総務省は「公共分野における信頼できるAIを用いた開発実証事業」に係る公募結果を公表した。生成AIは社会に不可欠なインフラとなることが想定される一方で、日本の政府・自治体・企業が安心して活用できるAIの整備が求められている。
そこで、国内企業が開発する生成AIの活用を促進することを目的に本事業を実施し、6月8日に4件の採択結果を発表した。日本語に最適化された大規模言語モデル(LLM)は、特に海外モデルが苦手とする領域(固有名詞や住民票などの専門文書、日本の制度・法律等)での優位性が期待されている。
総務省は「国産AIの育成・評価」を目的に掲げ本事業を実施。日本企業が開発し、日本語処理に強みをもち、国内で安全に運用でき、公共分野での利用を想定した国産LLMの実証を進める狙いだ。
なお生成AIは文章・画像・音声・動画生成をすべて含む。このうちLLMは「文章生成AIの基盤」技術となり、これらを活用したアプリケーションサービスが各種存在する(表参照)。

採択された4件のうち、「5市町実環境による国産LLM『PLaMo』評価検証実証」は、兵庫県の姫路市・尼崎市・加西市・加東市・多可町を対象に、Polimillが中心となって実施。PLaMo(Preferred LAnguage MOdel)は、敬語やビジネス文書の自然さに強みをもつ国産LLM。
デジタル庁が内製開発した政府向けAI基盤「源内」に採用されているほか、150以上の自治体で導入が進む。海外モデルへの依存を避け、データを国内に限定でき、日本の法制度に準拠した安全性を確保できる点が特徴だ。
「国産LLM『tsuzumi 2』を活用した市民課業務支援サービスの開発実証」に取り組むのはNTTドコモビジネスで、実施地域は兵庫県および西宮市。tsuzumi2は、軽量・高性能・高セキュアを同時に満たす国産LLMで、金融・医療・自治体など日本の実務領域に強みをもつ。1GPUで動作可能な軽量設計で、オンプレミスなど機密性の高い環境での運用を前提に設計されている。
「地方自治体の窓口業務における信頼できるAIの開発実証事業」として選定されたのはソフトバンク。実施地域は静岡県藤枝市。同社が開発する国産LLM「Sarashina」は日本語処理能力の高さを強みとし、学習・推論をすべて国内データセンターで実施することで安全性と信頼性を確保している。自治体の窓口業務など公共分野に最適化したAIとして開発が進む。
「国産生成AIを活用した観光・文化分野向けAIガイド実証事業」に取り組むのは大日本印刷。実施地域は長崎県。
国産LLMには、モデルアーキテクチャから自前で構築する「完全自前型(フルスクラッチ型)」と、公開モデル等を基に学習データや用途に合わせて最適化する「独自チューニング型」がある。
英語タスクや高度な推論、世界知識、画像・音声・動画など、海外モデルが得意とする領域は依然として広い。これにより海外論文の確認や国際学会での参加は容易になった。一方で、行政・企業・金融機関など日本の実務に特化した国産AIのニーズも高まっている。
国は教育データ利活用に本腰を入れる方針であり、児童生徒情報の記録・整理がさらに機微なものになることを考えると今後、自治体や学校等での利用が国産・海外LLM両者の併用に進む可能性がある。本実証や各自治体の動向に注目したい。
学校教育法等の改正により、デジタル教科書の位置づけが法的に明確化された。これまで「紙の教科書の代替」として扱われてきたデジタル教科書は今後、紙と同等の”教科書”として制度上認められ、無償給与の対象となる。
デジタル教科書の大きな利点がアクセシビリティだ。読み上げ、拡大表示、色調や文字サイズ調整など紙では実現が難しい支援が可能となる。
今回の改正では、デジタル教科書は「紙と同一内容を収録した教科書」と定義された。一方で、動画・音声・リンクなど追加的な学習コンテンツは「デジタル教材」として別扱いとなる。
使用割合や学年別の扱いは、今後の政省令で詳細が定められる予定。その後、各教科書会社はデジタルな形態を含む新たな教科書を編集。自治体の導入判断へと進む。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年6月22日号掲載