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学校施設

第64回 【教職員のメンタルヘルス】一人職を孤立させない管理職

2020年2月17日
連載

「校長は一人職で孤独だが、孤立してはいけない」と言われます。孤立してしまうと、教職員からの貴重な情報が校長に入ってこなくなるからです。校長と並んで、養護教諭や事務職員などの一人職も、職場に同じ職種の同僚がいないために孤立しがちです。

特に養護教諭は、担任や管理職も知らないような子供の貴重な情報を持ち合わせている場合があり、心ある校長は、足繁く保健室に顔を出すように心がけています。

■保健室はあいまい空間

休み時間に保健室を覗いてみると、いろんな理由で保健室にいる子供たちに遭遇します。保健室は「ここではこうしなければならない」という現実原則(校則)が緩い、学校の中で唯一「あいまいな場所」であっても良いとも言われています。その空間で、普段、教室では見せない姿を見せる子供たちに対して、「とがめず、包む、見守る」ことを通して、時には母親のように接する養護教諭の態度には頭の下がる思いです。

最近、始業前に保健室に顔を出す兄弟がいました。母子家庭で、母親が早朝から働きに出るので、朝食はほとんど食べてこないそうです。そんな事情を聞いていた養護教諭は、密かに、その兄弟のためにおにぎりを持参していました。校長が「この兄弟の家庭環境は、複雑なのでしょうか」と訊ねると、やはり貴重な情報を持っておられました。その養護教諭は、子供の置かれた状況や家庭環境を担任や学年主任に伝え、学年で特別な配慮をお願いしたいとのことでした。このように、担任とは違った立場から多角的な視点による一人職の先生方のご助力には深謝するばかりです。

■事務室は管理職が配慮

養護教諭と同様に、ほとんどの学校では事務職員も一人ではないでしょうか。職員室とは別の場所に設置されている事務室の場合などは、職員室の話題に触れる機会が少なく、来室してきた先生方とも事務的な会話が主でなかなか職場の一員としての所属感や同僚性が実感できない方もいるのではないでしょうか。こうした悩みを軽減できる一人として、管理職の役割は大切です。

仕事内容を踏まえて「学級会計の執行状況を把握していない担任に対して、確認を促す声掛けをしてもらって良かったです」等の一言は、事務職員の孤立化を防ぎ、他校の事務職員との連携強化の動機付けにも一役買っています。

■不調の半数は人事関係

この時期、校内では人事評価と並行して来年度に向けた異動や人事配置に関する校長面接が実施されている頃かと思います。新年度当初、メンタルヘルスの不調を訴える教員に原因を訊ねる機会があり、その半数近くは人事に対する不満に起因しています。

例えば、前任校の校長に「家庭の事情で来年度は学級担任を持てない旨を伝えていたが、異動先で担任にさせられていた」、「異動先の○○先生とは(過去にトラブルを経験していたので)同じ学年にしないようお願いしていたのに、同学年になっていた」等、正当なものから我がままと思われるものまで理由は様々。そのような特別な事情を抱えた教員の話ほど異動先の管理職には伝わりにくいものです。

伝える力・聴く力はワンセットで管理職の必須アイテム。特に新年度初めから5月の連休中、異動してくる教員の話を丁寧に聞いてほしいものです。

物事には、その時機を逸すると効果が著しく低下する取組があります。何を優先するかは校長の判断に委ねられていますが、教員のメンタル予防を学校経営の柱の一つに据える校長のもとでは、笑顔が絶えない教職員が、きっと生き生きとして働いているのではないでしょうか。


筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、教職員メンタルサポートネットワーク協会代表、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年2月17日号掲載

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