神奈川県相模原市立小山小学校(阿部高美校長)5年生の遠隔プログラミングの公開授業が11月12日に行われた。「オーストラリアの農業問題を解決するために送った機械に問題が発生した」という設定で、児童は機械のプログラムを教室から遠隔で修正することに挑戦。プログラミングと異文化交流を遠隔で体験するという課題に取り組んだ。授業はオンラインでも公開された。
小山小から遠隔でオーストラリアの機械を操作
プログラミングの修正点を発表し合う
教室の大型提示装置はオーストラリアにつながっている。児童は、自分たちが修正したプログラムで、オーストラリアにある「自動潅水機」が無事に作動するかを注目。無事動くことを確認すると、教室中に歓声が起こった。
前時までに児童はオーストラリアについて調査。気候条件などから、どのような農業問題を抱えているのか、社会科の学習経験から考え、各自が構想した農業問題を解決するためのアイデアをレゴブロックで組み立てた「SPIKEプライム」の機械モデル「自動潅水機」にプログラミングで具体化している。「発芽に適した温度と湿度になったら、畑の真ん中で種をまく」などのアイデアだ。
オーストラリアとプログラムの修正についてやり取り
その後、グループごとのプレゼンテーションで、「自動潅水機」のどのアイデアがオーストラリアの問題を解決できるかを討議。クラスで代表の機械モデルを決めてオーストラリアに郵送した。
公開授業では、この機械モデルに問題が発生したという設定で、児童は遠隔でプログラムを修正しなければならない。
そのためには問題点を明らかにし、どこを修正するかを考える必要がある。「雨が降っている時でも、機械が作動して水をまくので、水浸しになってしまう」と聞いた児童は「シドニーの天候を調べて、雨や雪以外ならばモーターが動いて水をまく」、「土が湿って赤い色を感知したら水を止める」などアイデアを出していく。
オーストラリアのシドニーの天気をインターネットで収集し、天候ブロックを使って機械の動きを制御したり、カラーセンサーで地面の色を感知するなど、問題解決に向けてプログラムを修正した。
機械が作動するためには、修正したプログラムのアイデアを自分のPCに入力するだけではなく、遠隔でプログラムし、遠く離れた相手に伝えなければいけない。小山小のPCから遠隔でオーストラリアのPCを操作してプログラムを修正し、問題が解決したことを相手に伝えた。無事に機械が動くと歓声が沸き起った。テクノロジーを使うことで世界の距離が縮まることを実感できたようだ。
オンライン配信された公開授業は、配信ができなくなるトラブルも生じた。原因を探ると、配信用のポケットWiFiが使用している2・4Ghz帯が通常よりも混雑していた。そこで、配信にLTE回線を使用することで接続できるようになった。児童が学習で使用しているPCと遠隔会議システムは別のAPに接続しており、影響はなかった。このほかにも原因があるのかさらに調査中だ。
相模原市は2017年度から、すべての小学校でプログラミング教育を開始。2020年度は「第2次相模原市教育振興計画」にプログラミング教育を通した情報活用能力の育成を位置付け、2019年度に策定した「相模原プログラミングプラン」に則り、小中学校全学年でのプログラミング授業が行われている。
GIGAスクール構想で進めている1人1台のPC配備についても、相模原市の全児童生徒5万1000台のうち3分の2の配備をほぼ終え、残りも今年度中に完了する予定だ。既に生徒会役員選挙のオンライン投票や遠隔地とつないだ授業、授業公開研修をオンラインで行っている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年12月7日号掲載