャレンジド(障害のある人)も採用。多様な人材によって、金属の種類や部品ごとに細かく分別されているようすは、参加者にとって驚きだったようだ。

手サイクル

手サイクルで丁寧に分別

産業廃棄物を取り扱う企業は3Kなどマイナスのイメージを抱く人も少なくない。そうした中、同社では「従業員とその家族の幸せを何よりも大切にする」を社是とし、働きやすい環境作りが目指されている。洗練された社内インテリアや従業員の休憩スペースの充実はもとより、毎朝30分、社長も率先して参加する掃除は、職場を清潔に保つだけでなく、従業員の安全面にとっても重要な作業だ。

同社では全国の学校を対象に、環境問題やリサイクルに関して学ぶ無料の「SDGsスクール」を実施している。コロナ禍の影響もあり、学校現場のオンライン環境も整ったことから座学中心のプログラムにリニューアルした。小・中・高・大の校種を問わず、授業の内容は学校側の希望を確認し、生徒の学年などを考慮しながら設定している。

製銑から熱延まで迫力の鉄づくり
JFEスチール㈱東日本製鉄所(千葉地区)

JFEスチール㈱東日本製鉄所(千葉地区)の粗圧延機。日本の基幹産業である、製鉄の迫力のある工程を見学

JFEスチール㈱東日本製鉄所(千葉地区)の粗圧延機。日本の基幹産業である、製鉄の迫力のある工程を見学

午後に訪問したJFEスチール㈱東日本製鉄所(千葉地区)では、製鋼から熱延までの鉄づくりの現場を見学した。

千葉地区は戦後初めて建設された銑鋼一貫型の臨海製鉄所。東京からは電車でわずか40分、京葉工業地帯の真ん中に位置している。敷地面積は765万平方㍍で東京ディズニーランド約10個分にあたる。

この敷地内に高炉(溶鉱炉)、転炉、連続鋳造、熱間圧延、表面処理など製銑から冷延までの設備を集約。自動車用鋼板や缶用鋼板・ステンレスなど薄板製品に特化して生産している。

また、商業施設や住宅地と隣接していることから、クリーンな都市型製鉄所を目指して、徹底的な環境管理が行われていることも特徴だ。

高炉内に装入された鉄鉱石とコークスに1200度の熱風を吹き込んで、化学反応を起こして鉄鉱石から銑鉄と呼ばれる鉄を取り出す。

そして、真っ赤に溶けた銑鉄は、トーピードカーと呼ばれる運搬車両に流し込まれ、製鋼の工程に運ばれていく。製鋼では銑鉄が鉄スクラップなどと一緒に転炉に移される。

今回、銑鉄を転炉に移すようすを見学することができた。大きな鍋のような転炉に、火花を上げながら真っ赤な銑鉄が流し込まれ、安全な離れた場所にもその熱気が迫ってくる。その様子に参加者たちからは「大迫力」「衝撃的」といった声があがった。

鉄スクラップの利用は鉄のリサイクルとなると同時に、精錬中の転炉が急激に高温にならないように冷却する役割も果たしている。

続く連続鋳造の過程で溶けた状態の鋼は板状の半製品「スラブ」になる。スラブは熱間圧延の工程で1200度程度に加熱され、圧延機で厚さ08㍉から25㍉の板に伸ばされる。圧延する前のスラブの長さは4㍍から12㍍だが、1㍉の厚さになると長さ3㌔にも及ぶ。

そこから冷間圧延で、さらに薄く仕上げられていく。鉄鋼製品・特殊鋼などは軽さや強度、複雑な形状が求められる。家電製品や自動車用部品、飲料缶などに使われる薄い鋼板が誕生する。

熱気や水蒸気の上がる音、サイレンの音など、直に訪れることでしか知りえない迫力だ。生活を支える鉄づくりの現場のようすを参加者が体感する機会となった。

リサイクルの大切さを伝えたい
―参加者の感想から―

小・中・高等学校・特別支援学校の教職員が参加

小・中・高等学校・特別支援学校の教職員が参加

▼製造と、(リサイクルの)処理の両方がセットで見学できて良かった。(多摩市立連光寺小学校校長・關口寿也)

▼ごみを分別して捨てる、という身近な行動が、資源のリサイクルにこんなに直結していることが驚きだった。子供たちにも伝えたい(北区立梅木小学校教諭・中山瑞希)

【三洋商事】

▼産業廃棄物処理業者のイメージが変わった。会社が利益を追求するだけではなく、社会づくりの場だと思った(多摩市立連光寺小学校講師・松田一枝)

▼仕事をしている人や家族のことを一番に考えた環境づくりに魅力を感じた。仕事をしている人も“がんばろう”と思いながら仕事ができていると思う。学校で他の先生にも伝えたい(教諭)

JFEスチール㈱東日本製鉄所(千葉地区)

▼実際に見学してみると、鉄をつくるのにたくさんのエネルギーや水などが必要だとがわかり、リサイクルの必要性を感じた(中学校主任教諭)

▼広大な工場と、そこに張り巡らされたレールやパイプ、原料の山に圧倒されました。転炉へ流し入れる工程は大迫力で、熱風は動画では伝わらない。こうした体験を通して、生活を支えるエネルギーを実感するべきだと感じた(高等学校教務部長)

▼現場を知り尽くした人の話が大変面白く、知的好奇心が刺激された。鉄スクラップを混ぜるとCO2排出量が削減されるという話も衝撃的だった(特別支援学校教諭)

※敬称略。コメントは一部編集しています

スチール缶リサイクルについての情報はこちら

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年9月19日号掲載

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